TBS日曜劇場『VIVANT』第2シーズンで表情解析監修をしています。
私の監修した場面が第14話(8月16日放送)に初登場しました。
本日は、その場面をとり上げ、ドラマのリアルやセリフが生み出された背景を記したいと思います。
作中では、乃木から「新庄の死亡」を知らされた佐野の反応と、
「拉致を実行させたのは野崎だ」と告げられた際の佐野の反応を比較し、
AIハヤトが次のように説明する場面があります。
「先ほどのベースライン反応と比べ、変化のタイミングが遅く、意識的に行った状況下の数値が出ている」
(放送では「先ほどのベースライン反応と比べ、変化のタイミングが遅く…」の後、
司令官の「一目瞭然」というセリフが入り込みます)。
素の反応をベースラインとして取得する
「新庄の死亡」を真に初めて知った佐野、すなわち、佐野の素の非言語反応。
AIハヤトはこれらをベースライン(基準値)として取得します
乃木が知りたいことは、
「拉致を実行させたのは野崎だ」という情報を佐野が知っていたか否か。
AIハヤトは、佐野のベースライン反応とこの情報を聞いたときの佐野の反応を
比較し、ベースライン反応との乖離から疑惑率を推定しているのです。
こうした虚偽推定の方法は本当にあるのでしょうか?
あります。
いわゆる嘘発見器、正確には、ポリグラフ検査の中の
「隠匿情報検査」(CIT : Concealed Information Test)、
あるいは「有罪知識検査」(GKT : Guilty Knowledge Test)の応用です。
ただ、これは人間の専門家が質問事項を試行錯誤し考え、
ポリグラフ装置を用いて行うものです。
それでは、作中のAIハヤトのように
虚偽推定をしてくれるシステムは実在するのでしょうか?
AIハヤトは実在するか?
ウクライナとロシアの戦争が発生する前のことです。
虚偽推定システムを扱うロシアの企業に、調査会社を間に挟み、
「真実か嘘を供述している人物」が映っている複数の動画を
解析してもらったことがあります。
解析対象は、動画に映った人物の脈拍、表情、呼吸の3指標。
解析の結果、
解析可能な動画と解析不能な動画が混在していました。
解析可能な動画は、例外なく、ベースラインが存在する(取得できる)もので、
高い精度で真偽を区別することに成功していました。
AIハヤトのように人工知能がこちらの意図を汲み、
ベースライン比較し、虚偽推定してくれるシステムではありません。
しかし、この高精度の虚偽推定システムと、
発展目覚ましい現在のAIを組み合わせれば、
AIハヤトと似たものに近づける、否、
同様のものはすでに実在しているかも知れません。
微差は大差
こうした科学知見と経験を背景に
冒頭のセリフ、「先ほどのベースライン反応と比べ~」は作られたのです。
何本か用意したセリフの中でも最も専門的な言い回しが採用されました。
制作チームのこだわりが凄いですよね。
一行のセリフ、場面に込める熱量。
『科捜研の女』『最後の鑑定人』の監修のときも同様でしたが、
こうした微差の積み重ねが大差となるのだなと感じました。
15話以降は、どんな「微」が登場するでしょうか?
引き続き、『VIVANT』をお楽しみ下さい。
おまけ:
この度、私の元へ『VIVANT』チームから監修依頼が来たのは、
私が防衛省情報本部の外部研修講師を長年務めていたからでしょうか?
監修はカバーストリーで、真の目的は情報要員の微表情トレーニングの内容を
探りに来た某国スパイ!ヒューミントか!?
冗談です。ドラマを観過ぎました。
そんな日常の出来事でも深読みしてしまうくらい思考の癖に侵入する
『VIVANT』の世界観。おススメです。まだ観てない方は、是非。
