微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

表情に込められた適応の軌跡―嫌悪表情解説編

 

本日は前回の問題の解説編です。それでは、結論から。

 

1 鼻にしわが寄せられる

➡あ 酸っぱいものあるいは苦いものを食べる

➡う 腐敗した食物のにおいを嗅ぐ

 

2 アゴが下げられ、舌が出される

➡い スプーン半分のコショウを口に含む

 

3 上唇が引き上げられる

➡え 強制収容所での残忍な様子が収められた写真を観る

➡お 親友が近親婚をする

➡か 怒りと軽蔑を感じる

 

ご自分の選択とどれくらい一致していましたでしょうか?

 

なぜ上記のような様々な状況で微妙な嫌悪表情の違いが生じるのでしょうか?

 

1の鼻にしわが寄せられる表情は、不快なにおいを遮断する機能を持っています。この表情してみて下さい。鼻の穴が狭まり、匂いを感じにくくなると思います。2のアゴが下げられ、舌が出される表情は、有害なモノを吐き出す機能を持っています。人類共通に有害なものではなくても、個人的に嫌いなものを口に含んでもこうした表情になりますよね。3の上唇が引き上げられる表情は、道徳違反を排除する機能を持っています。道徳違反を目にすると、嫌悪だけでなく、怒りや軽蔑も引き起こされますよね。上唇が引き上げられることによって、歯が露出し、攻撃のシグナルを生じさせることが出来ます。

 

私たちの表情筋はこのような機能を備えて、私たちのサバイバルを助けてくれているのです。各々の表情筋には適応の軌跡が刻まれているのです。

 

 

清水建二

参考文献

Rozin Paul, Lowery Laura, and Ebert Rhonda, “Varieties of disgust faces and the structure of disgust,” Journal of Personality and Social Psychology, 1994, 66(5): 870–881.