ウソつきは目が泳ぐ、身体をモジモジさせる、腕を組む…そんなウソつきの動きにまつわるボディーランゲージを耳にしたことがあると思います。これらのことは、私たち日本人だけが知っている情報でしょうか?日本人特有の動きなのでしょうか?世界の人々も同じように思っているのでしょうか?その情報の情報源はどこでしょうか?そもそもこれらの動きは本当にウソと関係があるのでしょうか?
本日はそんな疑問にお答えしようと思います。
一般的に、ウソつき特有の行動というものはどのようなものだと考えられているのでしょうか。様々な研究の知見によれば、私たちは、普通の会話の中では観察されないような異常な動きや疑わしい行動を、ウソをついている人間の行動だとみなしているようです(Basket & Freedle, 1974; Bond, Omar, Pitre, Lashley, Skaggs, & Kirk, 1992; Burgoon, Buller, Ebesu,White, & Rockwell, 1996)。
一般の人々と警察官のようなウソを見抜く職務に日々携わっている人々に対して、様々な研究が「ウソつき特有の行動と考えられるもの」を調査したところ、類似した回答が得られています(Akehurstら, 1996; Stromwall & Granhag, 2003; Taylor & Vrij, 2000; Vrij & Semin, 1996; Vrij & Taylor, 2003)。様々な研究において共通して得られている回答は、
高いピッチの声、言語的なためらい、視線をそらすこと、多くの笑顔、身体の動きの増加、です。
これらの多くは、人が神経質になっているときに表れる行動です。これらの調査の中でも特に興味深い点は、一般の人々も警察官らも共通して、視線をそらすこと及びモジモジと小刻みに体を動かす動作をウソつきの行動とみなしているところです。具体的には、調査に参加した警察官の75%がウソつきは視線をそらし、身づくろいをするような動きをする、という回答をしています(Vrij & Semin, 1996)。
しかし、多くの警察官を含め一般の人々が考える「ウソつきの行動」には誤解が含まれています。ウソつきの行動として、視線をそらすことは科学的根拠を得られていません。また様々な研究より、嘘つきは動作を増加させるのではなく減少させることがわかっています。ウソをつくと確かに神経質にはなりますが、ウソを疑われている人も神経質になるのですね。
さて、これらの誤解はどこから生じるのでしょうか?色々な可能性が考えられますが、次回はその中でも影響力が強く、科学的に検証されている原因をご紹介したいと思います。
清水建二
参考文献
Baskett, G. D., & Freedle, R. O. (1974). Aspects of language pragmatics and the social perception of lying. Journal of Psycholinguistic Research, 3, 117-131.
Bond, C. F., Omar, A., Pitre, U., Lashley, B. R., Skaggs, L. M., & Kirk, C. T. (1992). Fishy-looking liars: Deception judgment from expectancy violation. Journal of Personality and Social Psychology, 63, 969-977.
Burgoon, J. K., Buller, D. B., Floyd, K., & Grandpre, J. (1996). Deceptive realities: Sender, receiver, and observer perspectives in deceptive conversations. Communication Research, 23, 724-748.
Akehurst, L., Köhnken, G., Vrij, A., & Bull, R. (1996). Lay persons' and police officers' beliefs regarding deceptive behaviour. Applied Cognitive Psychology, 10(6), 461-471.
Strömwall, L.A., & Granhag, P.A. (2003). How to detect deception? Arresting the beliefs of police officers, prosecutors and judges. Psychology, Crime, & Law, 9, 19-36.
Taylor, R., & Vrij, A. (2000). The effects of varying stake and cognitive complexity
on beliefs about the cues to deception. International Journal of Police Science and Management, 3, 111-124.
Vrij, A., & Semin, G. R. (1996). Lie experts' beliefs about nonverbal indicators of
deception. Journal of Nonverbal Behaviour, 20, 65-80.
Vrij, A., & Taylor, R. (2003). Police officers' and students' beliefs about telling and
detecting little and serious lies. International Journal of Police Science and Management, 5, 1-9.