微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

タッチの男女差

 

前回のブログでは、タッチによって多くの感情を伝える・伝わることをご紹介いたしました。その中で、男性は怒り感情に感度が鋭く、女性は幸福感情、共感感情に感度が鋭いことを書きました。これはなぜなのでしょうか?

 

タッチの男女差の説明をする前にもう少しだけ、どう感度が鋭いのか説明をさせて下さい。

 

この実験では、①e男性―d男性、②e男性―d女性、③e女性―d女性、④e女性―d男性、という種類のペアをいくつも作り、e側が感情をタッチで伝え、d側が感情を解読するという試行が繰り返し行われました。

 

怒り感情を正しく解読出来たペアは、①>④>②>③の順位でした。

幸福感情を正しく解読出来たペアは、③>②>④>①の順位でした。

共感感情を正しく解読出来たペアは、②>③>④>①の順位でした。

 

怒り感情は、男性ペア同士の場合が一番正確に相手に伝え、伝わることがわかります。次に女性が怒り感情を伝えようとすると女性よりも男性の方が正確に、敏感に怒り感情を把握出来るということがわかります。こうしたタッチ感度の男女差が幸福感情、共感感情にも生じています。

 

なぜこのような差が生じるのでしょうか?

 

進化生物学的要因から説明されています。

 

怒り感情は、戦いに関係する感情です。太古の昔、男性(オス)は、ヒエラルキーの階段を上り、女性(メス)を獲得するために他の男性(オス)と戦う場面が多く、怒り素早く経験し、表現出来た方が適応上有利であったから、怒り感情に敏感になったのではないかと考えられています。

 

共感感情は、育児やケアに関係する他者志向の感情です。女性は育児にかける時間が多く、それが要求される場面が多かったため、共感感情に敏感になったのではないかと考えられています。

 

幸福感情は、進化生物学的説明より、ずっと私たちの社会に近い世界に関係してるようです。すなわち女性の方が男性に比べ、様々な状況下で、幸福感情を経験することが多く、幸福感情を表現することが多いため、幸福感情に敏感になったと考えられています。

 

感情の感度を高めるためには、感情を経験し、感情を表現することで、身体が覚えてくれるようですね。

 

 

清水建二

参考文献

Hertenstein, M. J. & Keltner, D. (2011). Gender and the communication of emotion via touch. Sex Roles, 64, 70-80.