微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

面接テクニック・シーズン1-④IIE面接テクニックの構造ABC

 

本日はIIEテクニックの構造ABCについて紹介したいと思います。

 

Awareness―意識

面接官は、被面接者に向ける意識と同時に自身の見た目や振る舞い、偏見について意識を向けるべきなのです。それは面接官の態度が被面接者に様々な影響を与え、正確な情報を得る妨げになる可能性があるからです。

 

被面接者に向ける意識とは、被面接者が証言している情報が不正確かも知れないということです。被面接者がウソをついている場合もあれば、現実を誤って解釈してしまったゆえに不正確な証言をしている場合もあります。それゆえに、ウソのサインに関する知識だけでなく、人間の記憶メカニズムについて知っておく必要があります。

 

面接官自身に向ける意識とは、面接官は被面接者にどんな印象を与えているか、面接官の振る舞いが被面接者にどう映るか、面接官は被面接者にどんな偏見を抱いているか、などのことです。例えば、女性の面接官ならば、女性であるという理由だけで、男性の宗教原理主義者の被面接者に敵対的な態度をとられるかも知れません。面接官が大柄な男性ならば、被面接者に握手を求めただけで被面接者に恐怖を与えるかも知れません。他にも、面接官の年齢・地位・民族などの要素に意識を向けるべきでしょう。特に、自己と文化背景が異なる被面接者を面接する場面では最も意識的になるべきです。文化によってボディーランゲージの意味が異なり得るため、被面接者の言動を誤解したり、逆に誤解を与えてしまうことがあります。そのため面接官は自分が他者に与える印象について自覚的であると同時に被面接者の背景について知っておく必要があります。また関連することとして、面接官は自身が持つ被面接者に対する偏見にも意識を向けるべきです。被面接者の髪型、肌の色、国籍、宗教などに偏見はないでしょうか。面接官は常に自身が与える影響について意識をしている必要があるのです。

 

Baseline―ベースライン

心理的・認知的負担状況がなにもないときの行動スタイルをベースラインと呼びます。面接官は、被面接者のベースラインを知る必要があります。具体的には、被面接者が、どのような姿勢でいるのか、どんなボディーランゲージやジェスチャーを使うのか、どんな声色で話すのか、どんな言葉遣いをするのかなどについてベースラインを観察するべきなのです。面接中に起こり得るベースラインからの乖離は、被面接者の心理的・認知的変化を教えてくれます。

 

Change―変化

面接官は、被面接者の言動の変化、つまりベースラインからの乖離に注意するべきです。この変化は、被面接者の証言内容に対する自信の無さやウソのヒントとなります。IIEテクニックでは、この変化を「ホットスポット」と命名しています。ホットスポット」とは、ある話題が人に何らかの感情を想起させたり、人に認知的な負担を与えている瞬間を意味します。「ホットスポット」が生じる理由は、人がウソをついている以外にも様々な理由が考えられます。したがって「ホットスポット」を検知した場合、なぜそれが生じたのかに関して注意深く解釈する必要があります。正しく解釈するために「ホットスポット」が生じた話題に関して、被面接者に深堀質問をするアプローチが一般的です。

 

次回、シーズン1最終回!!IIEテクニックの構造DEFについて紹介します。

 

 

清水建二

参考文献

Frank, M. G., Yarbrough, J. D., & Ekman, P. (2006). Investigative interviewing and the detection of deception. In T. Williamson (Eds.), Investigative interviewing: Rights, research and regulation (pp. 229-255). Cullompton, Devon: Willan.