微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

2017年7月4日(火)「この差って何ですか?」出演の舞台裏―ウソ検知実験本番編

 

7月4日(火)放送の「この差って何ですか?」のスタジオ収録に先立ち、いよいよ私がウソを見抜いている様子及びウソのサインを解説しているシーンを撮影する日が来ました。

 

私にとっては、スタジオ収録の日よりもはるかに緊張した日です。

 

もう一度、実験状況のおさらいです。

 

実験参加者10人一人一人に5つの質問をし、どの質問でウソをついていたかを当て、さらにウソのサインを指摘するというものです。質問は基本的にはクローズド質問、一人に与えられた質問時間は20分程度です。

 

カメラマン2人、音声さん1人、アシスタントの方数名、ディレクターさん、プロデューサーさん、実験参加者の方々と何名もの方々が集まって下さいました。

 

実験が始まる前の私の心境は、「これは残念な結果には絶対に出来ない(汗)」というものでした笑

 

いよいよ実験、スタート。ここ数週間の中でも最も肩の凝った日、すなわち、集中した日でした。

 

実験参加者の一挙手一投足逃すまいと全身全霊集中し、とはいえ、参加者の方によけいなプレッシャーを与えないように、声と態度はソフトに淡々と質問し、ときに同調しながら、情報収集のプロセスを進めていきました。

 

私がウソかどうかを判断する瞬間、めちゃくちゃ悩みました。リアルな事件の人物に対する推定よりも悩みました。「この唇のプレスは返答に頭を悩ますゆえか?」「このレベルの嫌悪は、ウソをついているのではなく、ウソつきだと疑われていることからくるものなのではないか?」「本来ならこの軽蔑をホットスポットとしてとらえ、深堀質問していきたい!」などなど悩みながらも、判断していきました。

 

本実験の結果としては、私のウソ検知率は80%でした。

 

「ふーーーーーーーー」です。

 

専門家の面目保てたり。笑

失うものが大きい判定者は強い。笑

 

ウソを見抜いたあと、参加者の方にどこがウソのサインだったのかを解説したり、そのサインが出てきたときの心理をインタビューさせて頂いたり、スタジオ収録ではどの場面を使おうかなどなど、やり取りし、なんだかんだで10時間くらいロケは続きました。

 

長い一日でしたが、私にとっては、今回のような実験状況でもウソをソコソコ見抜けることが出来る、すなわちウソのサインが出るということがわかったこと、ウソをついているときの心理をつぶさに聞かせてもらえたこと、沢山の方と協力して仕事が出来たことは、本当にありがたいことでした。

 

それでも、また同じ実験参加してもらえますか?って言われたら、まぁ、不安ですよね。笑

 

これまでテレビに何度か出演させて頂いておりますが、毎回、思わせて頂くことがあります。今回も打ち合わせからスタジオ収録と番組制作の裏側を見せて頂きましたが、観るのは一瞬でも、制作するまでには、本当の多くの方々が関わり、綿密な準備と放送の何倍もの時間が合わさって番組が完成するのだな、と本当に感心させて頂きました。番組スタッフの方の素晴らしい段取り、MCの加藤さん&川田さんの秀逸なテンポ、タレントさんの笑いを誘うトーク力と、本当に気持ちよく仕事をさせて頂けました。ありがとうございました。

 

 

清水建二

2017年7月4日(火)「この差って何ですか?」出演の舞台裏―ウソ検知率って平均どれくらい?編

 

7月4日(火)放送の「この差って何ですか?」のスタジオ収録に先立ち、打ち合わせ中に急遽、私がウソをどれくらい読みとれるかの仮実験がなされました。

 

いきなりだったので、「え~!」となり、不安でしたが好奇心の方が勝り、私は結構前のめりに。なぜなら、本当のインタビューでは1~2時間かけて推定のプロセスを経るところを10分やそこらでウソかどうか判断したら自分のウソ検知率はどのくらいの精度になるのだろうか、と気になったからです。

 

その結果が、75%だったのです。

 

私たちが偶然ウソを見抜ける確率は、ウソか本当かのうちの一つですので、50%です。様々なウソ検知実験が示すところによれば、何の訓練も受けていない人々がウソ検知を試みると、その精度は平均54%になることがわかっています。警察官が本当の取り調べでどのくらいの精度でウソを見抜けるのかが計測された実験では、平均60%ちょっとという数字が見出されています。つまり、ウソつきがウソがばれることによって失うものが大きく、日々ウソに接している警察官は、私たちより少しだけウソ検知の精度が高くなるということがわかります。

 

それで私の数字75%に戻ってきます。

 

結構、好成績ですよね?

 

自分でも驚きました。ある質問をしたとき、嫌悪の微表情が出たり、唇をプレスする動きが観られ、会話内容との整合性から推測したら、1問ミスで済みました。

 

それでもまだ4回やってみただけだし、本実験を行いテレビで自分のウソ検知率が公開されるのはリスクあるな~と思いつつも、どこかで読んだ論文の内容を思い出していました、それは、「判定者の側に失うものが大きいと、ウソを見抜く精度が上がる。」というものでした。

 

なるほど、これかな。

 

ちなみに表情分析の大家、そして私の先生の先生であるポール・エクマン先生のウソ検知率は90%ですけどね。

 

次回は本実験の様子をご紹介します。

 

清水建二

 

2017年7月4日(火)「この差って何ですか?」出演の舞台裏―ウソ検知状況を作る難しさ編

 

7月4日(火)放送の「この差って何ですか?」に出演させて頂きました。ご覧になられた方、どうもありがとうございます。テーマは「ウソのサイン」でした。私はスタジオにてパネラーの皆様へウソのサインについてご紹介させて頂きました。

 

無事に収録は終わり放送して頂き、私もスタッフさんもホッとしているのですが、この収録をするために行われたウソ検知実験の成否に一抹の不安がありました。

 

収録に先立ち、番組のスタッフの方から連絡を頂き、企画会議にてウソのサインのウソ・ホントを説明させて頂きました。30くらいのリスト化されたよく聞くウソのサインが科学的に正しいか否かを解説させて頂きました。

 

企画になりそうだということで、本当の事件映像や弊社所有の実験動画を使ってウソのサインについて私が解説する流れとなりました。

 

しかし、やはりただウソのサインを解説するだけでなく、「清水さん本人が実際にウソを見抜き、それを解説して欲しい」ということをお願いされました。

 

正直、悩みました。なぜなら事件やスキャンダルなどのリアルな関係者のウソを見抜く状況と番組に用意して頂いたウソ検知実験状況とがかなり異なっていたためです。

 

後日、打ち合わせ2回目。

 

実験状況のいくつかの案を頂きました。実際に採用された実験状況は、実験参加者10人一人一人に5つの質問をし、どの質問でウソをついていたかを当て、さらにウソのサインを指摘するというものでした。

 

質問は基本的にはクローズド質問、一人に与えられた質問時間は20分程度でした。

 

最初の私の反応は、

 

「いやいやいや、それはムリ!」チャンスレベルを少し超える程度(60%)でしかウソを見抜けないと思いますよ。」

 

というものでした。

 

なぜなら、実際の事件関係者に対するウソ検知の状況では、基本的にはオープン質問、一人に対して1時間、2時間のインタビューをするのは当たり前です。またウソのサインは、あくまでもホットスポット、つまり深掘りポイントに過ぎないので、ウソのサインを見つけたらそこから観察+質問法を駆使して、本格的なインタビューがスタートすると言っても過言ではないからです(そして最終的には何十時間もインタビューが行われたりします)。さらにリアルな事件で重大なウソをついている人間は感情や認知的な負担が高いので、ウソのサインが出やすく、今回の番組や大学の研究室で行われる実験状況よりウソが見抜きやすいという事情があるのです。

 

そんな不安とスタッフさんに対する私の必死の説明がありつつも、ま、とりあえず実験してみましょう、ということでその場にいらしたスタッフさんに4回の仮ウソ検知実験を実施しました。

 

仮実験の結果…清水のウソ検知率は…4回中3回成功、すなわち75%でした。

 

これは凄いのか?微妙なのか?

 

次回に続く。

 

 

清水建二

学術論文を読もう第三回―表情から消費者の感情を計測する:考察編

 

本日は第三回です。課題学術論文は、第一回・第二回からの続き、

 

Matsumoto, D., Hwang, H. S., Harrington, N., Olsen, R., & King, M. (2011). Facial behaviors and emotional reactions in consumer research. Acta de Investigacion Psicologica (Psychological Research Records), 1(3), 441-453

 

です。

 

本日は本論文の考察について要約及び私のコメント(➡で書きます)を書かせて頂こうと思います。

 

考察

 

第①パラグラフ

表情を計測することは消費者の感情世界の洞察を得る価値のある方法を提供してくれた。感情を細かく分類することによって重要な情報を得ることが出来た。

 

第②パラグラフ

消費者は単なる好き・嫌いを超えた様々な感情を見せた。

 

第③パラグラフ

計測された表情はとても微妙で、強度が弱いもしくは中程度で、顔の一部分にほんの12秒程度しか生じなかった。同じ感情でも様々な様態を通じて表出され得るため、素人は気付くことが出来ないかも知れない。

 

第④パラグラフ

真の幸福感情はあまり発現されなかった一方で、怒り、軽蔑、嫌悪感情が比較的多く発現された。これは幸福感情や楽しさを最大化させる目的を持つ消費者研究の常識に警鐘をならすことになるだろう。本研究の結果が示すことは、消費経験というものは、心地よさを最大化し幸福を得ようとすることよりも、不快感を最小化することから満足を得ようとしているということである。

 

第⑤パラグラフ

本研究では、幸福表情が比較的多く計測されたが、そのほとんどは作られた幸福表情であった。素人目では、両者の表情を正確に区別することは難しい。適切な調査結果を得るためには真の幸福と作られた幸福とを区別することが重要である。

 

第⑥パラグラフ

本研究から得られた知見はある疑問の回答を求めている。それはその感情はどこから来るのか、ということである。感情が生じていることは確かなのだが、何に対する感情なのかが明らかになっていない。将来の研究において、非言語行動と特定の言語とのつながりを研究することによって消費者の気持ちを特定することが出来るようになるだろう。

 

 

清水建二

 

新入社員は、コミュニケーションが嫌なのか?不得意なのか?

 

本日はこちらのニュースをテーマにしたいと思います。

 

www.youtube.com

 

簡単にまとめますと、職場の同僚と勤務時間外コミュニケーションをとりたくないと答える新入社員さんが3割を超え、この数字は過去最高だということです。

 

勤務時間外のプライベートまで会社の人と付き合いたくないと思う気持ちは理解できないわけではありません。しかし、職場を離れた席だからこそ見えてくる意外な人間性やキャラクターの発見があり、それが信頼関係の醸成や友情の土壌となるのではないでしょうか(まぁ、たまに逆もありますけどね)。

 

信頼関係の醸成がなぜ大事か?なぜ職場の人間をよりよく知る必要があるのか?ということについて例を挙げればキリがないのですが、今回は転職を例にしたいと思います。

 

ズバリ、転職理由の50%は人間関係に関わり得ることだからです。

 

next.rikunabi.com

 

記事を読んで頂ければわかりますが、転職理由の上位3つが人間関係に関わり得ることです。

 

これって残念じゃないですか?

仕事が好き、給料も満足している、やりがいもある、

しかし!!職場の人間関係が理由で仕事を辞めている人がいるわけです。

これは、その人にとっても会社にとっても悲劇です。

 

記事の1、2、3位をお借りして➡以下で清水の感想を書かせて頂きます。

 

1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)

➡上司のことをもっと知れば、なぜその仕事の仕方をしているのか理解できたかもしれません。本当にその仕事の仕方が非効率でダメなものでも、人間関係を醸成しながら説得すれば変えることだってできたかも知れません。

 

2位:労働時間・環境が不満だった(14%)

➡労働環境が不潔・劣悪とかだったらしょうがないですが、職場雰囲気とかだったら、日ごろのコミュニケーション不足に少なからず原因があると思います。


3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)

➡これこそまさしく人間関係です。どうしても合う・合わないはあると思いますが、合わなくてもミッションを達成させるために信頼関係を作ったり、変な溝や誤解は解消しておく必要があります。マイナス要素ほど包括的に人間性を観てみないと理解が及ばないものです。不得手な人でも食事やお酒の席を持つことで、「こんな経験があるから、こういう言動になるのだな。」なんて理解が出来ることもあります。

 

新入社員は、コミュニケーションが嫌なのか?不得意なのか?

 

よく知らないから嫌なのだと思います。

人は知らないもの・人を敬遠します。

遠ざければ遠ざけるほど、遠ざけた人とのコミュニケーションは不得意になります。

溝は深まったままです。

 

以心伝心や阿吽の呼吸は、文化的背景だけでなく、お互いにとっての当たり前が成立しているからこそ成り立つコミュニケーションです。

 

こうしたコミュニケーションも成立しなくなるのでしょか?

 

この問題、しばらく考えてみようと思います。

 

 

清水建二

 

 

2017年6月24日(土)キャリタス就活フォーラムDISCOイベント振り返り

 

 本日は、先ほど終えたばかりのキャリタス就活フォーラムby DISCO様でのセミナーを振り返らせて頂こうと思います。

 

 私が登壇させて頂いた面接LABOセミナーは、10:00~11:00と11:30~12:30の二回でした。

 

 面接LABOの核となるテーマは、面接を見える化する、というものです。弊社空気を読むを科学する研究所提供のコンテンツでは、面接官の心理を科学知見から読み解き、面接官の心に刺さる回答をどう組み立てれば良いのか?その場で考えなくてはならない回答にはどう反応したらよいか?面接官の感情に合わせてどのように回答(情報)の出し入れをするべきか?ということを中心にお話しさせて頂いております。

 

 

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面接対策セミナー会場準備中の図

 

 今回のセミナーでは、10時からの回では、毎回好評の面接対策コンテンツをお送りしました。特に、オリジナル回答の作り方、ストーリーで伝える一貫性のある回答方法、面接官の眉の動きから話し方を変える方法は簡単なわりに効果的なので、ぜひみなさんの面接(準備段階・本番)で積極的に取り入れて頂きたいと思います。

 

 11時からの回は、いつもとは趣向が異なるものをお話しさせて頂きました。「本当にこの会社で大丈夫?自分が幸せでいられる会社の見極めポイント」と題しまして、すでに内定をもらっている就活生及び志望先の焦点が決まらない就活生対象に、幸せに働くこと・働くことのリアルを伝えさせて頂きました。

 内定先や志望先の客観的な企業情報は、業界誌などを見れば得ることが出来ます。企業の成長率や昇給率、キャリアアップの予測、転勤の有無、手当などある程度把握できるでしょう。しかし、職場の雰囲気や企業風土、社員さんの熱意などは、その企業の社員さんという人を介してしか得ることは難しいでしょう。なぜそうした人的情報の収集が重要かと言いますと、それはとりもなおさず、(裏)転職理由のトップ3が人間関係の悩みにあるからです。

 本セミナーでは、企業の内部で働く社員さんから企業の人的情報を得る方法についてご紹介させて頂きました。具体的には、会社のリアルを知るためにどんな質問をしたらよいか、ある質問に対する社員さんの反応のどこに気をつけるべきか、職場雰囲気のリアルはどこに現れるか、そんなことをお話しさせて頂きました。

 

 まだ内定を得られていない方もすでに内定を得ている方も、就職活動は自分を見つめるとても良い機会です。自分は何者?自分は何をしたいのか?自分は何が出来るのか?自分はどんな人と働きたいのか?焦る気持ちを押さえて、じっくりと自分と向き合って下さい。自分の価値は相手の中に見出せます。自分の価値を最も認めてくれる、高めてくれる企業はどこか、人は誰か、分野は何か?ここで頑張れなければ、この先も頑張れません。大きく飛躍するには、それだけ長い準備期間が必要なのです。

 

 次回のキャリタス就活フォーラムでのセミナーは7月13日(木)を予定しております。面接が苦手、内定もらったケドまだ就活続けたい、これから就活頑張りたい!様々な想いの就活生にお会いできることを楽しみにしております。

 

 

清水建二

「りんごとりんご」を比べれば瞬きの増加も鼻にさわるもウソのサインになる

 

瞬きの増加と鼻にさわる動きはウソのサインではない、前々回及び前回のブログで取り上げさせて頂きました。

 

鼻にさわる、という動きをより抽象的な視点で説明しますと、自分の身体の一部で他の身体の一部をさわったり、つねったり、さすったりするマニュピュレータ―という現象です。顔をさわる、額をこする、胸元をなでおろす、手をすり合わせる、全てマニュピュレータ―です。

 

瞬きの増加は主に緊張時に、マニュピュレータ―は緊張を含めた感情のブレを原因に起こることが知られています。

 

ウソがばれないだろうかと緊張していれば、これらの動きは生じますし、冤罪をかけられてしまうのではと緊張すれば、同様にこれらの動きは生じます。

 

つまり、瞬きの増加とマニュピュレータ―はウソのサインではないのです。しかし、工夫次第でウソのサインとして使えることがあります。

 

例えば、ウソをついているのでは?と疑われている3つの疑惑について容疑者が供述しているとします。どの疑惑について話しているときも同じくらい緊張しているとします。こうした中で、ある話題、例えば2番目の話題を話しているときに、他の話題を話しているときに比べ、瞬きやマニュピュレータ―増加が観られれば、ウソのサインになり得ます。

 

同じ緊張状態なのになぜ2番目の話題だけ緊張度が高まったのだろうか?

 

と考えるわけです。

 

もちろんこの段階で供述をウソと断定することはなく、2番目の話題について深掘りする段階へとインタビューは続きます。

 

上手く個人内比較を設定できれば、ウソのサインとして認められていない動きもウソのサインとなり得るのです。

 

何でもそうですが、生きる上で大切なことは、

 

特別を探す必要なない。

工夫次第で普通が特別になる。

 

ものだと思っています。

 

 

清水建二