先月、出張で京都と大阪に訪れたときのお話。京都での仕事が終わり、夕飯でも食べようと食べログで付近の店を検索していました。すると、和食が楽しめ、雰囲気良さそうなお店をいくつか発見。候補を2つに絞り、充分に予約出来ることを確認。
歩いてすぐだし、予約しなくても大丈夫だろう。こう思い、徒歩で向かいました。
お鮨が売りの1店舗目。古民家を改造したような店構え。外からカウンター席に空きがあるのが見え、2階もある模様。扉を開け、
「いらっしゃいませ~!」
「予約してないのですが、大丈夫ですか?」
「お一人様ですか?」
「はい」。
「少々お待ち下さい」。
予約スケジュールが書いてあるであろうPC画面を確認しに行く店員さん。すぐに戻ってくると、
「すみません。今、予約でいっぱいなんです」。
ここで問題です。
問題1:店員さんはどんな表情でこのセリフを言うのが適当でしょうか?
解説:このとき、店員さんは②の表情でセリフを言っていました。鼻にしわが寄せられ、口角が引き上げられる嫌悪と笑顔の混合表情です。お客さんを入れることが出来ないことから来る嫌悪。そして、嫌悪をマイルドにする笑顔でしょうか。苦笑という表現がピッタリです。悪くはないのですが、ベストではないと考えます。お客さん、このときは私ですが、大抵こうした状況のお客さんの気持ちは、「このお店で美味しそうな食事が出来ず、残念」であると考えられます。お客さんの気持ちに共感を示すことが心のこもった接客です。すなわち、③の眉の内側が引き上げられる悲しみ表情がベストです。
「あ~そうなんですか。残念(またの機会があったら訪れたいな)」。
「また、お願いします!」
気を取り直して2店舗目。ここから歩いてすぐ。
おばんざいが売りのお店。2階が店舗のようで、外から店内がまま見えます。50席以上ありそうで、お客さんは1組か2組。階段を上り、扉を開けます。
店員さんが出て来ません。
「すみません~」と言いながら、店内に数歩足を踏み入れようとしたところ、店員さん登場。
「一人ですが、良いですか?」
「ただ今、ご案内出来ません」。
ここで問題です。
問題2:店員さんはどんな表情でこのセリフを言うのが適当でしょうか?
解説:このとき、店員さんは①の表情でセリフを言っていました。口角が引き上げられる笑顔。接客におけるデフォルトの表情です。この状況においては、最も良くない表情です。目が笑っていない愛想笑いなのでダメ。そんなのではありません。問題1の解説で書いたように、お客さんは残念なのです。「私が、ここで食事を楽しめないことが嬉しいの?」そんな誤解を生んでしまいかねません。もちろん正解は、③です。
「そうですか(何か嫌だな)」
と踵を返し、当初食後に行こうと思っていたジビエバーへ(夏に出張に来た際、お客さんに連れて行ってもらい、気に入ったバー)。無事に入店出来、京野菜と猪を赤ワインと共に楽しむことが出来ました。ところで、先の2店舗目のお店は、予約を受け付けており、ガラガラだったのですが、なぜ入店出来なかったのでしょうか。一人客は嫌なのでしょうか。団体さんの予約が突然入ったのでしょうか。店員さんから説明がなかったので、謎のままです。
翌日、大阪に移動。仕事の合間に有名なギフトショップへ。これから寒くなるので、セーターかカーディガンを購入しようと、店内を探索。セーターとカーディガンを着たマネキンを発見。カーディガンかっこよい。カーディガン購入決定。しかし、ハンガーにかかっているのは、セーターのみ。店員さんに伺います。
「あの~カーディガンは、ないのですか?」
「あのカーディガン凄く人気で現在、品切れなんです」。
ここで問題です。
問題3:店員さんはどんな表情でこのセリフを言うのが適当でしょうか?
解説:このとき、店員さんは③の表情でセリフを言っていました。大正解です。「購入できなくて残念」のお客さんの想いに見事に共感しています。カーディガンを購入出来なかったことは残念ですが、店員さんの共感に心が暖められます。
「あ~そうなんですか、残念!」
「○○(人気アイテムの一つ)でしたら、沢山ありますので、是非見て行って下さいね」。
「ありがとうございます」。
ところで、このお店。人気の理由がわかります。置いてあるアイテムも魅力的なのですが、何より店員さんが素晴らしい。他の店員さんとも二言三言会話したのですが、皆さん、表情豊かかつ共感力が高いのです。また必ず訪れたい、そう思わせてくれるお店です。
表情一つで人の心も行動も変わるのです。
清水建二