微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

第5回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 

 2022年2月9日、清水建二の5年ぶりの単著となります『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が中央公論新社より発売されます。本日は、本書の制作ストーリー第5回目。第四章について紹介したいと思います。

 

 第四章は、「会話から漏れる心理」です。具体的には次の通りです。

 

・声に込められる感情と心理

・感情はどのように声に表れるのか?

・言葉にならない「パラ言語」

・「私は娘を愛していた」…誘拐犯の母親がついた嘘

・「私はウソ…いや、動揺していません」…ウソつきの言い間違い

・裁判でも証拠採用される言語分析法

・信用できる発言内容の特徴

・本音を引き出す「七つの質問」

・スパイに口を割らせる!?-シャーフ・テクニック本邦初公開

・<コラム4>ウソを見抜きたいと思う心に潜む危険なバイアス

 

 第二章の表情、第三章のボディーランゲージ、そしてこの第四章では声と言葉からウソや心理を推測する方法に迫ります。声の大きさ、高低、話す速さなどの声の非言語情報、言葉そのものを意味する声の言語情報の特徴的なパターンに様々な感情や心理が生じます。特に本章では、一つに、「話者の真偽を推測するための科学的な言語分析法」に力を入れ、説明しています。私たちは、非言語に比べ、言語操作能力に優れています。したがって、往々にして、言葉そのものに焦点を当てた方がウソを推測しやすいと言えます。本章でその方法を詳述しました。

 

 一方、この言語操作能力の高さゆえに、言語分析法はカウンターミ―ジャーに弱い、つまり、言語分析法に熟知したウソつきに出し抜かれてしまう可能性が高くなる。しかし、ウソに伴う非言語特徴を知っているウソつきでもそれを漏洩させないでいることが難しいことが知られています。そこで本章で力を入れた二つ目の内容。それは、質問法です。「本音を引き出す『七つの質問』」にて、これまでの章で説明してきた内容と本章の内容を統合し、真偽推測する方法を説明します。真偽推測のための考案された質問によって、ウソに伴う非言語や言語のサインが生じやすくなるのです。質問法をマスターすることで、言語サインから、言語分析法に対しカウンターミ―ジャーを受けても非言語の漏洩から、真偽を推測することが出来るようになるのです。

 

 こうした方法論を、抽象的な視点でルールとしてまとめつつ、実在の事件(例えば、某大臣の公職選挙法違反疑惑や某村長のセクハラ疑惑、某市議の政務活動不正疑惑…お気づきかと思いますが、ウソは権力、お金、性に絡むことがほとんどなのです)や弊社で行った実験事例に応用し、具体的にルールをどう使えばよいのか、どんな視点でとらえるとよいかを説明しています。

 

 本章で最も伝えたいことは、「非言語サインが生じる度に意味のある説明を求めたり、言葉尻をつかまえて人の心理を強引に解釈してはいけない」ということです。私たちはウソ以外の様々な理由で、微表情や非言語サインを発します。様々な理由で言い間違えや不明瞭な発言をします。ウソや心理を高い確度で推測するには、適切な質問刺激に対する反応としての非言語・言語サインの組み合わせの力学を理解・実践する必要があるのです。

 

 第五章については、また次回。

 

 これより前回に続き、私の著作過程について書きたいと思います。前回、「書く内容は決まっているのになかなか文章にならない」そんなことが生じる、ということを書きました。どうするか。私は、2-3週間前後で一章分書くわけですが、書いている途中に、「このトピックどう書こう」と悩むことがあります。章を書き始めるときは、章の全体像が見えていて一気に書き上げられる自信があったにも関わらず、ときに筆(指ですが)が止まります。

 

 そんなとき、2-3日間、時間が許せばもっと長い暇をかけて、これまで読んだ論文や本を読みなおし、関連する新しい知見を再度収集し、新刊を読み、トピックに関連する知見を俯瞰的に眺めます。2-3日関連するトピックに頭を沈殿させ、考え続けると、ある瞬間「つながる」のです。重要なのは、(緊急な業務を除いて)一心に2-3日間それだけしか考えない、ということです。デスクにいるときも、歩いているときも、シャワーを浴びているときも、食事をしているときも、ずっとです。具体的な量で示せば、論文なら20本くらい。書籍なら4~5冊程度でしょうか。集中して一気に知識を入れなおし、新しい知識も入れ、整理し、熟考し続けると、ある瞬間、筆が一気に走り出すのです。トピックに量・質ともに十分な文章の出来上がり、となります。

 

 皆さんも似たよう体験があると思います。何か問題があり、それを解決したいとき。問題に関わる知見を集中的に頭に入れる。例えば、2-3冊関連書籍を読めば、自分の全く知らない話題だとしても全体像をつかむことが出来ます。さらに数冊読めば、問題に対する具体策が浮かんで来る、そんな体験に似ていると思います。

 

 点と点が線で結びつく。ひとえにこれは、論理力だと思います。関係ある知識同士がくっ付く。これまで人生かけて鍛え、醸成されてきた論理力だと思います。ただ、この辺りの体験は自分の中でまだ具体的に文字化しきれていないため、またどこかで整理し、紹介させて頂ければと思います。

 

 そんな知識と論理力が組み合わさった清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)は、2月9日発売です。ご予約はこちらから。

 

www.amazon.co.jp

 

では、また次回。

 

 

清水建二