皆さんは、モナリザの表情から「彼女」のどんな感情を読みとりますか?
FACSが搭載されたコンピュータの分析により、モナリザの表情の中には、83%の幸福、9%の嫌悪、6%の恐怖、2%の怒りが込められているという結果が見出されました。
モナリザの表情を加工して、表情のラインを見やすくしてみます。
ここからは清水の目視による分析をしてみたいと思います(コンピュータFACSと人間FACSの勝負?)。
最初は目周辺の表情を見てみましょう。
通常、怒りは、眉の下がり具合、恐怖は、下まぶたの緊張からわかりますが、この絵だけからは、モナリザの中立状態がわからないため、私の目では、怒り、恐怖の関連コードを発見することが出来ません。恐怖が見出されるとしたら、下まぶたが虹彩にかかっている点です。人が恐怖を感じるとき、下まぶたが緊張し、虹彩にかかることが知られています。しかし、これも中立状態がわからないため(涙袋が大きく何の感情を感じていなくても下まぶたが虹彩にかかっている人がいるため)、また通常、恐怖の目は、上まぶたの引き上げに下まぶたの緊張が伴う形で引き起こり、下まぶたの緊張のみで恐怖が表れるという例は聞いたことがありません。したがってこの絵からだけでは、自信を持って恐怖を読みとることは困難です。
次に目から下の表情を見てみます。
左右の口角が引き上げられています。ここから幸福表情を読みとることが容易に出来ると思われます。幸福表情、つまり左右の口角が引き上がるとホウレイ線が水平方向に広がるのですが、「彼女」の顔には、それが明確には表れていません。それは、「彼女」の人中と口角の間の筋肉が盛り上げられていることに影響を受けていると思われます。
人中と口角の間の筋肉が引き上げられるときとは、人が嫌悪を感じるときです。
ここに「彼女」の嫌悪を読みとることが出来ます。
それでは、なぜモナリザは微笑の中に様々な感情を込めているのでしょうか?
次回、その解釈を行ってみたいと思います。
清水建二
参考文献
“Behind that Smile,” New Scientist 188, no.2530(2005).
Thomas, J. R. (2008). More than a pretty face: The Mona Lisa. Archives of Facial Plastic Surgery, 10(1), 65-66.