微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

リテールテックJAPAN 2017 & SECURITY SHOW 2017参加レポート第一弾―感情認識アプリの可能性

 

リテールテックJAPAN 2017 及び SECURITY SHOW 2017が3月7日(火)~10日(金)にかけて東京ビックサイトにて開催されておりました。

 

本日は参加レポートとして感情認識アプリのご紹介をさせて頂きたいと思います。今回私がご紹介する感情認識アプリは、凸版印刷×シーエーシーによる感情AI、Affdexです。

 

Affdexは、MITが10年の歳月をかけて開発し、世界75ヶ国400万人から収集された世界最大規模の感情データが内蔵された感情AI(米ベンチャーのAffectiva社の商品)です。

 

幸福・軽蔑・嫌悪・怒り・悲しみ・恐怖・驚きの7表情と個々に独立した21の表情筋の動きを認識することが出来ます。まずは色々な表情を、シーエーシーの社員さんとともにカメラの前でやってみました。

 

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みなさんの素敵な笑顔が集計されていきます。一人だけでなく集団の表情までも瞬時に認識できるところが大きな特徴です。1800回ものスマイルがこのカメラの前でなされているのですね。むむ…恐怖が少ない!意図的に恐怖表情を作ることは難しいことが知られていますので、カメラの前で恐怖表情をポーズしようとしてもAIは恐怖と認識しないのですね。しかしよく見ると5回、恐怖がカウントされていますね。このAIに恐れをなした人の本当の恐怖感情か!?…実は2回は私が恐怖表情をポーズしました。FACSコーダーはどんな表情でも、通常は意図的に作ることが出来ない表情でも意図的に作ることが出来るのです笑

 

さてさて、表情が正しく認識されることがわかったら、今度はその応用分野ですね。このAI何の役に立つのでしょうか?

 

こんなデモがありましたよ!

 

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 次々と食事のメニューがモニターに映し出されるのを見ていきます。

 

さて、どうなるのでしょう???

 

はい!私にオススメのメニューランキングが出ました!!

 

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モニターの上に付いているカメラに感情認識AIが搭載されており、次々と映し出される食事に私がどんな感情を抱いているか計測しているのです。ポジティブな感情を抱いていた順にオススメメニューが提示される仕組みなのです。

 

レストランに入っていつまでもメニューが決められない人には良いかも!近い将来、自分の潜在意識下で食べたいものを感情AIがチョイスしてくれる日が来るかも知れませんね。

 

この種の応用事例はいくつでも思いつきそうですよね。

 

婚活などでは、大量の異性の写真を見て、自分はどんなタイプの顔・プロフィールが好きなのか判断したり、会社や教室にいるメンバーの選好を計測することで、人員配置やクラス替えのサポートツールなどにも応用できるかも知れません。

 

他にも、Amazonが購入履歴からオススメ商品を通知してくれるように、Googleが検索ワードから関連広告を提示してくるように、PCや携帯のカメラに感情AIが搭載されていれば、私たちの無意識の選好(感情はときに無意識に生じるため)までも把握し、文字通り、心から欲しいと感じるモノや情報を提供してくれるようになるかも知れません。

 

直感や直観は、ときに理性によって積み上げられた推論よりも適切な解答を導いてくれることが知られています。無意識(感情)と意識(推論)との新たな共存の形とはどんなものになるのでしょうか?

 

 

清水建二

 

学術論文の読み方―研究方法・研究結果・考察編(表情分析エキスパートコース&英文読解コース補論)

 

本日は前回の続きです。学術論文の読み方―研究方法・研究結果・考察編です。

 

研究方法には、実験の調査方法が書かれています。実験参加者の構成や実験の手順、分析方法などが書かれています。論文の内容を批判するときは、主にこの研究方法の部分を的にします。「この論文の研究方法が○○という点で不適切なため、本論文の言う結論を見出すことはできない。」このように批判がなされます。このような批判の仕方を建設的な批判と言います。

 

一方、「この論文の言うことに価値を感じられない。」と言って論者や論文の内容を批判する仕方を破壊的な批判と言います。また「この論文の言うことは信じられない。なぜなら私の経験に反するからだ。」「この論文の言うことは信じられない。○●先生の意見とは違うからだ。」という批判の仕方を素朴な批判と言います。

 

もちろんある論を正当に批判する方法は、建設的な批判です。当然、建設的な批判をするには、研究方法をよく読み、その中にある問題点を探す必要があります(結果や考察のロジックが変だと批判できる可能性もなくはないのですが、研究方法の問題点を指摘する方が、オーソドックスな批判の仕方です)。

 

なお、建設的な批判を日常・ビジネスで行うには、その人の見解そのものを直接的に批判するのではなく、その見解に至ったロジック、データの整合性に関して批判することで見解に異を唱えることになります。こうした批判の仕方をすることで、相手の見解をより良いものへと昇華させられる可能性が生まれます。

 

おまけの話しですが、私もセミナーなどで批判を頂くことがあります。建設的な批判には、時間の許す限り真面目な議論で対応します。破壊的な批判は、スルーします。素朴な批判には、相手の受け入れやすい返答をお返ししています。

 

研究結果には、統計検定の結果が書かれています。統計学の知識がないとこの部分を理解することは出来ません。しかし、統計の知識があれば、この論文の言っていることがどのくらいの精度で確からしいのか、どのくらいの確率で間違える可能性があるのかが、客観的な数値から確認することが出来ます。

 

考察には、統計検定で得られた数値から何が言えるのかが書かれています。新たな仮説が生まれたのか、イントロダクションに提示した仮説が検証できたのか否かが書かれます。

 

考察の中、もしくは考察の後に書かれるものとして、研究の示唆・研究の限界・将来の研究、というものがあります。研究の示唆には、本研究の知見がどのような役に立つのか、他の研究結果と比べてどのように有用かなどが書かれています。

 

研究の限界には、本研究結果が明らかに出来た部分とそうでない部分が書かれています。また想定される建設的な批判が書かれる場合があります。例えば、「本研究の実験参加者は全て大学生である。実験参加者に様々な年齢層の社会人を含めたら、研究結果が変わり得る可能性もある。」という感じです。

 

将来の研究には、研究の限界を踏まえて、それを埋めるような研究、明らかに出来た部分を再度確かめる別の方法、明らかに出来ていない部分を明らかにするための研究の方向性などが書かれています。

 

学術論文を読むには、前提となる知識や論文特有の言い回しなどがあり、最初は読みにくいかも知れませんが、知識の蓄積と慣れによってどんどん読めるようになります。自身の見解を科学的なものにしたい、もしくは人に客観的な「事実」を伝えようとされる方にとって、学術論文を読めるようになることは必須だと私は考えています。

 

 

清水建二

推薦図書

科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)
 

 科学的思考法とは何ぞや、ということについて書いてあります。ポパー反証可能性命題についての説明が素敵です。

 

入門 政治経済学方法論

入門 政治経済学方法論

 

 社会科学分野における様々な実証方法が紹介されておりますが、特に第0章の導入部分が秀逸だと思います。第0章以外は読まなくてよいとしても、第0章は科学リテラシー向上にはすべての人に読んで頂きたいと思えるくらい重要な章だと思います。

学術論文の読み方―要約・イントロダクション編(表情分析エキスパートコース&英文読解コース補論)

 

今回と次回のブログでは、表情分析エキスパートコース及び表情分析英文読解コースでご説明した、もしくはご説明しきれなかった学術論文の読み方―要約・イントロダクション編について補論させて頂きたいと思います。

 

心理学系の学術論文の構成は、要約・イントロダクション・研究方法・研究結果・考察がオーソドックスです。それでは各構成についてご説明しましょう。

 

要約には、その論文の趣旨と研究からわかったことが簡潔に書いてあります。要約を読めば、その論文が何について扱い、どんな方向で論を展開するのかの予想が出来ます。

 

イントロダクションには、その論文で扱う問題や疑問が、関連研究の歴史の中でどんな立ち位置にあるのか、その論文で扱う問題がどのように・なぜ新たに問う(実験し、確かめる)必要があるのかが書かれています。同じ分野の論文を読めば読むほど、イントロダクションには似たり寄ったりの内容が書いてあるということに気づきます。研究の歴史、変遷なのですから、当たり前と言ったら当たり前です。従いまして、イントロダクションを読んでいるときの頭の中は「あ~そう、そう。そういう研究の歴史だよね。」と再確認しながらロジックを追っていく感じとなります。

 

論文の内容を素早くつかみたいのならば、要約➡考察の順で読めば、誤解を恐れず言うならば、これらの部分だけ読めば大抵、こと足ります。しかし、論文の内容を人に伝えたり、論文の知見をご自分の論の補強に利用したり、論文の見解を批判したい人は、要約と考察だけでなく、論文全てを読みます。

 

ちなみに、ある人が「これは科学的に検証されている見解です。」という発言するのをどこかで耳にされる場合、その人が論文を本当に読んで発言しているのか、聞きかじった知識だけで話をしているのかを見分けることが出来ます。例えば、「その見解は、その分野の研究の中でどのような位置を占めているのですか?」「マジョリティーの見解ですか?」「いつ頃、発表された見解ですか?」と問うのです。論文をきちんと読んでいれば、イントロダクションの部分で必ずこの問いの答えが出ているので、この問いに答えることが出来ます(もしくは「それはどのような研究方法で検証されたのですか?」と問うのも一つの方法です)。

 

イントロダクションの中に、もしくは仮説と名を打って、実験で証明したい仮説を記載する論文もあります。仮説がある論文は仮説検証型論文と言い、仮説がない論文は仮説生成型論文と言います。

 

仮説生成型の論文の場合、まだ仮説を立てられるほど知見が溜まっておらず、手探り状態なので取り敢えず色々実験してみよう、というノリの挑戦的な論文という感じです。

 

長くなってきましたので、この辺りで終えたいと思います。次回、学術論文の読み方―研究方法・研究結果・考察編をお送り致します。

 

 

清水建二

参考図書

創造の方法学 (講談社現代新書)

創造の方法学 (講談社現代新書)

 

初版は1979年ととても古い書籍ですが、科学的創造・思考法とはいかなるものか?ということを教えてくれる名著です。私は本書を学部2年生のときに読んだのですが、そのときの衝撃を今でも覚えています。論理という言葉は知っていましたし、そこそこ使いこなせていると思っていましたが、同じ文章というか、記述・説明と言いますか、同じ日本語でもなぜこれほどまでに趣がちがうのか、言わば、論理の重み、と言ったような現象の謎が氷解するキッカケを与えてくれました。

感情AIを体験してみませんか?

 

私の目が入っている感情AIがあることをご存知ですか?私の目とは、すなわち、顔のあらゆる動きを測定するためのFACSというマニュアルの知見が搭載されたAIです(注:私が感情AIを開発したわけではなく、私はコンサルという立場で関わらせて頂いております)。

 

私が近年傾注している分野は、感情AIです。特に、表情認識から感情を推定することを自動化するようなアプリの開発、向上、実用、限界などに関心を持ち、関連企業と連携しながら感情AIの可能性を日々、模索しています。

 

この度、こうした活動の一つの成果として、リテールテックJAPAN in 東京ビックサイトにて感情AIのお披露目会が行われます。

 

感情AIが搭載されたカメラの前で、色々な表情をして見て下さい。驚くほど、正確に、瞬時に私たちの感情を検出してくれます。

 

感情AIが搭載されたカメラの前で、食事のメニューを見て下さい。あなたが今、何を食べたいか、オススメしてくれます。

 

その他、色々、試してみて下さい。自分の笑顔は、ナイスと判定されるのか、左右非対称度が大きすぎて、軽蔑よりと推定されるのか?変顔したらAIは、どう判定するのか??笑、などなど。

 

詳細は以下のURLをクリック下さい。

 

凸版印刷とシーエーシー協業のニュース

http://www.cac.co.jp/news/topics_170302.html

 

リテールテックJAPAN

会場:東京ビックサイト

開催日時:2017年3月7日(火)~10日(金)10:00~17:00(最終日は16:30まで)

https://messe.nikkei.co.jp/rt/

 

是非、感情AIが織りなすヒトとAIとの交流を体感しに来て下さい。

そして皆様のアイディアをお聞かせ下さい。

「こんなの出来たらいいな。」が本当に実現できるかも知れません。

 

 

清水建二

 

2017年2月26日(日)キャリタス就活フォーラムDISCOイベント振り返り

 

本日は、先日の日曜日に開催されましたキャリタス就活フォーラムby DISCO様のイベントを振り返らせて頂こうと思います。

 

本イベントでの登壇は約半年ぶりとなりました。

 

場所は…ここはどこでしょうか?

いつもとは違うアングルから。

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左端に見える特徴的な建物がヒントです。

 

 

正解は…

 

今回も…

 

東京ビックサイトでした。

 

私がお話しさせて頂いたテーマは、面接の空気を微表情から察し、面接の流れを変える!でした。しかし、いきなり微表情を読みながら、コミュニケーションの流れを変えるのは不可能ですので、微表情を活かすためにも、微表情までは読み取れなくても面接でよい空気をつくるために大切なこと、最初に伝えたいことをお伝えさせて頂きました。それは、

 

面接のためにどう事前準備し、面接時に面接官の眉の動きにどう注意して話すべきか

 

ということです。毎回繰り返し強調させて頂いているように(会場で毎回同じこと言ってるな~と思われる学生さんはいないハズですが!)、今回も強調させて頂きました。

 

それでは、面接が上手くなるTipsの紹介です。

 

①面接のためにどう事前準備するか?

 

志望動機、良いところ、悪いところ、学生時代頑張ったこと…などの予想され得る各トピックについて、1分、3分、5分(できれば10分も)バージョンを用意して下さい。そして面接本番では、1分バージョンを簡潔に話すようにしてみて下さい。

 

それはなぜ?

 

一対少人数でのコミュニケーションにおいて、人は1分以上一方的に話を聞いていると長いと感じるためです。面接が上手くなる第一歩は、まずは質問されたこと(質問に対する回答に限らず、自分からの発信も含む)を1分で簡潔に話し、状況に応じてそのトピックを終わらせるべきか、広げるべきか判断するのがオススメです。

 

②面接時に面接官の眉の動きにどう注意して話すべきか?

 

他者の感情を読むための観察ポイントは多岐にわたりますが、まずは面接官の「眉が上がる」「眉が下がる」だけを意識して下さい。「眉が上がる」は、情報検索サイン、平たく言えば、もっと話が聞きたい、興味・関心サインです。「眉が下がる」は、集中サイン、つまり、「あなたの話、理解するのが難しい」サインです。これは面接官の顔に2秒ほど表れるので、注意をしていれば気付けるハズです。この知識を使ってコミュニケーションの情報量を調整します。あなたの話を聞いている面接官の眉が上がれば、その話について興味があるため、その話について掘り下げたり、広げる努力をするべきです。面接官の眉が下がれば、その話を理解することが困難であるため、丁寧に説明し直したり、面接官に質問をするべきです。

 

話を掘り下げたり、広げたり、丁寧に説明し直したり…ってそんな器用なこと緊張した面接時に出来るの?と思われるかも知れません。そこで①面接のためにどう事前準備するか?が大切なのです。

 

一方で、「こんなの簡単!」と思われた方々に一言。様々なコミュニケーションを観察する場面が多々あるのですが、眉の上げ下げから情報の出し入れを適切に出来ていると思われる人は、1割くらいです。思いのほか難しいのです。その理由の大半は、眉の動きの意味がわからないのではなく、相手の顔を意外なほど見ていないのです。その理由は様々ですが、主に自分が話すことに意識が集中してしまい、相手に意識を向ける余裕がないからだと思います。しかし、相手の顔(眉)に意識を向けるということに少し気をつけるだけで、驚くほど上手く思いを伝えられるようになるでしょう。

 

 

清水建二 

参考図書

 面接対策本の決定版と呼べるほど、面接に必要な核となる情報が掲載されています。

数ある面接本の中では一番のオススメです。

新卒採用基準: 面接官はここを見ている

新卒採用基準: 面接官はここを見ている

 

 

面接採用官側の視点も勉強してみると意外な発見がありますよ。

この書籍がダントツでオススメです。

採用学 (新潮選書)

採用学 (新潮選書)

 

 

コース開講のお知らせ&今後の予定

 

本日は直近&今後開催予定のコースのお知らせです。

 

①4月より開催予定のコースは次の二つです。

 

・「表情・しぐさ分析総合コース」

2017年4月の開催分の申込を開始しております。

コースの詳細&お申し込みは以下のURLからお願い致します。

表情・しぐさ分析総合コース | Peatix

 

本コースの次回の開催は2017年10月を予定しております。

 

・「戦略的インタビューコース」

2017年4月の開催分の申込を開始しております。
コースの詳細&お申し込みは以下のURLからお願い致します。

戦略的インタビューコース | Peatix

 

本コースの次回の開催は未定です。

 

②今後開催予定のコースは次の三つです。

 

・「表情分析エキスパートコース」

2017年10月に開催予定です。本コースの受講には、「表情・しぐさ分析総合コース」の受講が必要条件となります。同時受講は出来ませんので、エキスパートコースを10月に受講されたい方は、4月開講の「表情・しぐさ分析総合コース」をご受講下さい。

 

・「表情・しぐさ分析総合コース」in 中部地区

名古屋で半年コースを開催できればと考えています。スタート時期は今年の初夏を検討しています。おそらく、土曜日もしくは日曜日開催、一月一回4時間×6回になると思われます。ただ弊社の半年コースを東京以外で開催したことがないため、どのくらい受講希望者がおられるのか予想できません。西日本、中部地区、名古屋周辺にお住まいで、興味のある方がおられましたら、弊社アドレスまでメール下さいませ。


info@microexpressions.jp

 

「表情・しぐさ分析総合コース」in 中部地区興味あり、土・日なら受講可能、のような感じで一言頂ければ幸いです。

 

・「表情・しぐさ分析トレーナーコース」

弊社が認定するトレーナーを養成したいと考えています。非言語に関する知識テスト、技能テスト、映像分析や講義デモンストレーションなどを実施させて頂き、それら総合力を身に着けていると判断された方のみに弊社のコンテンツを外部で教えることができる認定をお渡しできれば、と考えております。開催時期などは未定ですが、今後の予定としてお知らせさせて頂きます。

 

なお、目下、一般の方向けの短時間セミナーや公開講座の開講予定はありません。

 

その他、コースに関するご要望やお問い合わせなどございましたらお気軽にご連絡下さい。お電話よりメールの方がスムーズかと思います。

 

おまけ

先日出張で訪れたホテルin名古屋からの素敵な景観

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清水建二

 

 

子どもが恥ずかしがるのはいつから?

 

子どもが「恥ずかしがる」とはどういうことでしょうか?恥ずかしいという感情、つまり、羞恥や恥という感情を抱くのはいつ頃からで、そうした感情を抱けるということは何を意味しているのでしょうか?

 

Lewis(1989)らの研究によれば、子どもが恥ずかしさを感じ始めるのは、2~3歳頃からと考えられています。そしてその感情は、子どもが自分と他者・社会との関係を意識し始めるからこそ生じるものだとしています。

 

Lewis(1989)らによる興味深い研究があります。平均生後22ヶ月の子どもの鼻にこっそりと口紅を塗ります。そしてその子どもたちに鏡を見せ、自分の鼻についた口紅を拭き取ろうとするかどうかを観察します。そうした行動が出来る子どもは、自分の身体というものがわかっており、客観的に自分のことを認識出来ている、自己意識があるとみなされます。

 

この口紅テストをクリアした子どもたち(鏡の自分ではなく自分の鼻についた口紅を直に拭き取ろうとした子ども)とクリアできなかった子どもたちにわけ、様々な場面に直面するそれぞれの子どもたちの反応を比較します。その場面とは、見知らぬ人と対面する場面、自分を鏡で見てもらう場面、褒められる場面、踊ってもらうように頼まれる場面です。

 

それぞれの場面での子どもの反応にどのような違いが観られたでしょうか?

 

見知らぬ人と対面する場面では、両者の子どもに反応の違いはなく、両者の子どもとも恐れを抱く傾向にあることがわかりました。この、見知らぬ人=怖いもの、という図式は自己意識がある・なし関わらず自動的に感じられてくる原始的な感情であることがわかります。

 

しかしその他の場面では、口紅テストをクリアした子どもの方が、そうでない子どもに比べて、恥ずかしがる傾向にあることがわかりました。つまり、自己意識が成立しているからこそ、恥ずかしいという感情を抱くのだと考えられるのです。

 

恥ずかしさ以外にも、誇り、罪悪感などの感情も2~3歳くらいの間に発達すると考えられています。

 

みなさんの周りのお子さんは、いつ頃から恥ずかしがりますか?1歳半や2歳の早い時期に恥ずかしがる様子を見せていたら、すでに「自分を持っている」「社会の中の自分を意識出来ている」早熟なお子さんなのかも知れません。

 

(私に子どもが出来たら、1歳半以降、毎日子どもの鼻に口紅を塗って観察してみよう。)

 

 

清水建二

参考文献

本ブログで紹介した研究はもともとはLewis(1989)らの研究ですが、記事作成にあたり、遠藤(著)「発達における情動と認知の絡み」p.15-16高橋・谷口(編)『感情と心理学』北大樹書房(2002)の記述を参考にさせて頂きました。本記事の内容に関して詳細を知りたい方は以下の文献を参照下さい。

感情と心理学―発達・生理・認知・社会・臨床の接点と新展開

感情と心理学―発達・生理・認知・社会・臨床の接点と新展開