微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

第3回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 

 清水建二の新刊『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が、2022年2月9日中央公論新社より発売されます。本日は、本書の制作ストーリー第3回目。第二章について紹介したいと思います。

 

 第二章は、人類共通の表情、異なる表情について説明しています。具体的には次の通りです。

 

・なぜ表情に注目するのか?

・万国共通の七つの表情

・準万国共通の九つの表情

・万国共通の表情と準万国共通の表情の機能上の違い

・その他の色々な顔の表情

アメリカンスマイルとジャパニーズスマイル

・ドーピング疑惑のアスリート

・【練習問題1】会議についていけていないのは誰?

・【練習問題2】最終案に渋々同意しているのは誰?

・【練習問題3】複雑な感情の彩を表情観察から見抜く

・<コラム>「モナリザ」は何を考えていたのか?

 

 なぜ表情に注目するのか?それは、非言語の中で最も情報量が多いからです。また、言葉の意味が文字通りなのかそうではないのか、表情が教えてくれます。普段、コミュニケーションをとっていれば自然と身につく表情を読む力。様々な表情と感情の関係。表情が自分の感情や他者の行動に及ぼす影響。表情から心を読んでいるのか。ウソは顔に書いてあるのか。どんな表情が万国共通でどんな表情がそうでないのか。こうした何となく知っているようでちゃんとは知らないことを、現時点でわかっている最新の科学知見からクリアに説明しています。

 

 本章で私が最も伝えたいことは、「表情は感情の表れであり、心そのものではない。なぜその感情が表情として生じたのかを考えることで、心の中を推測することが出来る」ということです。このことについて、「ドーピング疑惑のアスリート」のところで実例を基に説明しています。

 

 有名アスリートにドーピング疑惑がかけられました。「ステロイドを使ったことがありますか?」という質問に対し、「いいえ」とアスリート。「いいえ」と答えながら、軽蔑の微表情が生じます。軽蔑は優越感とも言い換えられます。

 

・ドーピングしたもののその証拠が出てこない自信があるゆえに優越感なのでしょうか?

・ドーピングしていないにも関わらず疑いの目を向けている質問者や世間に対して軽蔑しているのでしょうか?

 

 このとき、このアスリートは心の中で何を思っていたのでしょうか。表情から感情を理解し、感情から心を推測する方法を本章の中で詳述しています。また、豊富な表情画像を用いて、様々な表情を説明していますので、文章だけでは伝わりづらい表情の微妙な違いをビジュアルから理解して頂けるようになっています。

 

 第三章については、また次回。

 

 さて、今回も編集・校正のプロたちの技紹介です。本日とり挙げる箇所は、第二章のトピック「アメリカンスマイルとジャパニーズスマイル」にて、表情が万国共通に見えない原因を説明している箇所です。

 

 「このように感じられる(表情が万国共通に見えない)原因は、主に2つに集約できます。」から続く文です。

 

清水が書いた元原稿

「一つは、どんな状況においてどんな表情を表出させるべきかについて文化的なルールがあるということ、もう一つは、刺激に対してどんな感情が想起されるかは個人・文化によって異なることがあるということです。一つ目の原因として、どんな状況においてどんな表情を表出させるべきかについて、文化毎に決められたルールの存在が挙げられます。これを表示規則と言います。」

 

この文が…

 

編集Tさんの治し反映原稿

「一つは、どんな状況においてどんな表情であるべきかについて文化的なルールがあるということ、もう一つは、刺激に対してどんな感情が想起されるかは個人・文化によって異なることがあるということです。一つ目として、どんな状況においてどんな表情であるべきかが文化によって決められていることを、表示規則と言います。」

 

こうなります。そして、さらに2回の校正が入り…

 

校正が反映された最終原稿

「一つは、どんな状況においてどんな表情であるべきかの文化的なルールは違うということ、もう一つは、刺激に対してどんな感情が想起されるかは個人・文化によって異なることがある、の二点です。一つ目の、どんな状況においてどんな表情であるべきかが文化によって定まることを、表示規則と言います。」

 

 となります。筆者が伝えたいメッセージはそのままに、読みやすい文章へと変化していくプロセスがわかります。個人的には、「一つ目の原因として、」以降の文の変換が好きです。私のワードで作成された原稿が、紙面に印刷され、その印刷された文字を組みかえ、追加、修正されるのですが、文を一から書くのではなく、元の文を組みかえていくのです。これなかなか凄いと思うのです。「伝えたいメッセージは、こういうことですよね?だから、文をこうしました」と言い、一から文を書いた方が簡単に思うのです。それをせず、筆者の文体を残し、修正提案をする。秀逸。

 

 そんな秀逸な編集・校了者が担当してくれた清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)2月9日発売です。ご予約はこちらから。 

www.amazon.co.jp

 

では、また次回。

 

 

清水建二