微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

2017年5月23日(火)AbemaPrime(アベマプライム)企画―忖度と表情分析―ブログ編

 

昨日の5月23日(火)、AbemaPrime(アベマプライム)さんに表情分析の専門家として出演させて頂きました。放送内容&放送されなかった部分含め、忖度と表情分析について書かせて頂きたいと思います。

 

トピックは、飲み会の席でどのような忖度がなされているか?というものでした。私は表情の変化という観点から忖度の度合いを観察させて頂きました。なお忖度という意味ですが、思いやり、察し、推察という意味も含んで使わせて頂きました。

 

結論から言いますと、観察させて頂いたお3方について、お互いの忖度の度合いがバランスよくなされており、良い人間関係、調和した場の空気が生み出されていると思われました。

 

表情表出の観点(正確には、表情とその前後に生じた会話のやり取り)に基づき、忖度がよく観察された状況を解説いたします。

 

なお、あくまでもこの飲み会での場、このお3方の人間関係内での忖度の発生度合いですので、このお3方の忖度度合いが他の場所でも同様に生じるかはわからないことに留意願います。

 

まず女性の隣に座られていた男性についてです。ネガティブもしくは真面目な話題を聞いているときも、ご自身がそうした話題を話されているときも、終始笑顔です。笑顔を保つことによって、ネガティブもしくは真面目な話題がどんどんその度合いを増し、穏やかな飲み会の空気が沈んでしまわないようにしようと意識・無意識問わず、されていたのだと思われます。この笑顔による場の中和効果とでも呼べるものが、忖度と言えましょう。

 

次に女性です。女性の忖度が顕著だったのは、驚き(興味・関心含む)表情です。男性らの話題に驚き表情で応じている場面がいくつかありました。普通、驚きの後には驚いた本人による質問が続きますが、それがありません。これが忖度だと考えられます。理由は二つの可能性が考えられます。一つは、相槌の代わりに驚き表情を相手に見せた可能性があります。もう一つは、自分の質問により相手の話の流れをさえぎらないように意識的に口を開けなかった可能性があります。いずれにせよこの驚き表情は、相手に会話を促し、スムーズなコミュニケーションを成立させるのに寄与しています。その結果、調和のとれた飲み会の場が保たれています。

 

最後に白シャツの男性についてです。この飲み会の場面、かつ表情という観点に限って言えば、忖度的な表情が一番少なかったことが観察されました。忖度的表情が全くなかったわけではありませんが、先のお二人に比べると、感情がストレートに生じ素直なコミュニケーションをされていると思われます。なお表情と関係のないところでは、前に座っている男性に男性が欲する前に七味唐辛子をそっと男性の手前に置いたり、女性の会話に様々な質問をして話題を広げていた場面などが観察されました。また盛り上がる必要のない会話に関しては、場の空気を忖度し、不必要に話を広げないという会話の調整をされていました。この男性から表情表出という観点から忖度行動はあまり観察されませんでしたが、会話の調整という観点からは忖度行動が観察されました。

 

忖度をするか・しないかという選択は、人々の性格によるところもありますが、関係性や場にも影響を受けます。忖度があることが必ずしも人の好さを示したり、常に良い帰結をもたらすわけではありません。例えば、忖度ばかりしていている人を、コミュニケーションが間接的過ぎて、ハッキリしない人という印象を持つこともあるでしょう。忖度が行き過ぎれば、暗中模索のコミュニケーション、腹の探り合いになり、コミュニケーションに疲れてしまうでしょう。また間違った忖度をして、逆に相手に迷惑をかけることもあるでしょう。

 

逆に、相手の言外の意味を忖度し、先回りした行動が、やさしさ・誠実さ・本気度を相手に伝える効果があることも事実です。

 

要は忖度も中庸、使い方次第なわけです。

 

 

清水建二