微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

第7回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 本日、2022年2月9日(水)に清水建二の新刊『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』が中央公論新社より発売となりました。本書の内容の紹介と制作裏話を書き連ね、今回で7回目を迎えました。書籍の内容については、前回で全て紹介し終えましたので、今回は、本の価値について思うところを書きたいと思います。

 

 本は、安いと思います。本書に限らず、本は、込められている情報の質と量を考えるとき、その価値に比して、とても安価だと思います。著者の長年の経験や膨大な知識が凝縮され、本書なら946円で手に入れることが出来ます。経験や知識を血肉化する過程で、上手くいくことよりも上手くいかないことの方が多かったことでしょう。それをゴールから教えてくれるのです。「こうしたら失敗しましたよ」「こんなやり方で成功しましたよ」「これを上手く行うには、ちょっとしたコツがありまして、それは…」というように。

 

 本書で言うならば、本書は、科学知見を根拠にウソや心理の推測法を説明していますが、「使える」と思える科学知見は、例えば、学術論文20本中1本あるか否か、という割合です。

 

 明らかにしたい現象の科学的説明を求め、論文を検索します。ヒットした論文を、手に入る限り、時間の許す限り、読みます。このとき思うことですが、学術的なレポートや論文を書く方が一般書を書くより報われるな、ということです。なぜなら、学術系の文の場合、自分の論を書く前に先行研究を紹介します。基本的に穴のないように書くため、自分が調べたほとんど全ての学術論文の内容を盛り込むことが出来ます。しかし、一般書である本書の場合、読者にわかりやすく、かつ、使える内容しか掲載できません。というか、掲載しません。「数日費やして調べ尽くしたのに、本に掲載できる情報が何もなかった!」ということがよくあります。正確に書きますと、本書の内容は、セミナーや社員研修を経た知見ですので、「数日費やして調べ尽くしたのに、セミナー・研修で紹介できる情報が何もなかった!」となります。これ結構、体力を消耗しますし、心も折れるのです。しかし、有益な情報が見つかったときの喜びは、落胆が大きいほど、見つからない日が続いたときほど、大きいです。こうして厳選されたネタが書籍化されます。本は、安い。

 

 また、私のセミナーを受けられた方はお気づきになるかと思いますが、本書の全ての内容を個人様がセミナーで受けるとなると100万円ほどかかると思います。100万円の内容が、946円。安い。本は、実に、安い。これも正確に書きますと、セミナーでは豊富な画像や動画を観ながら、分析しながら学んで頂きますので、セミナーと本の値段を単純に比べることは出来ません。しかし、少なくとも100万円のセミナーのエッセンスを946円で手に入れることが出来る、とは言えるでしょう。

 

 本は凄いです。色々な経験や知識が、試行錯誤を経て知恵となったものです。本を読む度に筆者の知恵を、筆者の視点を、筆者と同じ苦労をせず手軽に手に入れることが出来ます。もちろん、筆者の知恵に深く納得したり、その知恵を有効活用できるかは、読後の読者の努力次第です。しかし、本を読まなければ、帰納的にしか得ることの出来ない知恵を、本は演繹的に教えてくれるのです。ということで、本を読みましょう。読んだ数だけ、視点が変わる。知恵が得られる。

 

 清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)2月9日発売です。

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立川の書店にて。偉大な村上陽一郎先生と同時発売だということを知り、
さらに、2冊が隣同士に並んであるのを発見し、二重に感動。

 

清水建二