面接テクニック・シーズン2の4回目です。前回は認知的ウソ検知アプローチの3つのテクニックの二つ目、②被面接者に積極的に話してもらうようにする、について説明しました。本日は三つ目、③反予測質問をする、について説明したいと思います。
③反予測質問をする
「反予測質問をする」とは、質問されるとは被面接者が想定していない質問をする手法です。真実を話す者にとって、予測質問について答えるのも反予測質問について答えるのも同じ程度の認知知的負担を抱えることがわかっています。しかしウソつきにとっては、反予測質問について答えるとき、より多くの認知的負担がかかることが諸研究からわかっています。したがって、予測質問と反予測質問に対する回答を比べることでウソを検出しやすくなるのです。
具体的な「反予測質問をする」方法としては、空間に関する質問、時間に関する質問、計画に関する質問が反予測質問になり得ることがわかっています。空間に関する質問とは、例えばモノとモノ、ヒトとヒト、ヒトとモノの位置関係に関して言葉と絵で描写してもらう方法です。実際に見ていない位置関係を描写することは難しいことがわかっています。時間に関する質問とは、時系列のある出来事の開始時間や終了時間、ある特定の時間に関連した行動などを質問する方法です。正直な者とウソつきとでは記憶の描写に偏りが生じます。計画に関する質問とは、ある行動を行う上で通常行うと考えられる計画段階の描写について質問する方法です。例えば、楽しみにしている旅行ならば、どこにいつ訪れる予定か、どんな交通手段を使うか、どの旅行会社をなぜ使うか、などの事項が代表的です。
反予測質問の核は、正直な者ならば予測質問も反予測質問も両方とも答えを知っており、そのため周辺的な話題より、中心的な話題に関する質問である必要がある、ということです。しかし、何が反予測質問になるか、いつまで、だれにとってそれが反予測になるかに関しては相対的な問題になります。そのため質問者とウソつきとのイタチごっこになる可能性があるという問題を孕んでいます。
以上のように認知的ウソ検知アプローチは様々な長短がありますが、現時点において特別な機器を用いない面接法としては、最も有力視される方法です。極めつけとして、この認知的ウソ検知アプローチを用いれば、例えウソのサインを探そうとしなくても、ウソつきを推定できるということがわかっています。もちろん、ウソのサインについて学び、訓練した観察力の高い質問者が認知的ウソ検知アプローチを使えば、さらに高い精度でウソを検知することが可能だということがわかっています。
反予測質問について詳しく知りたい方は、拙著、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(2016/フォレスト出版)がオススメです。たぶん、日本語で反予測質問について体系的に説明した書籍は本書が初だと思います。また専門書以外ではまだ反予測質問について説明している書籍はないと思われます。
反予測質問について説明している専門書に興味のある方は『虚偽検出:噓を見抜く心理学の最前線』がオススメです。ウソ検知に関する専門家レベルの知識を身に着けたい方は必読です。なお、反予測質問についてはp.190~に説明されております。
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さて本日をもって、面接テクニック・シーズン2―認知的ウソ検知アプローチを終了します。シーズン3でお会いいたしましょう。
清水建二
参考文献
Vrij, A., Fisher, R. P., & Blank, H. (2015). A cognitive approach to lie detection: A meta-analysis. Legal and Criminological Psychology. DOI:10.1111/lcrp.12088.