清水建二の微表情日記

空気を読むを科学する研究所代表の清水建二が、表情・微表情を起点にAI・オンライン時代の人間理解と対人コミュニケーションを科学的に考えるブログ

セミナータイトル新メニュー公開:『VIVANT』監修者が語る「人の気持ち」の読み解き方と伝え方ー表情・しぐさ・嘘の科学から学ぶ非言語コミュニケーションー

 

空気を読むを科学する研究所を設立して12年。

科学実験や研究知見の実務転用を講演・講義・研修・コンサル等

を通じて行ってきました。

 

一方、「表情・微表情を読む」や「嘘を見抜く」という分野は、

様々なメディアで注目して頂き、ドラマ監修、バラエティー番組出演、

ニュース・ラジオ・雑誌上での著名人心理分析等々、

様々な形で関わらせて頂きました。

 

一例を挙げますと、

ドラマ監修では、『科捜研の女』『最後の鑑定人』『VIVANT』、

バラエティー番組では、『チコちゃんに叱られる』『ホンマでっか!?TV

『マネーハンター』『偉人たちの健康診断』『この差って何ですか?』、

ニュース・ラジオ・雑誌上では、『みんなのニュース』『Mr.サンデー』

『羽鳥慎一 モーニングショー』『Abema Prime』『SPA!

『ハーバービジネスオンライン』『東洋経済Online

等々です。

 

清水が関わった番組を題材にしたエンタメセミナー

 

そこで、これまで清水が出演・監修・分析・演出等で関わった

ドラマやバラエティー・ニュース番組を題材に、科学の「リアル」と

メディアの「魅せ方」に基づく、表情コミュニケーション上達のポイントを

皆さまに共有するセミナーを作りました。

 

例えば、

「『VIVANT』のAIハヤトのように嘘を見抜けるか?」

「『最後の鑑定人』から学ぶ!相手の心を動かす表情」

「監修者に挑戦!この場面、どんな感情?どんなセリフを入れる?」

「『科捜研の女』で描かれた心の中の読み解き方」

「バラエティー番組でアイドルの本音を見抜いた表情分析法」等々

 

具体的なシーン、豊富な写真・動画を用いた解説・クイズを通じて、

表情・しぐさ・感情・嘘の科学をわかりやすく紹介し、周りに伝えたくなるTVの裏話や

すぐに使えるコミュニケーションのポイントをお伝えするセミナーです。

 

こんな内容です

 

プログラム例

1. VIVANT』のAIハヤトのように嘘を見抜けるか?

 ・『VIVANT』が描く虚偽検出のリアル(14話より)

 ・虚偽検出クイズに挑戦!

 ・ビジネス交渉で活用するー観察し、比べ、ニーズを推測するー

 ・【裏話】AIハヤトは実在するか?

 

2. 『最後の鑑定人』から学ぶ!相手の心を動かす表情

 ・『最後の鑑定人』で描かれた「何かを言いかけるような目」とは?(3話より)

 ・日常・ビジネスコミュニケーションで活用するー表情で相手の心を動かすー

 ・今すぐ使える眉コミュニケーションのススメ

 ・【裏話】放映時間5分、実際の撮影時間は?

 

3. 表情から心の中を読むということ

 ・『最後の鑑定人』監修に挑戦!この場面、どんな感情?(4話より)

 ・相手の好みを表情から推測しよう

 ・『科捜研の女』監修に挑戦!この場面、どんな感情?どんなセリフを入れる?(シーズン16 1話より)

 ・面談・面接で活用するー言葉と微表情の不一致から深掘りポイントを発見するー

 

4. バラエティー番組でアイドルの本音を見抜いた表情分析の戦略

 ・姿勢、しぐさから表情へー大きな変化から小さな変化ー

 ・『マネーハンター』でアイドルの本音を見抜いた表情分析の戦略

 ・【裏話】TV番組の「嘘を見抜く」実験で体験したこと

 

講演時間、参加者層、開催目的に応じてご相談ください

 

講演時間、参加者層、開催目的に応じて、

テレビ・ドラマ色を強くする、AI・未来の働き方を強くする、

管理職・営業・接客などビジネス応用を強くする、

表情・微表情の参加型クイズを増やす、等々、内容を調整いたします。

 

「面白いけど、科学的。」

 

講演を聴いた翌日から、

人の顔を見ることが面白くなる。相手の話を聞きたくなる。

テレビの舞台裏と科学、そして体験を通じて、

「人を読む・伝える」ことの面白さをお届けします。

 

講演依頼ドシドシお待ちしています。

 

清水

『VIVANT』の表情解析監修者が教える、「人を見る力」ー生成AI時代だからこそ学びたい表情・しぐさ分析

 

「この人、本当はどう思っているんだろう?」

仕事でも日常生活でも、そんなことを感じる瞬間はないでしょうか。

 

口では「大丈夫です」と言っている。

けれど、どこか表情が硬い。

「いいですね」と答えてくれた。

しかし、一瞬だけ何か引っかかるような反応をした。

 

私たちは普段、言葉だけを聞いてコミュニケーションしているわけではありません。

表情、視線、姿勢、身体の動き、声の調子。

こうした様々な情報を、意識的・無意識的に

受け取りながら相手とコミュニケーションしています。

では、こうした「人を見る力」は、学ぶことが出来るのでしょうか。

 

私は、出来ると考えています。

ただし、それは、「この表情だから、この人はこう思っている」

と単純に心を決めつける技術ではありません。

むしろ、その逆です。

表情から「心を当てる」のではなく、「変化に気づく」

私はこれまで、表情やしぐさ、微表情を研究・分析し、

企業研修、犯罪捜査協力、テレビ番組の監修などに携わってきました。

 

最近では、TBS系ドラマ『VIVANT』の表情解析監修も担当しました。

 

ドラマでは、限られた時間の中で「この人物はいま何を感じているのか」

「どのような反応ならリアリティーがあるのか」を、

科学的な知見と物語としての面白さの両方から考えます。

 

その経験を通じても改めて感じることがあります。

それは、人の心は、一つの表情だけではわからないということです。

 

例えば、腕を組んでいるから「拒絶している」。

視線をそらしたから「嘘をついている」。

笑顔だから「喜んでいる」。

そんなふうに単純に判断することは出来ません。

 

重要なのは、

「普段と比べて、何が変わったのか」

「どの話題のときに反応したのか」

「表情と発言は一致しているのか」

「その人が置かれている状況はどんなものか」

といった情報を組み合わせて考えることです。

 

つまり、表情・しぐさ分析とは、人の心を魔法のように読み当てる技術ではなく、

相手の変化に気づき、より適切にコミュニケーションするための観察技術

なのです。

「AIに聞くから大丈夫です」の時代に、人間に残るもの

そして、私はこの技術が、生成AI時代にますます重要になると考えています。

生成AIは便利です。わからないことを尋ねれば、瞬時に答えてくれる。

文章を作ってくれる。相談にも乗ってくれる。

場合によっては、人間より丁寧で、人間より共感的に感じることさえあります。

では、人間同士のコミュニケーションには、何が残るのでしょうか。

 

私は、その一つが、

目の前にいる人の反応を受け取り、自分の言動を調整すること

だと思います。

 

「この説明では伝わっていなさそうだ」

「さっきまで楽しそうだったのに、急に表情が変わった」

「本人は大丈夫と言っているけれど、本当にこのまま話を進めてよいだろうか」

 

そんな相手の変化に気づき、

 

説明の仕方を変える。質問する。少し待つ。

別の話題に切り替える。あるいは、あえて踏み込んで聞く。

 

人間同士のコミュニケーションとは、こうした微調整の連続です。

AIから正しい「答え」を得る能力が高まれば高まるほど、

答えのない人間を相手にする力の価値は、むしろ高まっていくのではないでしょうか。

表情を「読む」だけではありません。「つくる」ことも学びます

今回の「表情・しぐさ分析総合コース」では、

相手を観察することだけを学ぶわけではありません。もう一つ重要なのが、

 

自分自身がどのような表情や非言語メッセージを発しているのか

 

という視点です。

 

自分では普通に話しているつもりなのに、怖く見える。

熱心に説明しているつもりなのに、相手から見ると圧が強い。

真剣に聞いているつもりなのに、無関心に見えてしまう。

こうしたことは珍しくありません。

 

コミュニケーションは、「相手を読む」だけではなく、

「自分がどう伝わっているかを知る」こととセットです。

 

本コースでは、表情やしぐさについて科学的な知識を学ぶだけでなく、

実際の表情や動画などを用いながら、観察する → 考える → 表現する

という力を総合的に身につけて頂きます。

こんな方に受講して頂きたいと思っています

例えば、

・営業、商談、交渉など、人と向き合う仕事をされている方
・部下やメンバーとのコミュニケーションに関心のある管理職の方
・人事、採用、面接に携わる方
・教育、医療、福祉、カウンセリングなど対人援助職の方
・講師、コンサルタント、コーチなど人に働きかける仕事をされている方
・俳優、ナレーター、接客業など「表現」に関心のある方
・表情、微表情、非言語コミュニケーションを体系的に学びたい方

などに、特に役立てて頂けると思います。

 

もちろん、「表情分析を全く勉強したことがない」という方も対象です。

これまで弊社の講座には、全くの初心者の方から、大学教員、研究者、

各分野の専門家、講師業の方まで、様々なバックグラウンドの方に

ご参加頂いてきました。

 

必要なのは予備知識ではなく、

「人をもっとよく観察したい」

「人とのコミュニケーションをもっと深く理解したい」

という関心です。

『VIVANT』の世界から、日常のコミュニケーションへ

ドラマの中では、一瞬の表情が物語を動かすことがあります。

しかし、現実世界では、表情だけですべてがわかることなどありません。

だからこそ面白いのだと思います。

 

表情を見る。しぐさを見る。言葉を聞く。

その人の普段を知る。状況を考える。

 

そして、「もしかすると、こう感じているのかな」

と仮説を持ちながら、相手とコミュニケーションする。

 

表情分析を学ぶ本当の価値は、

「人の心が読めるようになること」

ではなく、「人をちゃんと見るようになること」なのかも知れません。

 

生成AIによって、知識を得ることも、文章を書くことも、

答えを探すことも、かつてないほど簡単になりました。

だからこそ私は、

 

目の前にいる人を見る力。
その人の反応を受け取る力。
そして、自分の想いを表現する力。

 

こうした、人間同士だからこそ必要となる能力を、

改めて学ぶ価値があると考えています。

 

2026年10月3日(土)より、

「【『VIVANT』表情解析監修者がお届けする】表情・しぐさ分析総合コース
―生成AIに代替されない非言語コミュニケーション力を身につける―」

を開講します。アーカイブ配信もございます。

 

表情・しぐさを科学的に学び、人を見る力、

そして人に伝える力を一緒に磨いてみませんか。

 

皆様と学べることを楽しみにしています。

 

▼講座内容・お申込みはこちら

 

『VIVANT』第2シーズン表情解析監修者の語りーちょっとマニアックな表情の話

 

VIVANT』第2シーズン表情解析監修者の清水建二です。

 

……すみません。得意げに一度、名乗ってみたかったのです。

 

2024年秋に『VIVANT』制作チームの方から監修依頼を頂いてから、

監修した事実を公表したくてウズウズしておりました。

 

依頼時点では、監修者である私にも何の作品なのか伏せられていました。

それが『VIVANT』だとわかったとき、自分自身がファンである作品に携われることを知り、

とても高揚したことを覚えています。

 

AIハヤトが示した「AU1+2+4」に意味はある?

 

さて、本日は少しマニアックな表情の話をしたいと思います。

 

14話及び15話で、別班の分析AI「ハヤト」が

警視庁公安部の佐野部長を分析するシーン。

ハヤトのモニター上、佐野部長の顔のまわりに、

AU4AU1+2+4AU12AU23+24AU14

という記号が表示されていたことに気づいた方はいらっしゃったでしょうか?

 

ほんの一瞬なので、見過ごしてしまった方も多いと思います。

 

実はこれ、顔の動きを客観的に記述するシステムである

Facial Action Coding System(顔面動作符号化システム)、

略称FACS(ファクス)のコーディング法に基づいたものです。

 

先ほどの記号を日本語にすると、おおよそ次のようになります。

AU4=眉が下げられる

AU1+2+4=眉の内側と外側が引き上げられる+眉が下げられる

AU12=口角が引き上げられる

AU23+24=唇が引き締められる+唇がプレスされる

AU14=えくぼが作られる

 

FACSFacial Action Coding System)の考え

 

FACSは、表情研究で知られるポール・エクマンらによって1978年に開発され、

その後、表情研究における代表的な分析手法として世界中で活用されるようになりました。

 

現在、表情から感情を推定するAIがいくつかのメーカーから提供されていますが、

こうしたAIシステムの中にも、FACSの考え方を理論的・技術的な基盤の一つ

としているものがあります。

 

ここで重要なのは、

FACSそのものは、顔の動きから直接「感情」を判定するシステムではない

ということです。

 

FACSが記述するのは、あくまで観察可能な顔の動きです。

冒頭のAUを例にするならば、

「眉の内側と外側が引き上げられ、同時に眉が下げられる」

という動きが確認されれば、AU1+2+4とコーディングする。

 

では、AU1+2+4がどんな意味を持ち、どんな表情・感情と関連するのか。

 ここで初めて、様々な実験や研究から得られた知見を参照します。

 

その代表的な参照枠組みの一つが、

ポール・エクマンの基本情動(感情)理論です。

エクマンは、感情には進化生物学的な基盤があり、その表出である表情にも

文化を越えて共通する特徴があると提唱しました。

 

特に、幸福・軽蔑・嫌悪・怒り・悲しみ・驚き・恐怖などの感情について、

特徴的な顔の動きとの関係を整理しています。

そして、それらの表情とAUのコンビネーションとの関係が体系化されました。

 

感情認識AIの目と、人間の目のバランス

 

エクマンらの整理によれば、

AU1+2+4+5+7+20

は、恐怖表情を構成する顔の動きの組み合わせの一つです。

 

したがって、AU1+2+4が生じているならば、恐怖表情を構成する動きの一部、

すなわち部分的な恐怖表情である可能性を考えることができます。

つまり、この場面の佐野部長には、恐怖と関連する顔の動きの一部が現れていた、

と推定することができます。

 

ただし、ここが重要です。

AU1+2+4が出た=その人物は恐怖を感じている、

と直ちに断定できるわけではありません。

 

現代の感情認識AIの中には、分析対象人物の顔の動きを分類し、

過去の研究で整理された表情パターンなどと照合することで、

「特定の表情・感情が生じている可能性」を算出・推定するシステムがあります。

 

こうした出力は直感的でわかりやすいという大きな利点があります。

一方、「特定の顔の動き=特定の感情」という対応関係を、

そのままあらゆる人物・状況に当てはめてしまうことには注意が必要です。

 

そこで、より精密な分析では、以前のブログでも書いたベースライン

(その人物に通常見られる反応)を考慮したり、AIにはAU

つまり「どんな顔の動きが、いつ、どの程度生じたのか」の測定を担ってもらい、

その意味については人間が発言内容や文脈、反応のタイミングなどと併せて解釈する、

という方法をとることもあります。

 

言い換えれば、

AIに「何が動いたのか」を測ってもらい、人間が「なぜ動いたのか」を考える。

そんな役割分担です。

 

エクマンの感情理論については、現在も様々な議論があります。

しかし、エクマンらが開発した表情分析技法FACSは、目に見える顔の動きを

体系的かつ客観的に記述する方法として、特定の感情理論だけに依存することなく、

現在も世界中の研究者・実務家に活用されています。

 

『VIVANT』の考察のヒントは、言葉の裏にあり?

 

VIVANT』のハヤトが表示していたAU。

単なる「それっぽいAI画面」をつくるために並べられた記号ではありません。

画面に一瞬しか映らない小さな記号にも、表情科学の考え方が組み込まれています。

 

ドラマをご覧になるとき、多くの方は登場人物のセリフやストーリーを追うと思います。

しかし、そのセリフの裏側で眉がどう動いたのか、口元にどんな変化が起きたのか。

そしてAIハヤトは、その変化をどう捉えているのか。

そんなところに注目してみると、『VIVANT』をまた少し違った角度から楽しめるかも知れません。

 

ほんの0.数秒の表情にも、物語があります。

そして、その一瞬をどう描くか――。

そこにも、表情解析監修者、そして演出チームの仕事がひっそりと潜んでいるのです。

 

 

清水

『VIVANT』第2シーズン表情解析監修者の語りー15話のポリグラフはアメリカ式?&カットになった幻のセリフ

 

前回に続き、

VIVANT』第2シーズン監修者の語り。

ネタバレなきよう、二つだけ。

 

VIVANT15話では、乃木が佐野部長を尋問するシーン、

ポリグラフ検査(いわゆる嘘発見器)のシーンを監修しました。

 

15話のポリグラフの使い方は、

日本式の「隠匿情報検査」(CIT : Concealed Information Test)ではなく、

アメリカ式の「比較質問法」(CQTComparison Question Test)を意識した作りになっています

(物語上の設定では、比較質問がなされているものの、

「魅せる尋問」のリズムが崩れるので、放送では比較質問は流さないという工夫をこらし…細かくなるので、以下省略)。

 

もう一つ。

実は、表情分析・解析に関心のある方にとって高まるだろうシーン、

「信頼できる筋肉」といい、意図的に動かすのが困難な表情筋に関するシーンがあったはずでしたが、諸事情により、残念ながら放送ではカットに。

ノベライズ版等で復活するでしょうか?

いつかどこかでお話出来ればと思います。

 

まだ『VIVANT』第2シーズン観ていない方は、是非!

すぐリアルタイムに追いつきます。U-NEXTで観られます。

 

清水

『VIVANT』第2シーズン表情解析監修者の語りーあなたの考察に微表情は含まれているか?

 

TBS日曜劇場『VIVANT』第2シーズンで表情解析監修をしています。

私の監修した場面が第14話(816日放送)に初登場しました。

本日は、その場面をとり上げ、ドラマのリアルやセリフが生み出された背景を記したいと思います。

 

作中では、乃木から「新庄の死亡」を知らされた佐野の反応と、

「拉致を実行させたのは野崎だ」と告げられた際の佐野の反応を比較し、

AIハヤトが次のように説明する場面があります。

 

「先ほどのベースライン反応と比べ、変化のタイミングが遅く、意識的に行った状況下の数値が出ている」

(放送では「先ほどのベースライン反応と比べ、変化のタイミングが遅く…」の後、

司令官の「一目瞭然」というセリフが入り込みます)。

 

素の反応をベースラインとして取得する

 

「新庄の死亡」を真に初めて知った佐野、すなわち、佐野の素の非言語反応。

AIハヤトはこれらをベースライン(基準値)として取得します

 

乃木が知りたいことは、

「拉致を実行させたのは野崎だ」という情報を佐野が知っていたか否か。

AIハヤトは、佐野のベースライン反応とこの情報を聞いたときの佐野の反応を

比較し、ベースライン反応との乖離から疑惑率を推定しているのです。

 

こうした虚偽推定の方法は本当にあるのでしょうか?

 

あります。

 

いわゆる嘘発見器、正確には、ポリグラフ検査の中の

「隠匿情報検査」(CIT : Concealed Information Test)

考え方を応用したものです

(8/24追記:CITのような情報認識の発想に加え、

Vrij教授らが提唱する「比較可能な真実」という考え方にも近いと言えます)。

 

ただ、これは人間の専門家が質問事項を試行錯誤し考え、

ポリグラフ装置を用いて行うものです。

 

それでは、作中のAIハヤトのように

虚偽推定をしてくれるシステムは実在するのでしょうか?

 

AIハヤトは実在するか?

 

ウクライナとロシアの戦争が発生する前のことです。

虚偽推定システムを扱うロシアの企業に、調査会社を間に挟み、

「真実か嘘を供述している人物」が映っている複数の動画を

解析してもらったことがあります。

 

解析対象は、動画に映った人物の脈拍、表情、呼吸の3指標。

 

私が用意した動画分析、つまり、非接触でこの3指標を

計測できるシステムというのがポイントです。

 

解析の結果、

解析可能な動画と解析不能な動画が混在していました。

解析可能な動画は、例外なく、ベースラインが存在する(取得できる)もので、

高い割合で真偽を区別することに成功していました

 

AIハヤトのように人工知能がこちらの意図を汲み、

ベースライン比較し、虚偽推定してくれるシステムではありません。

 

しかし、この高精度の虚偽推定システムと、

発展目覚ましい現在のAIを組み合わせれば、

AIハヤトと似たものに近づける、否、

同様のものはすでに実在しているかも知れません。

 

微差は大差

 

こうした科学知見と経験を背景に

冒頭のセリフ、「先ほどのベースライン反応と比べ~」は作られたのです。

何本か用意したセリフの中でも最も専門的な言い回しが採用されました。

 

制作チームのこだわりが凄いですよね。

一行のセリフ、場面に込める熱量。

『科捜研の女』『最後の鑑定人』の監修のときも同様でしたが、

こうした微差の積み重ねが大差となるのだなと感じました。

 

15話以降は、どんな「微」が登場するでしょうか?

引き続き、『VIVANT』をお楽しみ下さい。

 

おまけ:

この度、私の元へ『VIVANT』チームから監修依頼が来たのは、

私が防衛省情報本部の外部研修講師を長年務めていたからでしょうか?

監修はカバーストリーで、真の目的は情報要員の微表情トレーニングの内容を

探りに来た某国スパイ!ヒューミントか!?

 

冗談です。ドラマを観過ぎました。

そんな日常の出来事でも深読みしてしまうくらい思考の癖に侵入する

VIVANT』の世界観。おススメです。まだ観てない方は、是非。

 

AI時代の情報検索・収集法の落とし穴―生成AIは「要約が得意」と言われるけれど

 

私は生成AIを使わない日はない、

と言っていいくらい、ほぼ毎日使っています。

利用法の一つに学術知見の収集があります。

あるテーマについてどんなことが科学的にわかっているか知りたい。

そんなとき、AIに学術論文の検索と簡単な内容の紹介をお願いします。

 

表情から健康状態や治療経過を推定する研究はないか調べていたときのことです。

AIはいくつかの論文とその内容を教えてくれました。

 

AIはどんなふうに論文を紹介してくれたか?

 

AIの回答

――――――――――

Bailey, G., Halamová, J., & Vráblová, V. (2023). Clients’ Facial Expressions of Self-Compassion, Self-Criticism, and Self-Protection in Emotion-Focused Therapy Videos. International Journal of Environmental Research and Public Health20(2), 1129. https://doi.org/10.3390/ijerph20021129

この論文は、感情焦点化療法(EFT)の実際のセッション映像を使い、クライエントが「自己批判」「自己慈悲」「自己防衛」を表しているとき、顔にどのようなAction Unit(AU)が現れるかを自動表情分析ソフトiMotionsで調べた探索的研究です。著者らは、自己批判では怒り・軽蔑・恐怖、自己慈悲では悲しみ・幸福・怒り、自己防衛では怒りを中心に複数感情に関連するAUが混在すると解釈しています。

――――――――――

※AUとは、顔面筋の動きの単位を意味します。

 

面白そうと思い、論文を入手し、読んでみました。

すると驚くべきことがわかりました。

 

論文を読んでわかった結果と考察の大きな乖離

 

論文の実験結果パートにおいて自己批判時には、

「AU1、AU2、AU7、AU12_smirkの出現がベースラインと比較して有意に増加し、

AU5、AU20、AU43の出現は有意に減少した。

その他のAUには有意差が認められなかった」

と書かれていました。

 

一方、論文の考察パートにおいて自己批判時には、

「怒りの表出に特徴的なものとしてAU5とAU7を、

また軽蔑に特徴的なものとしてAU12_smirkとAU43を特定した。

AU1、AU2、AU5、AU7、AU20は、恐怖と関連している。

以上を踏まえると、クライエントが内なる批判的な声を表現している際の顔には、

怒り、軽蔑、恐怖に特徴的なAUが現れることを示している」

と書かれていました。

 

明かな問題です。

AU5、AU20、AU43は有意に減少しているのに

出現・増加したかのように解釈し、著者は、

「怒り、軽蔑、恐怖に特徴的なAUが現れる」としてしまっているのです

(なお、AU12_smirkは、片方の口角が引き上げられる動きですので、
「軽蔑」という解釈は問題ないと考えられます)

 

この論文は査読付きです。

第三者の目が入っているにも関わらず、

著者は結果の読みとりを大きく間違えているのです。

査読者も気づかなかったのでしょうか。

 

生成AIを情報検察・収集で使う際の注意

 

生成AIを使う私たちにとって重要なのは、

AIは、この考察パートを論文の内容として紹介している

ということです。

 

仕事で学術的な根拠が必要になりAI検索をするとき、

AIの回答を確認せず、そのまま信じてしまっていたら、

著者の解釈の間違いをそのままコピーしてしまうことになります。

 

結果の解釈・考察は、著者のカラーが生じるのは当然ですが、

ときに「なぜこんな解釈・考察になるの?」と思うこともあります。

しかし、問題なのはそこではなく、

AIのアウトプットが客観的な結果(データ)パートではなく、

主観が入り得る考察パートを表示させることがあり得るということです。

 

どんな論文があるのか、どんな内容か、ざっくり知るにはAI検索は便利です。

しかし、その知見を用いてレポート作成やプロジェクト実行をするには、

コピペは危険です。

自身の目で論文をしっかり読んだ方が良いと思います。

 

「AIか学生が書いたエントリーシートなのかわからない」という採用面接担当の方へ~福岡県議会“金銭授受疑惑”の微表情を事例に考える~

 

生成AIの作文能力が向上するにつれ、

「AIが書いたエントリーシートなのか、学生が書いたものなのかわからない」という

採用面接担当の方の悩みを多々、見聞きするようになりました。

 

様々な対策がなされているようですが、非言語、

殊、学生さんの微表情を観察するのも一つの手です。

 

論より証拠。次の動画を観て下さい。

福岡県議会“金銭授受疑惑”に関するニュース動画です。

3:47~3:57をご覧ください。

 

youtu.be

 

どんな微表情に気づきましたか?

また、この微表情が生じている理由は何でしょうか?

 

福岡県議会“金銭授受疑惑” 蔵内氏に生じた微表情

 

記者の「500万円を受け取ったという主張に対しての

蔵内さんご本人のご認識としてはいかがですか?」という質問に対し、

蔵内氏は「一切ございません」と答えています。

 

3:55のとき、蔵内氏の上唇が一瞬だけ引き上げられています。

これは嫌悪の微表情です。

 

微表情は、抑制された感情の漏洩です。

嫌悪は、「不快なモノを取り除きたい」という感情です。

この文脈での嫌悪微表情は、

「記者の質問を不快に感じ、取り除きたいと思うものの、この気持ちを表明できない」

と考えられます。

 

微表情の表出=嘘の証拠という等式が成り立てば、

心理分析は簡単なのですが、人の心はそこまで単純ではありません。

他の非言語(たとえば、「頷き」=肯定反応があるか否か等)、質問の仕方、

微表情後に紡ぎ出される言語情報等を総合的に勘案しなければ、

嘘の可能性を見積もることは出来ません。

 

それでは、詳しく心理分析をすると…

と行きたいところですが、就職面接に話を戻します。

 

ポイントは、微表情の観察+深掘り質問

 

面接時、エントリーシートに沿い、学生さんの話を聞きます。

ポジティブな内容を話しているのに、学生さんの顔に嫌悪の微表情が浮かぶとします。

ここで「その点についてもう少し詳しく教えて下さい」等、深堀り質問をして下さい。

ポジティブな言葉とネガティブな感情というように両者が矛盾するとき、深堀りするのです。

チャンネル(言葉、声、表情、身体動作等、コミュニケーションの経路のこと)間の

矛盾は、何かがおかしい。嘘かどうかは即断できないものの、気持ちがストレートではないのです。

 

冒頭の事例のように、心理分析を始める必要はありません。

「学生さんは不快を抱いている可能性がある」のみわかればよいのです。

不快の理由を深堀りすればよいのです。

「なぜ不快なのか」「なぜ嫌悪なのか」を聞いてはいけません。

この質問が嫌悪を引き起こしかねません。

この問いは自身の心にとどめておきます。

学生さんに不快や脅威を与えないように、興味・関心を持って

「その点についてもう少し詳しく教えて下さい」と聞いて下さい。

 

AIに書かせた内容でも真の体験ならば、

エントリーシートの内容を超えた、具体的な内容を聞くことが出来るでしょう。

AIに書かせた内容で嘘、あるいは、必要以上に盛った「体験」ならば、

具体性に乏しい内容が繰り返されるでしょう。

 

AI時代こそ、AIに代替できない身体言語に

目と耳を向ける重要性が改めて問われるのだと思います。