一ヶ月ほど前、新橋にあるお寿司屋さんで二言三言会話を交わした板前さんがいました。
一昨日、池袋にあるお寿司屋さんに入った瞬間、「あ!この前、新橋にいましたよね?」と目の前の板前さんに無意識に言葉を発していました。
その板前さん曰く、池袋のそのお店は、新橋にあるお寿司屋さんと同じ系列のお寿司屋さんで、その系列のお店が大阪にも進出するらしく、研修で東京のお店を回っているとのことでした。
「この人、どこかであったことある。」「この顔に見覚えがある。」
一度しか会ってないのに、会話もほとんどしていないのに、
どうしても忘れられない顔、ついつい浮かんでくる顔がある。
逆にそこそこ会話したハズなのに、忘れてしまう顔、忘れるは行き過ぎでも知り合いかどうか自信が持てない顔がある。
そんな顔々があります。そんな経験をみなさんもされたことがあるのではないかと思います。
こうした現象の裏にはどんな科学があるのでしょうか?
顔の魅力と記憶との関連を調査した研究によると、
魅力度が高度だと判断された顔は、魅力度が中度や低度だと判断された顔と比べ、記憶に残りやすいということが見出されています(Tsukiura & Cabeza, 2011)。
また悪い人に見えると判断された顔は、悪い人に見えないと判断された顔と比べ、記憶に残りやすいということが見出されています(Tsukiuraら,2013)。
私たちの脳は、他者の顔に対し、強度のポジティブもしくは強度のネガティブな情動的評価を下したとき特に、その顔を脳裏に刻み込み、しっかりと記憶しようとする働きをすることがわかっています。
情動的評価を伴って他者の顔を記憶することで、他者の顔を見たときに、近づいても大丈夫か、仲間になれそうか、信用できそうか、危険な人物だろうか、と様々な判断をしながら、私たちは様々な集団活動に適応していると考えられているのです。
ところで、寿司屋の板前さんはイケメンだったか?
取り立ててイケメンだったとは感じませんでしたが、私の寿司の好みをピタッと当ててくれたので、私の情動的評価がポジティブに大きく振れたのでしょう。。。
本日の教訓
顔を覚えてもらいやすいのは、イケメンと美女。
イケメンと美女じゃない人は、相手にポジティブな感情を与えれば、顔を覚えてもらえる!
清水建二
参考文献
Tsukiura T, Cabeza R. "Remembering beauty: Roles of orbitofrontal and hippocampal regions in successful memory encoding of attractive faces." Neuroimage. 2011; 54: 653-660.
Tsukiura T, Shigemune Y, Nouchi R, Kambara T, Kawashima R. “Insular and hippocampal contributions to remembering people with an impression of bad personality.” Soc Cogn Affect Neurosci. 2013 Jun;8(5):515-22.