微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

面接テクニック・シーズン2②―認知的ウソ検知アプローチ:認知的負担を高めるには?

 

面接テクニック・シーズン2の2回目です。本日はこれより、認知的ウソ検知アプローチの3つのテクニックについて一つ一つ説明していきたいと思います。

 

認知的ウソ検知アプローチの核となる考えは、真実を話す者とウソを話す者との間における認知的負担の違いを際立たせる、というものです。

 

どのように・なぜ両者の違いを際立たせるのでしょうか?次の3つのテクニックを用います。

 

①認知的な負担を高める

②被面接者に積極的に話してもらうようにする

③反予測質問をする

 

それぞれ見ていきましょう。

 

①認知的な負担を高める

「認知的な負担を高める」とは、より頭を使って考えてもらう、という意味です。ウソをつく行為は真実を話す行為に比べ、認知的な負担が高まる、すなわち頭を使うということが知られています。ウソをつくことにより認知的な資源が減ります。そこに戦略的に働きかけることにより、さらに認知的な資源を使ってもらい、ウソと真実との差を明らかにしようとする手法です。

 

具体的な「認知的な負担を高める」方法とは、逆質問法、アイコンタクト維持法、交互質問法の3つです。逆質問法とは、時系列のあるストーリーや順番を形成できるストーリーを逆順で話してもらう手法です。ウソつきは、時系列のあるストーリーを順番に話すリハーサルは通常しますが、逆から話すリハーサルはしません。そこで逆に話してもらうことにより、認知的な負担が高まります。ウソつきはウソのストーリーを話すことに加え、逆から話す必要が生じ、より大きな認知的負担を抱えることにより、ウソのサインが生じやすくなるのです。一方、真実を話す者にとっても時系列を逆に辿ることは普通に話すよりも認知的な負担を抱える行為になりますが、ウソつきよりはその負担が少なく済みます。また記憶というものは、様々な視点から質問されることにより、刺激され、訂正や追加情報が加わります。ウソつきは、ウソのストーリを再生しますが、真実を話す者は記憶を再構築します。記憶が再構築される過程で訂正や追加情報が加わるのです。すなわち、逆質問をしているときの観察ポイントは、ウソのサインの観察に加え、ストーリーが再生されているか再構築されているかを判断すること、なのです。

 

次にアイコンタクト維持法です。何か法律の名前みたいですね。私の感覚はさておき、この手法は至極単純で、アイコンタクトを維持してもらいながら話してもらう、というものです。実際にやって頂くとわかりますが、人の目をずっと見ながら記憶をたどることは結構しんどい行為です。通常、私たちは何らかの記憶を思い出すとき、目を逸らします。視線を正面に維持していると視覚情報が邪魔をして、記憶を思い出すことに集中出来ないからです(なお、目の焦点をズラしたり、目を閉じる行為も同じロジックです。)。このとき私たち日本人は視線を下に向け、西洋人は視線を上に向ける傾向にあることがわかっています。これは文化的な規則と考えられており、視線を下に向ければ首も垂れやすくなり謙虚に見え、視線を上に向ければ胸を張っているように見え自信があるように見えるからです。視線を質問者の目に維持してもらいながら証言してもらうことで、認知的な負担が高まり、ウソをついていれば、よりボロが出やすくなる、ということなのです。

 

最後に交互質問法です。これは2人以上の証言者に対して交互に質問していく手法です。質問者が任意に誰から最初に証言してもらうかを決め、その人物が証言している最中に証言をさえぎり、他の証言者にその続きから答えてもらいます。この手法は証言者が多人数いるときに効果的な方法です。観察ポイントは、記憶違いです。真実を話している者はウソつきに比べ、記憶違いが起きても、それを隠さず、「え!それ違くない?」と述べる傾向にあります。正直者はあるがままに、ウソつきは一貫性を保てるように、話す傾向にあるのです。ただこの交互質問法は、証言の途中で証言を遮る手法ですので、使用の際は証言者によく説明し、証言者との関係性が悪くならないように注意が必要です。

 

今回は認知的アプローチの核となる話だったので、ちょっと長くなりました。次回は、②被面接者に積極的に話してもらうようにする、を短く簡潔に!説明したいと思います。

 

 

清水建二

参考文献

Vrij, A., Fisher, R. P., & Blank, H. (2015). A cognitive approach to lie detection: A meta-analysis. Legal and Criminological Psychology. DOI:10.1111/lcrp.12088.