今回と次回のブログでは、表情分析エキスパートコース及び表情分析英文読解コースでご説明した、もしくはご説明しきれなかった学術論文の読み方―要約・イントロダクション編について補論させて頂きたいと思います。
心理学系の学術論文の構成は、要約・イントロダクション・研究方法・研究結果・考察がオーソドックスです。それでは各構成についてご説明しましょう。
要約には、その論文の趣旨と研究からわかったことが簡潔に書いてあります。要約を読めば、その論文が何について扱い、どんな方向で論を展開するのかの予想が出来ます。
イントロダクションには、その論文で扱う問題や疑問が、関連研究の歴史の中でどんな立ち位置にあるのか、その論文で扱う問題がどのように・なぜ新たに問う(実験し、確かめる)必要があるのかが書かれています。同じ分野の論文を読めば読むほど、イントロダクションには似たり寄ったりの内容が書いてあるということに気づきます。研究の歴史、変遷なのですから、当たり前と言ったら当たり前です。従いまして、イントロダクションを読んでいるときの頭の中は「あ~そう、そう。そういう研究の歴史だよね。」と再確認しながらロジックを追っていく感じとなります。
論文の内容を素早くつかみたいのならば、要約➡考察の順で読めば、誤解を恐れず言うならば、これらの部分だけ読めば大抵、こと足ります。しかし、論文の内容を人に伝えたり、論文の知見をご自分の論の補強に利用したり、論文の見解を批判したい人は、要約と考察だけでなく、論文全てを読みます。
ちなみに、ある人が「これは科学的に検証されている見解です。」という発言するのをどこかで耳にされる場合、その人が論文を本当に読んで発言しているのか、聞きかじった知識だけで話をしているのかを見分けることが出来ます。例えば、「その見解は、その分野の研究の中でどのような位置を占めているのですか?」「マジョリティーの見解ですか?」「いつ頃、発表された見解ですか?」と問うのです。論文をきちんと読んでいれば、イントロダクションの部分で必ずこの問いの答えが出ているので、この問いに答えることが出来ます(もしくは「それはどのような研究方法で検証されたのですか?」と問うのも一つの方法です)。
イントロダクションの中に、もしくは仮説と名を打って、実験で証明したい仮説を記載する論文もあります。仮説がある論文は仮説検証型論文と言い、仮説がない論文は仮説生成型論文と言います。
仮説生成型の論文の場合、まだ仮説を立てられるほど知見が溜まっておらず、手探り状態なので取り敢えず色々実験してみよう、というノリの挑戦的な論文という感じです。
長くなってきましたので、この辺りで終えたいと思います。次回、学術論文の読み方―研究方法・研究結果・考察編をお送り致します。
清水建二
参考図書
初版は1979年ととても古い書籍ですが、科学的創造・思考法とはいかなるものか?ということを教えてくれる名著です。私は本書を学部2年生のときに読んだのですが、そのときの衝撃を今でも覚えています。論理という言葉は知っていましたし、そこそこ使いこなせていると思っていましたが、同じ文章というか、記述・説明と言いますか、同じ日本語でもなぜこれほどまでに趣がちがうのか、言わば、論理の重み、と言ったような現象の謎が氷解するキッカケを与えてくれました。