微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

面接テクニック・シーズン2①―認知的ウソ検知アプローチとは?

 

本日より、面接テクニック・シーズン2を始めたいと思います。

 

シーズン1ではあらゆる面接に利用可能なIIEテクニックについてご紹介しました。シーズン2では、目的別面接テクニックについてご紹介します。IIEテクニックではマクロ的な視点で面接方法を俯瞰しました。目的別面接テクニックではミクロ的な視点で面接方法を捉えます。この目的別面接テクニックは、マクロ的な面接構造の大枠の中に必要に応じて組み込めむためのユニットだと思って頂ければと思います。

 

それでは、今回ご紹介する面接テクニックです。それは、認知的ウソ検知アプローチ、です。その名の通り、ウソを検知するための面接テクニックです。Vrijらの(2015)論文を基にご説明します。

 

認知的ウソ検知アプローチは、2000年以降研究が進んでおり、既存のウソ検知法よりも長所が多く、新たなウソ検知の方法として注目されています。

 

このアプローチは次の3つのテクニックから成立しています。

 

①認知的な負担を高める

②被面接者に積極的に話してもらうようにする

③反予測質問をする

 

認知的ウソ検知アプローチと既存のウソ検知アプローチとのウソ検知率を比較すると、認知的ウソ検知アプローチの方が精度が高いことがメタ分析という統計手法の結果からわかっています。具体的には、次のような差が報告されています(なお、両者のアプローチとも特別な機器―ポリグラフ検査機器などーを用いずに、生身の人間が面接した結果となります)。

 

認知的ウソ検知アプローチ➡真実検知率:67% ウソ検知率:67% トータル:71%

既存のウソ検知アプローチ➡真実検知率:57% ウソ検知率:47% トータル:56%

 

これらの数値は何を意味しているのでしょうか?

 

真実かウソかは50%の確率で生じるように各実験状況において設定されているため、50%の検知率だと偶然ということになります。50%を超えた検知率がそのアプローチの有効性を意味します。

 

認知的ウソ検知アプローチのトータル検知率が71%であるということは、偶然レベルを超え、有効性があると言えます。一方、既存の方法は56%ですので偶然を少し超えるレベルであり、あまり有効な方法とは言えません。

 

またトータル検知率だけでなく、真実・ウソ検知率を個別に見て下さい。

 

認知的ウソ検知アプローチの方が既存の方法よりもいずれも高いですね。これは認知的ウソ検知アプローチを使えば、冤罪を減らし、ウソつきを見つけられる、ということです。

 

例えば、10人と面接し、5人が真実、5人がウソを話しているとしましょう。面接官が「10人全員ウソをついている」という判定を下すとします。そうすると、真実検知率:0/5=0%、ウソ検知率:5/5=100%となります。ウソ検知率だけ見ると、この面接官はウソを見抜く天才のように思えてしまいますが、冤罪も同じ数だけ引き起こしていることがわかります。したがいまして、真実・ウソ検知率、ともに高いことに意味があるのです。

 

こうした個別の検知率より、認知的ウソ検知アプローチの有効性がおわかり頂けたと思います。

 

それでは次回より、認知的ウソ検知アプローチの3つのテクニックについて一つ一つ説明していきたいと思います。

 

 

清水建二

参考文献

Vrij, A., Fisher, R. P., & Blank, H. (2015). A cognitive approach to lie detection: A meta-analysis. Legal and Criminological Psychology. DOI:10.1111/lcrp.12088.