微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

表情分析を教えたいという方へ

明けましておめでとうございます。
2025年、初めてのブログとなります。

 

本日は、度々お問い合わせ頂く、
「表情分析を教えられるようになりたいのですが、どうしたらよいでしょうか?」
というご質問にお答えさせて頂こうと思います。

 

今まで本ブログのどこかで書かせて頂いたかと思いますが、

以下が最新の私の考えです。

 

大学院等で表情分析について学び、起業すれば出来ます。
心理学の専門家として教育・研修等機関で教職や講師職を持っていれば、
表情分析をカリキュラムに組み入れる、あるいは、ご自身で起業すれば出来ます。

 

そうではなく、多くのお問い合わせの前提は、弊社で専門家として働くにはどうしたらよいか。あるいは、弊社の契約講師(業務委託での講師)になるにはどうしたらよいか、ということだと思います。
上記に書いたような相応の何かを持っていれば、弊社の契約講師等になって頂くことが可能です(正社員はまた別枠です)。


相応の何かとは、講師としての最低限の知識とスキル、社会人経験です。
高学歴はプラスにはなりますが、必須ではありません。
そして、私が目指す使命と方向性が同方向かです。
弊社契約講師までのプロセスを書かせて頂きます。

 

講師としての最低限の知識とスキルは、
まず、毎年4月 and/or 10月に開講する「表情・しぐさ分析総合コース」にて、
表情を中心とした非言語の基礎的な知識とスキルを身に着けて下さい。
学習期間は6ケ月間、総講義時間は24時間です。

 

次に、不定期開催の「表情分析エキスパートコースーFACS編」にて、
表情分析のための専門資格FACSを学び、認定FACSコーダーの資格を取得して下さい。
学習期間は6ケ月間、総講義時間は24時間です。
これは、弊社講座ではなくても、ご自身でセルフスタディー頂き、取得頂いても結構です。

 

そして最後に、毎年10月に開講する「清水ゼミ」にて、
学術論文を読み専門知識を身に着け、FACSを駆使して表情分析のトレーニングをして頂きます。学術論文を読んだことのない方も読めるようにお教えします。必要なのは、熱意と努力です。また、FACSは取得して終わりではありません。取得してからが専門家としてのスタートラインです。
FACSコーダーの資格取得後、一人前の分析者になるには2-3年のトレーニングが
必要とされています。本ゼミで2-3年研磨して下さい。

 

社会人経験は、ご自身が今いる場が経験を獲得する場になります。
その業界(家庭)の常識とご自身の視点を獲得できるよう懸命に働いて下さい。
そこで得られた貴重な経験と表情分析の知見を組み合わせて頂き、
講師としてのオリジナルコンテンツを作成頂きます。

 

テキストやコンテンツの根幹部分を占める4~6割程度は、
理論やトレーニング部分となり、どの講師でも同じになりますが、残りはオリジナルです。
ご自身でコンテンツを作成する能力がない方は、弊社講師にはなれません。
講師デビューの前に、コンテンツ作成をサポート/監修させて頂きますが、主体はご自身になります。

 

私の使命と方向性は、私の書籍を始めとした諸発信や弊社講座を通じてご理解いただけると思います。

 

表情分析の先生に簡単にはなれなそう…と思われましたか?
その通り。簡単にはなれません。必死に学び、努力し、経験を重ねて下さい。
こうした覚悟がある方は、ぜひ目指しに来て下さい。

 

なんだか清水は厳しい人、という印象を与えてしまいそうですが、
講師候補者には優し厳しく、受講生には優し優しくですので、どうぞご安心下さい。

 

本年もどうぞよろしくお願いします。

 

おまけ:清水の本棚の一部。科学知見を実務へ、実務を科学知見へ。

 

 

清水建二

東洋経済オンライン執筆表情分析記事検証結果~表情分析の妥当性はどのくらい?

 年内最後の締めくくりとして、私、清水が2024年に東洋経済オンライン上で執筆した表情分析記事の検証をしたいと思います。清水の表情分析の妥当性はどの程度だったでしょうか。具体的な出来事について真偽や結果を予測し、現時点で結果が判明している記事を対象とします。

 

 本年、東洋経済オンラインで執筆した記事は、14本。検証の対象となったのは、次の3本です。どんな分析をし、どの程度の妥当性を得ることが出来たでしょうか。

 

掲載日:2024年3月26日

テーマ:「必死に感情抑え」大谷選手会見を心理分析家解説

「え~」を多発、口を一文字にする表情の意味

URL: https://toyokeizai.net/articles/-/743769 

概要&結果:大谷選手の元通訳水原氏が、大谷選手のお金をギャンブルにつぎ込んでいた事件において、大谷選手も関わっていたのではないかという疑惑。記事の中で私は、「大谷選手の声明は、真実の可能性のほうが高い、とこの会見時の言動から推測します」と書きました。大谷選手は潔白の可能性が高いという予測でした。目下、大谷選手の潔白は証明されています。予測当たりです。

 

掲載日:2024年6月5日

テーマ:世界初「ミスAIコンテスト」候補者に見る美の要件

表情分析家がトップ3を大胆予想

URL: https://toyokeizai.net/articles/-/759308 

概要&結果:AIによって作られた女性を対象とする世界初のコンテストが開催。10人の候補の中でトップ3位が発表される前に、トップ3位を表情・顔分析から予測。

 

清水の予想:

1位 ラリナ(Lalina)

2位 ケンザ・ライリ(Kenza Layli)

3位 アイアナ・レインボー(Aiyana Rainbow)/エリザ・カーン(Eliza Khan)

 

発表された実際の順位:

1位 ケンザ・ライリ(Kenza Layli)

2位 ラリナ(Lalina)

3位 オリヴィア・C(Olivia C)

 

3位中、2人当たり。予測完答とはいきませんでしたが、悪くない予測力と言えるでしょう。

 

掲載日:2024年11月10日

テーマ:ファミマ弁当「涙目シール」を貼る深謀な仕掛け

「たすけてください」と訴えるイラストの効果は?

URL: https://toyokeizai.net/articles/-/837356

結果:記事の中で、「イラストでも、フードロス削減のための食品購入という援助行動を一定程度行うものと考えられます」と書きました。ただし次のように、「ただ、この実証実験の実施場所が全部で6店舗と少なく、期待される条件別の違いや効果が適切に可視化されるか、不安なところはあります」とも書きました。株式会社ファミリーマートより12月25日に発表された検証結果(参照:https://www.family.co.jp/company/news_releases/2024/20241225_01.html)によれば、シールのデザインを変えることで、値下げした商品の購入率が5ポイント向上したということです。予測のままではありませんが、方向性として正しい予測であったと言えるでしょう。

 

 総体的に見て、好成績と言えるのではないでしょうか。しかし、まだまだ。さらに予測力を向上できるよう、知見を収集し、実験室実験・リアルな場での実践を積み重ねて参りたいと思います。来年も東洋経済オンラインはじめ、様々なメディアでの表情分析予測を楽しみにしていて下さい。

 

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 以下は、具体的な出来事についての真偽や結果を予測していない妥当性判断の対象外とした記事です。

 

掲載日:2024年1月14日

テーマ:「暗く見られる人」が印象を変えるためのひと工夫

ちょっとした行動で気分も印象も大きく変わる

 

掲載日:2024年2月16日

テーマ:「能天気な人」と誤解されてしまう危ういクセ

「人とは笑顔で接する」が常に正解とは限らない

 

掲載日:2024年3月14日

テーマ:感情表現で交渉や面接の結果を有益に変える方法

人間の話し合いは理性以外の要素も大きい

 

掲載日:2024年4月4日

テーマ:「職業差別発言」川勝知事会見を心理分析家が解説

「自分は問題発言をしていない」と思っている表情とは?

 

掲載日:2024年5月5日

テーマ:中森明菜復帰後の歌唱表情に見る36年前との変化

表情分析家が公式YouTube映像を解説

 

掲載日:2024年6月14日

テーマ:しまむらAIモデル「瑠菜」魅力を感じさせる特徴

平均顔に絶妙なアレンジが加えられている

 

掲載日:2024年6月29日

テーマ:渡部建「地上波生出演」に嫌悪を感じる人がいる訳

「明らかな緊張」の裏にある渡部氏の心情とは?

 

掲載日:2024年7月18日

テーマ:恐怖心がない?トランプのガッツポーズに危うさ

常人離れした度胸は無謀と背中合わせ

 

掲載日:2024年8月13日

テーマ:スマホの子供への悪影響は保護者の使い方だった

子供の使用時間と心の成長に関連は見られなかった

 

掲載日:2024年9月3日

テーマ:「兵庫県知事」嫌悪表情に表れた自己正当化の心理

反省の言葉を述べながらも追及には納得していない

 

掲載日:2024年9月28日

テーマ:兵庫県知事「鋼のメンタル」は強烈な自己愛が形成

出直し選挙では勝てる可能性を感じている

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おまけ:京都蓮久寺の七福神様。皆さまに幸あれ。

 

それではよいお年を。

 

 

清水建二

どの子をいつ観るか、いつ観ないか?―観察対象が複数名いる場合

 ここ数年、学校の先生や教育者志望の学生さん向けに子どもの感情と表情の関係についてお話しする機会が増えています。先日、公立中学の先生向けの研修会が終わり、アンケートに目を通していると、こんなコメントを頂きました。

 

30人以上の生徒を同時にどう見れば良いのでしょうか?
クラスで全員の表情を一人一人確認するには難しい。実践的な活用方法を知りたい。

 

さて、どんな方法があるでしょうか?

 

私の研修では、以下の動画のように、一人、あるいは、二人の小・中学生の表情写真や動画を提示し、どこに着目に、どう円滑なコミュニケーションにつなげるかについてお話しています。ゆえに、こうした問題意識が生じたことと想像します。

 

youtu.be

 

「こちらに目を合わせて来た生徒に対応する」。これは基本です。しかし、多くの生徒と目が合う。逆に、誰とも目が合わない、合わそうとしてくれないときもあるでしょう。

 

具体的な問題を通じて考えてみましょう。先生だけでなく、セミナー講師、会議の進行をするファシリテーター、企画会議や営業でプレゼンすることがあるビジネスパーソン等にも役立つと思います。

 

問題1:あなたは公立中学の先生です。ある問題の解説中、生徒の表情が変わるのに気が付きました。どの生徒にどんな対応をしたらよいでしょうか?このとき、勉強の得意な順番が、①>②>③>④の生徒と仮定します。

 

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

解説:公立中学の使命は、往々にして「落ちこぼれを出さない」というものだと思います。そうだとすれば、観察の優先順位が高いのは、勉強が得意ではない生徒です。すなわち、④の生徒に注意を向けます。④の生徒は、眉間にしわを寄せています。具体的には、眉が中央に寄り引き下げられる熟考表情です。熟考のニーズは、「考えたい」です。先生の解説がわからない。ゆえに「考えたい」のでしょう。④の生徒に質問を促す、解説を丁寧にし直す、そんなアプローチがよいと思います。

 

状況を変えて考えてみましょう。

 

問題2:あなたは進学塾の先生です。ある問題の解説中、生徒の表情が変わるのに気が付きました。どの生徒にどんな対応をしたらよいでしょうか?このとき、勉強の得意な順番が、①>②>③>④の生徒と仮定します。

 

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

解説:進学塾の使命は、「志望校に受からせる」というものです。そうだとすれば、観察の優先順位が高いのは、勉強が得意な生徒です。勉強が得意な生徒に解説の水準を合わせ、クラス全体のレベルを引き上げます。勉強の不得意な生徒、解説が難しいと思う生徒に、「このままではいけない。もっと頑張らねば」と思ってもらうためです。

 

すなわち、勉強が得意な①の生徒に注意を向けます。①の生徒は、眉が引き上げられ、目が見開かれ、口角が引き上げられる興味・関心表情です。興味・関心のニーズは、「知りたい」です。先生の解説に魅力を感じる。ゆえに「知りたい」のでしょう。このとき、特段の対応は必要なく、そのままのペースで授業をして大丈夫です。もし、「この子の興味・関心をさらに引き上げたい」と思うならば、解説している問題に関する応用的な話、例えば、異なる解き方を教える、応用問題を紹介・宿題にする、そんなアプローチもよいと思います。

 

問題1と2では、勉強の得意・不得意でどの生徒を優先するかを変えましたが、状況に応じて、感受性の高い生徒・低い生徒、対象となっている問題について関係が深そうな生徒に焦点を当てて、観察するとよいでしょう。また、机間指導のタイミングを活用すれば、なるべく多くの生徒の表情を観ることも出来るでしょう。

 

セミナー講師ならば、セミナー中、受講者の中に何名か反応が良い人がいることに気づくはずです。そうした方々をベンチマークにすることが出来ます。広くビジネスの世界では、反応の良い人だけでなく、「この話題なら、この人の動向を気にするべき」というのがあると思います。また、プレゼンや営業場面では、意思決定者の反応に注意を払うべきでしょう。

 

観察対象が複数名いる場合、全員観察しようとするのではなく、観察対象を絞ることが重要なのです。

 

なお、②は、下唇を噛んでいます。マニピュレーターと言い、感情に波が生じ、それを抑えようとする表情です。何の感情かわかりませんが、落ち着いていない状態。また、左に視線を向けています。視線の先は、興味・関心の対象です。授業中、正面を向いていないということから、授業以外の何かに興味・関心が生じ、何らかの感情が喚起されたものと推測できます。③は、中立表情です。感情がない、あるいは、弱い状態です。

 

おまけ:12月某日。移動中の一コマ。

 


清水建二

セーフな笑顔とリスクな笑顔

 先月、出張で京都と大阪に訪れたときのお話。京都での仕事が終わり、夕飯でも食べようと食べログで付近の店を検索していました。すると、和食が楽しめ、雰囲気良さそうなお店をいくつか発見。候補を2つに絞り、充分に予約出来ることを確認。

 

歩いてすぐだし、予約しなくても大丈夫だろう。こう思い、徒歩で向かいました。

 

お鮨が売りの1店舗目。古民家を改造したような店構え。外からカウンター席に空きがあるのが見え、2階もある模様。扉を開け、

 

「いらっしゃいませ~!」

「予約してないのですが、大丈夫ですか?」

「お一人様ですか?」

「はい」。

「少々お待ち下さい」。

 

予約スケジュールが書いてあるであろうPC画面を確認しに行く店員さん。すぐに戻ってくると、

 

「すみません。今、予約でいっぱいなんです」。

 

ここで問題です。

 

問題1:店員さんはどんな表情でこのセリフを言うのが適当でしょうか?

 

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

解説:このとき、店員さんは②の表情でセリフを言っていました。鼻にしわが寄せられ、口角が引き上げられる嫌悪と笑顔の混合表情です。お客さんを入れることが出来ないことから来る嫌悪。そして、嫌悪をマイルドにする笑顔でしょうか。苦笑という表現がピッタリです。悪くはないのですが、ベストではないと考えます。お客さん、このときは私ですが、大抵こうした状況のお客さんの気持ちは、「このお店で美味しそうな食事が出来ず、残念」であると考えられます。お客さんの気持ちに共感を示すことが心のこもった接客です。すなわち、③の眉の内側が引き上げられる悲しみ表情がベストです。

 

「あ~そうなんですか。残念(またの機会があったら訪れたいな)」。

「また、お願いします!」

 

気を取り直して2店舗目。ここから歩いてすぐ。

 

おばんざいが売りのお店。2階が店舗のようで、外から店内がまま見えます。50席以上ありそうで、お客さんは1組か2組。階段を上り、扉を開けます。

 

店員さんが出て来ません。

 

「すみません~」と言いながら、店内に数歩足を踏み入れようとしたところ、店員さん登場。

 

「一人ですが、良いですか?」

「ただ今、ご案内出来ません」。

 

ここで問題です。

 

問題2:店員さんはどんな表情でこのセリフを言うのが適当でしょうか?

 

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

解説:このとき、店員さんは①の表情でセリフを言っていました。口角が引き上げられる笑顔。接客におけるデフォルトの表情です。この状況においては、最も良くない表情です。目が笑っていない愛想笑いなのでダメ。そんなのではありません。問題1の解説で書いたように、お客さんは残念なのです。「私が、ここで食事を楽しめないことが嬉しいの?」そんな誤解を生んでしまいかねません。もちろん正解は、③です。

 

「そうですか(何か嫌だな)」

 

と踵を返し、当初食後に行こうと思っていたジビエバーへ(夏に出張に来た際、お客さんに連れて行ってもらい、気に入ったバー)。無事に入店出来、京野菜と猪を赤ワインと共に楽しむことが出来ました。ところで、先の2店舗目のお店は、予約を受け付けており、ガラガラだったのですが、なぜ入店出来なかったのでしょうか。一人客は嫌なのでしょうか。団体さんの予約が突然入ったのでしょうか。店員さんから説明がなかったので、謎のままです。

 

 翌日、大阪に移動。仕事の合間に有名なギフトショップへ。これから寒くなるので、セーターかカーディガンを購入しようと、店内を探索。セーターとカーディガンを着たマネキンを発見。カーディガンかっこよい。カーディガン購入決定。しかし、ハンガーにかかっているのは、セーターのみ。店員さんに伺います。

 

「あの~カーディガンは、ないのですか?」

「あのカーディガン凄く人気で現在、品切れなんです」。

 

ここで問題です。

 

問題3:店員さんはどんな表情でこのセリフを言うのが適当でしょうか?

 

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

解説:このとき、店員さんは③の表情でセリフを言っていました。大正解です。「購入できなくて残念」のお客さんの想いに見事に共感しています。カーディガンを購入出来なかったことは残念ですが、店員さんの共感に心が暖められます。

 

「あ~そうなんですか、残念!」

「○○(人気アイテムの一つ)でしたら、沢山ありますので、是非見て行って下さいね」。

「ありがとうございます」。

 

ところで、このお店。人気の理由がわかります。置いてあるアイテムも魅力的なのですが、何より店員さんが素晴らしい。他の店員さんとも二言三言会話したのですが、皆さん、表情豊かかつ共感力が高いのです。また必ず訪れたい、そう思わせてくれるお店です。

 

おまけ:仕事の空き時間にちょこっと観光。桜で有名なお寺ですが、紅葉も綺麗でした。

 

表情一つで人の心も行動も変わるのです。

 


清水建二

『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)が中国語に翻訳されました

   

 清水建二著『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出発)の簡体字中国語翻訳版 『小貓咪能有什麼壞心思:微表情、微動作、微語氣』(人民郵電出版社)が発売されました。

 

中国語版とオリジナル日本語版

 

2016年11月に日本で発売された本書が、歳月を経て2024年の本年、簡体字中国語翻訳版となり、中華圏の方々にも読んで頂ける機会を得ることが出来、とても嬉しく思います。

 

中身はオリジナル日本語版と「全く同じ!」というわけではないのです。見比べたい方は、海外のサイトから本書を購入するか、弊社に置いてある見本をご覧ください。

中身チラ見せ

本書を読まれた皆さんが、万国共通の表情を手がかりにコミュニケーション上手になり、民族の壁を越えた共感を得られることを願っています。

 

 

清水建二

空気研主催2024年10月期開講コースのお知らせ

(株)空気を読むを科学する研究所主催
2024年10月期開講コースのお知らせです。

 

2024年10月から2025年3月までの期間で
開催予定のコースは、次の2つです。

 

コース名:「表情・しぐさ分析総合コース」
開講日時:2024年10月12日 (土) 13:00開講
概要:科学的検証及び実践に裏付けられた表情・しぐさの読み解き方
及び活用法を身につけたい方向けの、2014年から続く定番コース。
受講形式:オンラインのみ(お休みの場合、録画をご覧いただくことが出来ます)
詳細・お申込み:https://peatix.com/event/4107333/view

 

コース名:「清水ゼミ」
開講日時:2024年10月26日(土)13:00開講
概要:FACS認定コーダーが、さらなる知識及び技術向上を目指し、学ぶコース。
受講形式:対面・オンライン(お休みの場合、録画をご覧いただくことが出来ます)
詳細・お申込み:https://peatix.com/event/4107869/view

 

興味・関心のある方は、是非、
空気を読むを科学する研究所で一緒に学びましょう。

 

東京、神奈川、埼玉、千葉、名古屋、岐阜、福島、
京都、大阪、神戸、岡山、新潟、山口、鹿児島等々、
日本各地から学びに来られています。
参加自由の懇親会なども不定期で開催しますので
共通の関心を持つ仲間を作ることも出来ます。

 


清水建二

書評:バチャ・メスキータ (著), 高橋 洋 (翻訳), 唐澤真弓 (解説)『文化はいかに情動をつくるのか――人と人のあいだの心理学』紀伊國屋書店(2024)

本日は、書籍の紹介をしたいと思います。

 

バチャ・メスキータ (著), 高橋 洋 (翻訳), 唐澤真弓 (解説)『文化はいかに情動をつくるのか――人と人のあいだの心理学』紀伊國屋書店(2024)

 

という書籍です。ざっくり内容紹介は次の通りです。

 

 〈喜び〉〈怒り〉〈悲しみ〉などの情動は、世界共通ではなく、文化ごとに異なる。情動の発生やとらえかたは文化によって異なるため、グローバル化が進むことで、情動に関わるすれ違いが軋轢を起こし得る。よりよい多文化共生社会を実現するためにどのような情動リテラシーが必要か、実証的な証拠を基に提言する書。

 

【目次】
第1章 ロスト・イン・トランスレーション
第2章 ふたつの情動――MINE型とOURS型
第3章 子どもの育てかた
第4章 「正しい」情動と「間違った」情動
第5章 絆を結ぶ、快く感じる
第6章 情動を表わす言葉の多様性
第7章 ワルツを学ぶ
第8章 多文化社会を生きるための情動理解

 

MINE型情動とOURS型情動

 

 本書を理解する上で欠かせない概念が、「第2章 ふたつの情動――MINE型とOURS型」です。MINE型情動モデルとは、「心に関する(Mental)」「個人の内部に存在する(Inside the person)」「本質主義的な(Essentialist)」情動モデルを意味し、WEIRD(Western, Educated, Industrialized, Rich, Democratic)文化圏で流布しているとしています。一方、OURS型情動モデルとは、「個人の外部に存在する(Outside the person)」「人間関係的な(Relational)」「状況に規定された(Situated)」情動モデルを意味し、非WEIRD文化圏、かつ歴史的に流布している/してきたとしています。

 

簡単に言えば、情動の発生を自身に置くか、人と人に間に置くか、という感じになるでしょう。

 

MINE型文化圏の人々は、次のような特徴があるとされています。
・身体の変化に基づき自己の感情を特定
・個人の相貌から情動を判断しようとする
・快く感じることは健康の証と考える
・情動は表現するもの、状況を引き受けるもの
・情動の抑制はあまり見られず、心や人間関係に有害な作用を及ぼす

 

OURS型文化圏の人々は、次のような特徴があるとされています。
・人と人のあいだで起こっている出来事から情動を推測
・居合わせている人々全員の顔から情動を判断し、相貌から行動を推測する
・健康より建設的な活動を重視
・情動は当面の状況の要請に合わせた行為として顕現

 

もちろん、WEIRD文化圏でもOURS型情動モデルに当てはまることもあれば、非WEIRD文化圏でもMINE型情動モデルに当てはまることもあると筆者は留意します。

 

日本人とアメリカ人の典型的な怒りシナリオの違い

 

 具体的な感情を基に考えるとよりコントラストがはっきりします。「第4章 「正しい」情動と「間違った」情動」から怒りエピソードについて紹介します。

 

日本人の典型的な怒りシナリオを筆者はこう説明します。

「私はあの人から不当な扱いを受けたと感じて自分を守ろうとしたが、人間関係が損なわれることを避けるために、利己的な行動や幼稚な行動をしないよう心掛けた。そして相手の視点を理解しようと試み、自分にも誤りがあれば謝るし、そうでなければ何もしない」(引用p.147)。

 

アメリカ人の典型的な怒りシナリオを筆者はこう説明します。

「私はあの人から不当な扱いを受けたと感じた。そして<こんなひどい扱いを受けるいわれなどない><もっとまともな扱いができなかったのか><黙って屈辱に耐えるつもりはない>と怒った」、もしくは「こんな明らかに間違った扱いをするなんてあの人は頭がおかしいのではないか。もしかすると邪な企みを隠しているのかも知れない。あるいはもともとそんな人なのかも知れない」(引用p.147)。

 

筆者は、「日本人の怒りとアメリカ人の怒りは、同じ情動なのか?」と投げかけます。そして、OURS型情動モデルの視点に立てば、いかなる怒りも他の怒りとまったく同じとは見なせない。日本人とアメリカ人の怒りは、誰かから不当な扱いを受けたことに起因し、怒りの経験と呼ばれている点では一致する。しかし、情動を安定した心の状態としてとらえない限り妥当性を失う、と説明します。

 

「情動は世界共通ではない」とは、どういう意味か?

 

 本書を理解する上での肝は、冒頭に書いた、「情動の発生やとらえかたは文化によって異なる」という箇所、また、今書いた「日本人とアメリカ人の怒りは、誰かから不当な扱いを受けたことに起因し、怒りの経験と呼ばれている点では一致する」と考えます。

 

筆者の述べる「情動は、世界共通ではなく、文化によって異なる」というのは、「ある情動が発生する原因が異なり得、異なるプロセスを経て、異なる行動・帰結となり得る」ということだと思います。抽象レベルにおける情動のテーマ、怒りで言うところの「不当な扱いを受けたこと」は世界共通だと、私の理解、そして私が知る限りの知見では、そう考えます。

 

また、筆者は、「表情に万国共通のマーカーはない」と述べますが、これは、ある出来事に対してある情動が発生し、それが最初は怒りであったとしても、文化的な思考が働き、情動が変遷することで、様々な表情になり得るために、「表情に世界共通のマーカーはない」としているのではないかと私は捉えます。その証拠に、本書で指摘される、「表情に万国共通のマーカーはない」とする根拠は明確には思えず、生物学的な共通基盤から発生し得る情動―例えば、物理的な攻撃を加えられる、腐ったものを食べる、死を感じる―が全くと言ってよいほど語られません。文化をテーマにしているからなのでしょうが、情動・表情が万国共通ではない、とする書き方は、誤解を与えかねないと思います。

 

いくつか批判も指摘しましたが、総体的に本書は良書です。異なる文化圏に属する方々だけでなく、他者を理解する上で、とてもよい本だと思います。本書を読むことで、目の前の人が、怒り、嫌悪し、悲しむとき、これらの原因や相手が求めている行動を早合点せずに、熟慮・解釈しようと意識できるようになると思うからです。情動に関心のある方は、本書を本棚に置き、何度も読み返すだけの価値があると思います。

 

www.amazon.co.jp

 

 以上のように清水がリアルタイムで読む本について、「もっと知りたい」「語り合いたい」と思う方は、2024年10月12日 (土) 開講の「表情・しぐさ分析総合コース」にお越しください。詳細・お申込みは、次のリンクからお願いします。

https://peatix.com/event/4107333/view

 


清水建二