微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

新世代のウソ検知の科学②―ウソをつくのは大変?

 

ウソをつくときって頭を凄く使いますよね。これを、認知的負担が高い、と言います。

 

ウソを上手くつくために、自分が話したウソの内容を覚えていなくてはいけないし、辻褄が合うようにストーリーを構築しなくてはいけないし、相手に与える印象も正直者に見えるように操作しなくてはいけない…etc.ウソをつくという行為は非常に認知的な負担が高いことなのです。

 

ウソをつくことは正直に話すことよりも認知的に難しいことである、と多くの研究が示しています。例えば、警察の取り調べにおける容疑者の様子を観察した研究によると、言葉をつまらし、瞬きが減り、手や腕の動きが減る、という現象に伴いウソがつかれていることがわかっています(Mann, Vrij, & Bull, 2002)。言葉をつまらす、という現象は感情的なものですが、他の現象は認知的な負担の高まりによるものです。

 

また、容疑者は本当のことを言っているときよりもウソをついているときの方が、一生懸命に考えている様子が伺える、と多くの警察官らによって報告されています(Mann & Vrij, 2006)。一方で、ウソをついた経験のある人々からの証言によれば、多くの人がウソをつくときに認知的な負担を感じる、と報告しています(Vrij, Ennis, Farman, & Mann, 2010)。

 

そこでこんな前提が考えられました。

 

ウソをつく方が正直に話すよりも認知的な資源を多く使うとするならば、ウソつきには認知的な資源があまり残されていないハズ。ウソをついている可能性のある者に、さらなる認知的な負担を増やすような状況を生み出せば、正直者と同じようには振る舞えないだろう

 

というものです。

 

この前提をもとに、ウソとホントを峻別するための認知的負担増加策が考えられ始めました。

 

その方策とは?

次回よりご紹介いたします。

 

 

清水建二

参考文献

Mann, S., Vrij, A., & Bull, R. (2002). Suspects, lies and videotape: An analysis of authentic high-stakes liars. Law and Human Behavior, 26, 365-375.

Mann, S., & Vrij, A., (2006). Police officers’ judgements of veracity, tenseness, cognitive load and attempted behavioural control in real life police interviews. Psychology, Crime, & Law, 12 307-319.

Vrij, A., Ennis, E., Farman, S., & Mann, S. (2010). People’s perceptions of their truthful and deceptive interactions in daily life. Journal of Forensic Psychology, 2, 6-42.