口角が引き上げられるのと同時に目の周りの筋肉が収縮する表情。この表情は、ドゥシェンヌ・スマイルと呼ばれ、心から楽しいと感じられるときに現れる笑顔です。
しかし、このドゥシェンヌ・スマイル、ネガティブな場面でも観察されることが知られています。
例えば…
ネガティブな感情を隠そうとしているとき(Ekmanら, 1988)、試合に負けた後(Schneider & Josephs, 1991; Zaalberg, Manstead, & Fischer, 2002)、恥ずかしさを感じているとき(Keltner, 1995)、最近亡くなった伴侶の話をしているとき(Keltner & Bonanno, 1997)、その他ネガティブな出来事を話しているとき(Lee & Beattie, 1998)、
などなど、ドゥシェンヌ・スマイルは観察されています。
これはどういうことでしょうか?
笑顔には、ネガティブな感情に対処するための自己調整機能があるため、ネガティブ場面でも笑顔が現れることがあるのです(Ansfield,2007)。
怒られているにも関わらず、笑っている人、いませんか?
あれです。
(単純に「怒られるのが好き」というMの人のことは置いておきます。)
Ansfield(2007)の実験で、ストレスを感じるような映像を観ている実験参加者は、視聴している間、笑顔であればあるほど、視聴後に肯定的な評価をする、ということが証明されています。
ドゥシェンヌ・スマイルは、自然となされるか、意図的になされるかを問わず、肯定的な自己調整機能を有し、顔面フィードバック機能(※)を通して、心理的・身体的変化を引き起こすのです。
皆さんの周りに苦境な状況でも笑っている人、いませんか?
笑っているから大丈夫!
と思うのは、少し性急かも知れません。
※顔面フィードバック機能とは、「笑うから楽しくなる」といったように、表情を作ることで体内にその感情を生み出す身体機能のことを言います。
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清水建二
参考文献
Ansfield, M. R. (2007). Smiling when distressed: When a smile is a frown turned upside down. Personality and Social Psychology Bulletin, 33, 763–775.
Ekman, P., Friesen, W. V., & O’Sullivan, M. (1988). Smiles when lying. Journal of Personality and Social Psychology, 54, 414–420.
Keltner, D. (1995). Signs of appeasement: Evidence for the distinct displays of embarrassment, amusement, and shame. Journal of Personality and Social Psychology, 68, 441–454.
Keltner, D., & Bonanno, G. A. (1997). A study of laughter and dissociation: Distinct correlates of laughter and smiling during bereavement. Journal of Personality and Social Psychology, 73, 687–702.
Lee, V., & Beattie, G. (1998). The rhetorical organization of verbal and nonverbal behaviour in emotion talk. Semiotica, 120, 39–92.
Schneider, K., & Josephs, I. (1991). The expressive and communicative functions of preschool children’s smiles in an achievement situation. Journal of Nonverbal Behavior, 15, 185–198.
Zaalberg, R., Manstead, A. S. R., & Fischer, A. H. (2002, June). Facial behavior in game-playing situations: The mediating role of display rules and social motives. Paper presented as part of symposium “Emotion in Social Context” (convenors: Antony Manstead and Agneta Fischer) at General Meeting of the European Association of Experimental Social Psychology, San Sebastian, Basque Country.