本ブログでは、度々、微表情でウソを見抜けるのか?という話題を扱ってきました。これまでの話題をまとめますと、
①失うものが大きいときのウソには、微表情が表出される傾向にある。
➡「失うものが大きいとき」とは、ウソが露呈すると、大金を失なう、大切な人を失う、職を失う、逮捕される、面子を失う、自尊心が損なわれる、そんなときです。こうした状況において、人はウソに関わる感情が漏洩しないように表情を繕うのですが、抑制しきれない感情のかけらが微表情として表出されるということです。
②ウソをついている者は正直者と比べて、「軽蔑」「嫌悪」「恐怖」「苦悩」の微表情を浮かべる傾向にある。
➡自分のウソがばれるわけがないと「軽蔑」を感じたり、ウソをついている自分に自己「嫌悪」を感じたり、ウソがばれるのではないかと「恐怖」を感じたり、ウソを追及されていることに「苦悩」を感じたりします。他にも、ウソを上手につけていることに「幸福」を感じることもあります。
ウソが生じる場面は様々で、職業によっても人間関係によっても見抜く必要のあるウソは変化してきます。夫婦間のウソ、親子間のウソ、恋愛関係のウソ、職場のウソ、企業間のウソ、犯罪に関わるウソ、ゲームでつかれるウソ…様々あり、ある種のウソを見抜くのが上手い人が他の種のウソを見抜くのは下手である場合もあります。
微表情をキーにある二つの種類のウソを横断してみます。
こんな実験があります(Mark & Ekman, 1997)。
この実験の登場人物は3種類です。
①ウソもしくはホントを証言する実験参加者
②①の実験参加者の証言を聞き、その場で色々な質問をし、参加者がウソをついているか否かを判定する質問者
③①と②の二人の様子の録画映像を観て、①がウソをついているか否かを判定する判定者
です。
ある部屋からお金を盗み出す模擬犯罪課題と自己の信念に反することを自己の意見のように主張する反信念課題とを実験参加者に実施してもらいました。
両課題において、参加者は、参加者がウソをついているかどうかを色々な質問から見抜こうとする質問者を上手くダマせたら、結構な額の報酬が支払われます。もし、この質問者にウソがばれたら報酬の代わりに罰が与えられます。
この参加者と質問者のやり取りの様子を録画しておきます。
ここまでが実験の第一フェーズです。
実験の第二フェーズでは、
参加者と質問者のやり取りの録画映像をもとに、判定者が映像に映っている参加者が、ウソをついているかどうかを判定します。
実験の結果、模擬犯罪課題における判定者のウソ検知率と反信念課題のそれは相関があることがわかりました。つまり、片方の課題でウソを見抜くことが出来た判定者は、もう片方の課題のウソも見抜くことが出来た、ということです。
さらなる調査の結果、この二つの種類のウソを見抜く能力を支えるスキルこそ、微表情検知力、だったことがわかりました。実験状況のような、失うものが大きいときのウソは、ウソの種類が異なっても、感情的な高まりが生じることには変わりがないため、感情の抑制の表れである微表情を読み解くスキルがウソを検知する上で重要なスキルとなったと考えられています。
結論、
ウソの種類に問わず、失うものが大きいウソがつかれているかも知れない場合、相手の微表情に注目することで、ウソを検知できる可能性が高まる。
清水建二
参考文献
Frank MG1, Ekman P. The ability to detect deceit generalizes across different types of high-stake lies. J Pers Soc Psychol. 1997 Jun;72(6):1429-39.