微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

儲かるモノマネ

 

ボディー・ランゲージを日常生活に有効活用しようとするものの中で有名なものとして、相手の動作を真似る、というものがあります。会話中、相手のしぐさや姿勢をさりげなく真似ることで相手に好意を持ってもらえるという効果が様々な書籍の中で謳われています。

 

さぁ、これは本当か?

 

そう、本当なのです。モノマネの効果についてはこれまで多くの研究がなされています。例えば、自分のしぐさや姿勢を真似された人は、真似されなかった人に比べ、相手に好感を持ち、会話が弾み、相手との心理的距離が近くなったという感想を抱く傾向があることがいくつかの研究からわかっています。

 

それでは、モノマネは、相手の感情的な動きの変化を超え、相手の行動を変えるほどの効果はあるのでしょうか?これを調べるため、実際に営業中の飲食店を使い、店員さんがオーダーのときにお客さんの注文を真似する、つまり復唱することで、チップの額が増えるかどうかが検証されました。

 

実験の結果、お客さんの注文を復唱した店員さんは、復唱しなかった店員さんに比べ、多くのチップをもらうことが出来ました。さらにそのチップの額は、妥当なチップ額よりも多かったことがわかりました。

 

日本の飲食店では、注文を復唱することが当たり前ですし、チップの習慣もないので、この実験の効果を直接確かめることは出来ませんが、他の接客業、例えば、旅館などで応用できるかも知れませんね。

 

他にも様々な行動がチップの額を増やすことがわかっています。例えば、お客さんに触れる、挨拶する、自己紹介する、「ありがとう」とメモを書く、笑顔のイラストを描く、しゃがんでオーダーを受ける、笑顔で接する、話すスピードをお客さんに合わせる、などが研究より見出されています。

 

飲食店以外でも、人と関わることならどんなことでも好感度を上げる手段としてやっぱりモノマネは有効な手段のようですね。

 

しかし、やりすぎは禁物です。モノマネが功をなすポイントは、「モノマネをしていることを相手に気付かれないこと」です。相手が無意識レベルでモノマネに気付くことが重要で、意識的にわかるレベルまでモノマネを行うと効果どころか逆効果になります。

 

 

清水建二

参考文献

van Baaren, R. B., Holland, R.W., Steenaert, B. & van Knippenberg, (2003). Mimicry for money: behavioral consequences of imitation. Journal of Experimental Social Psychology, 39, 393 - 398.