微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

埋め込まれた身体動作

 

まずはこちらの動画をご覧下さい。

 

 

何に気付かれますか?

ヘンリー王子の手の動き。

 

ヘンリー王子がメラニア夫人と正面を向き、カメラ撮影に応じるときに見せた手の動き、形。これはある意味を示すジェスチャー(cf. コルナ)か単にスーツのボタンを閉め忘れただけかその両方かに解釈が分かれるでしょう。

 

しかし、色々な情報を組み合わせると手の動きの意味を推測することが出来ます。興味がある方は自分で調べて直接清水に考えを教えて下さい(メール・電話などのお問い合わせはご勘弁をm(__)m)。

 

ところで、私が小学生のとき、「霊柩車が通ったとき親指を隠さなければ親の死に目に会えない」、そんな迷信が広がり、それを信じていた私は当時、霊柩車が通るたびに親指を隠したものです。「そんなことあるわけないや。」と思ったあとも、しばらくこの親指を隠すという行為は自然と続き、身体の動きのクセとは不思議だな~と思った記憶があります。

 

多くのジェスチャーは形や動きが同じでも、文化固有の意味が込められています。学習を経て身体に埋め込まれた文化のシグナルあるいはサインです。

 

外国語習得のプロセスにおいて、文法や発音、ロジックなどには焦点が当てられますが、ジェスチャーに焦点が当てられることはほとんどありません。

 

言語習得とジェスチャー習得を同時に行った方が、その言語のノリをマスターし、言語習得が加速度化するのだろうか?などと外国語を勉強していてふと感じるここ数年です。

 

 

清水建二

 

2017年9月26日(火)「雨上がりの『Aさんの話』~事情通に聞きました!~」に出演させて頂きました

 

「雨上がりの『Aさんの話』~事情通に聞きました!~」に出演させて頂きました。リアルタイムでは大阪でしか観れないようなのですが、Tverというシステムでどこでも放送後1週間、無料で観れるそうです。次のサイトから清水出演の様子を観ることが出来ます。よろしければ是非どうぞ。

 

tver.jp

 

さて、ここからはネタばれもあるのでテレビをご覧になった後に読まれた方が良いと思われます。

 

意識的にコントロール出来る筋肉と出来ない筋肉があります。コントロールとは「表情を意図的に作る」という意味と「表情を意図的に抑制する」という二つの意味があります。

 

前者の「作る」方が、いわゆる愛想笑いだったり、ウソ泣きと言われるものです。こうしたフリは、意図的に動かせない表情筋の有無で本当にその感情を抱いているのか否かを推測します。愛想笑いだったら目じりにしわがなく、ウソ泣きだったら眉はハノ字にならない、そんな塩梅です。表情筋の一部から感情の有無や強弱を推測するため、正確には微細表情というものから観ます。

 

しかし、人によっては意図的に動かせないハズの表情筋をコントロールできる方もいるため、この方法に加え、表情の出現タイミングや左右対称性なども勘案して最終的に感情の有無を推測することもあります。

 

愛想笑いは人に対する配慮の場合が多いため、その真偽を見抜ける能力があれば、愛想笑いをしている人のやさしさをビビットに感じることが出来ます。ですので私は愛想笑いが好きです。

 

後者の「抑制する」方が、微表情です。抑制しきれない感情が一瞬の表情として顔に漏洩するのです。この微表情を見抜くことが出来れば、その人の本当の感情に気付くことが出来るのです。番組ではウソを見抜くスキルとして紹介して頂きましたが、日常・ビジネスでもこのスキルは活躍します。接待先の先方が本当に今宵の食事を「美味しい」と感じているのか、プレゼントが本当に嬉しいのか、プレゼンで自分の説明が伝わっているのか、自分だけ話過ぎていないのか、交渉時先方はどの条件に重点を置いているのか、部下が仕事にどんなモチベーションを抱いているのかいないのか、なんてことを推測するときに活躍します。

 

今回は、表情・微表情の魅力を「ウソを見抜く」というテーマで紹介して頂きました。それ以外にも活用の場面は沢山あります。本番組を通じて、表情・微表情に興味を持って頂ければ嬉しいです。拙著『微表情を見抜く技術』では、表情・微表情読み取りのポイント及び相手の感情の流れを汲んだコミュニケーション方法を紹介させて頂いております。よろしければ是非に。

 

微表情を見抜く技術

微表情を見抜く技術

 

  

最後になりましたが、本番組制作にかかわって下さったスタッフの方々、タレントの方々、本当にありがとうございました。

 

 

清水建二

 

ドゥシェンヌ・マーカーは、感情の強さの表れか?

 

ドゥシェンヌ・スマイルという言葉を表情の勉強をされている方なら聞いたことがあると思います。平たく言えば、目が笑っている笑顔のことです。厳密に言えば、口角が引き上げられ(AU12)、かつ頬が引き上げられる(AU6)、場合によってはまぶたに力が入れられる(AU7)動きを伴った表情のことです。表情の見た目から説明すれば、口角が引き上げられ、目じりにしわが生じる笑顔ということになります。この目じりのしわのことを、カラスの足あとと呼んだり、この動きを発見したフランスの学者の名にちなんで、ドシェンヌ・マーカーなんて呼んだりします。

 

ダーウィンは、このドシェンヌ・マーカーを幸福感情と悲しみ感情の強さの表れだと仮定しており、この仮定は、幸福感情についてはその後(と言っても現代の)研究によって支持されています。しかし、悲しみ感情においては確かめられていませんでした。

 

そこでMattsonらは、親と遊んでいる赤ちゃんの幸福表情と親が突然真顔で反応したときの赤ちゃんの悲しみ表情を分析することで、ダーウィンの仮説を検証しました。結果、強い幸福及び悲しみ感情にはドゥシェンヌ・マーカー、つまり目じりにしわが生じることがわかりました。

 

赤ちゃんは、目じりにしわをよせ、わかりやすい表情をすることで周りの人々とコミュニケーションをとっていると考えられるのです。

 

関連した表情としては、痛み顔ですね。私たちが痛みを感じるとき、その刺激が強いと、目じりにしわが生じます。ということでドゥシェンヌ・マーカーは全ての感情や感覚の強さの表れだと言いたいところです。

 

しかし、そう簡単には抽象化出来ず、例えば、強い恐怖表情や怒り表情では、目が開かれます。恐怖では安全の確認、怒りでは破壊対象の確認のためです。したがって、強い恐怖・怒り感情の強さを示すマーカーは、目じりのしわでなく、「目が見開かれる」なのです。

 

表情ってホント複雑な現象ですが、一つ一つひも解いていくと発達心理学的な意味があったり、進化心理学的な意味があったりと、追及し甲斐のある分野だな、と日々勉強しながら感じています。

 

 

清水建二

参考文献

Mattson, W. I., Cohn, J. F., Mahoor, M. H., Gangi, D. N., & Messinger, D. S. (2013). Darwin’s Duchenne: Eye constriction during infant joy and distress. PLoS ONE, 8(11). doi: 10.1371/journal.pone.0080161.

2017年9月18日(月)キャリタス就活フォーラムDISCOイベント振り返り

 

本日は、月曜日に開催されましたキャリタス就活フォーラムby DISCO様の面接LABOイベントを振り返らせて頂こうと思います。

 

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東京ビックサイトの会場にて、11:00~12:00の回と12:30~13:30の回の2回登壇させて頂きました。

 

大まかな内容は参加された方の記憶にあることを前提として、これからも続けて頂きたいトレーニングを今一度、振り返らせて頂きたいと思います。次のスライドで内容を思い出して下さい。

 

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このトレーニング(ロールプレイング・ウォームアップ)は、就活セミナーだけでなく、新人社会人・営業・接客・交渉・リーダーシップ・情報収集研修などあらゆる場で行わせて頂いており、日常的に出来そうで出来ない、しかしひとたび意識すればコミュニケーション上達の起爆剤となるものです。

 

ぜひ就活中も、就活を終えて社会人になられた後でも意識的にトレーニング及び活用してみて下さい。コミュニケーションのレベルが2つも3つも上がります。

 

そんなこと出来るよ、と思われている方ほど実際には出来ないものです。どれだけの方が眉で会話の流れを読んでいるか実感するために、あらゆるコミュニケーション場面で敢えて眉を下げて相手の話を聞いてみて下さい。驚くほどこちらの熟考は気付かれないし、相手の会話パターンが適切に変わらないことを実感されると思います。

 

これが出来たら、出来つつあるなら次のレベルである各感情をサポートする会話・返答スキルに目を向けてみて下さい。拙著が参考になります。 

微表情を見抜く技術

微表情を見抜く技術

 

 

最後にもう一つ書籍のご紹介です。面接は準備が9割です。ご自分を適切にアピールするために次の書籍がオススメです。分量が多く全部読み準備するのは大変です。人生を決めるイベントなのですから本当はそれくらい大変でも何でもないのですが、物理的に時間が限られている方は自分が最も弱いポイントを読み、面接に備えたら良いでしょう。とても丁寧で細かなアドバイスが書いてあります。

 

新卒採用基準: 面接官はここを見ている

新卒採用基準: 面接官はここを見ている

 

 

就活ラストスパート、新たな世界の扉が開くのはもうすぐです。

 

 

清水建二

伝えることと読むことは、やっぱり表裏一体

 

企業や公官庁向けの研修コンテンツを作っていていつも思うことは、伝えることは読むことなんだな、ということです。そのコンテンツのメニューをいくつかご覧下さい。

 

・部下を不安にさせない仕事の伝え方

・部下を「感情」的に「叱る」方法

・会議で部下の自尊心を「ちょっと」上げる方法

・相手にささるアドバイスの伝え方

・感情別クレーム対処法

・集団の和を乱さない自分の感情の伝え方

・話さな過ぎない・話過ぎない意見の伝え方

 

一見すると上記のメニューは、自分の声色や態度、表情、姿勢、言葉の選び方を意識して、積極的に自分の想いを発信する方法に焦点を当てたような伝え方講座にありそうです。

 

一方で、空気研の伝え方は、相手の感情の流れを読めば自ずから伝え方の6割は到達している、というスタンスです。いわば、受動的伝え方と形容しましょうか。もちろん自分から積極的に意見や想いを発信する効果的な方法を学ぶことは大切と考えますが、相手の感情を把握しない伝え方はややもすると暴力的なコミュニケーションになることがあります。

 

様々な伝え方講座に参加させて頂くと、多くの講師の方々は相手のことを意識しつつ、自分から積極的に意見を発信する方法を教えてらっしゃいます。しかし、どう相手を意識するか、どんなタイミングで、相手のどんな感情の変化に応じて、もっと言えば、動的なコミュニケーションの流れの中で、どの伝え方を選択するべきか、ということに関しては曖昧な部分がまだ多いような印象を受けます(伝え方のプロは、そのあたりのスキルも暗黙知として持っておられ、読む能力もピカイチな方が多いです。ただ、ご自分のスキルを体系化して伝えられるほどの幅広い感情読解に関する専門知がないのだと思います)。

 

例えば、相手の性格別伝え方というものがあります。しかし、優しい性格の持ち主でも怒るときはあるわけであります。消極的な性格の持ち主でも、ときにその消極性の行動パターンに反した感情の起伏・行動の変化が生じるわけです。したがって一瞬一瞬変化する相手の感情を考慮した伝え方、受け止め方というのが大切だと私は思うのです。

 

そうした伝え方講座の間隙に空気研の伝え方アプローチが必須になってくるものと感じるのです。読まなければ伝えられない、読むから伝えられる、そんなふうに思うわけです。

 

 

清水建二

 

タッチの「差」で観る二人の関係

 

恋愛関係の男女はお互いにどのように触れているのでしょうか?公の場における男女の接触行為の観察から、両者の関係性の深さによって接触の仕方に「差が」あることがわかっています。

 

観察からわかったことは、

 

①真剣なデートをしているカップルは、気軽なデートをしているカップルや夫婦よりも、2倍多くお互いに触れる傾向にある。

②気軽なデートをしているカップルの場合、全体的にお互いに触れる量は同じくらいだが、男性の方から女性に先に触れる、一方で夫婦の場合、それが逆転し、女性の方から男性に先に触れる傾向にある。

 

ということです。

こうしたタッチの性、差が生じる理由はなぜでしょうか?

 

真剣なデートをしているカップルがお互いにより多く触れる理由は、親密性をお互いがより多く伝え合おうとしている結果だと考えられています。触れるという行為は、それが望まれていないとき不快感を引き起こします。接触が望まれているか・望まれていないかの空気を真剣なデートのカップルは読んでいると言えるでしょう。気軽なデートのカップルはまだその空気感がわからないゆえに接触の間合いともゆうべきものがわからないのです。

 

では夫婦は?長い間、一緒にいれば空気感わかるでしょ?ということですが、夫婦の方は接触が少なるなる理由がなんとなくわかるのではないでしょうか。なぜ真剣なデートのカップルよりも夫婦の接触は少ないのか?

 

真剣なデートをしているカップルは、お互いに親密性を伝え合うためだけに触れあっているわけではなく、公にお互いの絆をアピールするためにも触れ合っています。特に手を握ったり、腕、腰に触れたり、つかんだりするという結びつきを示す接触をより多く行います。

 

つまり、夫婦の場合、すでに結婚という忠誠を誓い合っているため、お互いの親密性や絆を公にアピールする必要はないからだと考えられています。また触れ合わなくてもお互いを近くに感じられる、さらに公の場よりもプライベートな場で触れ合う傾向にあるからだと考えられています。

 

ただ興味深いのが、真剣なデートのカップルよりも夫婦の方が接触の仕方が似ているということです。単純に言えば、夫婦間ではミラーリングが起きているということです。真剣なカップルはタッチの量で、夫婦はタッチの質で親密性を伝え合っているのだと言えるでしょう。

 

次の疑問、なぜ関係性の深さによって先に「手を出す」順番が異なるのでしょうか。社会的コントロールと親密性が関係していると考えられています。

 

関係性が浅い時期、関係性をリードするのは「男性」という社会的コントロールを重視する考えがあるゆえに、気軽なデートでは男性の方から触れ始めることが許される・想定されると考えられています。しかし、関係性が発展してくれば(例えば、結婚に至れば)、社会的なコントロールよりも親密性の方が重視され、非言語シグナルを用いるのが得意な女性の方が、リードして男性に触れるようになるのだと考えられています。

 

ちなみにこれは欧米人のカップルを対象とした研究結果です。日本人の場合はどうなんでしょうかね?直感的には、現代の日本人も同じように接触し合っているような気がしませんか?

 

引き続き、調査していきたいと思います。

 

 

清水建二

参考文献

Guerrero, L. K., & Andersen, P. A. (2008). Public Touch Behavior in Romantic Relationships between Men and Women. In L. K. Guerrero, & M. L. Hecht (Eds.), The nonverbal communication reader: Classic and contemporary readings (3rd ed., pp. 217-225). Prospect Heights, IL:Waveland Press.