誰かに自分の手が触られたとき、その人の感情が瞬間的に伝わってきた、という経験はありますか?私たちは意識するにせよ、無意識にせよ、他者に触れること、タッチを通じて、人とノンバーバルなコミュニケーションをしています。それではタッチでいくつの感情を伝え、それらが実際に伝わるのでしょうか?
こんな実験が行われました。
実験参加者が二⼈一組となります。一人が様々な感情が刺激される映像を見ます。ある感情が刺激された一⼈の実験参加者が、もう一⼈の身体にタッチし、その刺激された感情を伝えようとします。
実験の結果、幸福、嫌悪、怒り、悲しみ、恐怖、愛、感謝、共感、という8つの感情が相手に伝わることがわかりました。
またこれらの接触行動をしている様子を第三者が観察して、一方が他方にどんな感情を伝えようとしているのかを判断させる実験も行われました。その結果、各感情につきバラツキはあるものの、偶然レベルを超える正解率で、他人がタッチを通じて伝えようとしている感情をとらえることが出来ることがわかりました。
さらに面白いことに、男性の実験参加者の方が女性に比べ、怒りに対する感度が良く、女性の実験参加者は、幸福と共感に対する感度が良いことも分かっています。この男女差は、太古からの男女における感情の重要性に原因があるだろうと考えられています。(タッチの男女差についてはまた次回の続きということにしましょう。)
触り方だけで意外に多くの感情が伝わるのですね。
清水建二
参考文献
Hertenstein, M. J., Keltner, D., App, B. Bulleit, B. & Jaskolka, A. (2006). Touch communicates distinct emotions. Emotion, 6, pp.528-533.
Hertenstein, M. J., Holmes, R., McCullough, M., & Keltner, D. (2009). The communication of emotion via touch. Emotion, 9, pp.566-573.
Hertenstein, M. J. & Keltner, D. (2011). Gender and the communication of emotion via touch. Sex Roles, 64, 70-80.