あるネットの記事がきっかけで、山崎広子(著)『8割の人は自分の声が嫌い』角川新書(2014)の存在を知り、読ませて頂きました。
著者の山崎さんは相手の声を聴くだけで、身長・体重・年齢・顔の形などがわかるそうで、表情分析から相手の感情やホンネを推測する仕事をしている私にとって、人物推定に関連する記述はもの凄く興味魅かれる内容で、声について勉強したくなりました。
さらに声の状態から(機器を使えば)病気の有無もわかるという記述もありました。これについては異なるソースから私は知っていましたが、改めて声情報の大切さに目を向ける必要を感じました。
こうした声単体の話もとても面白いのですが、さらに私の興味が引かれた記述があります。それは、声と表情との関連性です。本書によれば、目を閉じたり、眉をひそめるとピッチが下がり、眉を上げ目を見開けば、明るい声が生じ、瞬きが多いと音声が不安定になる…etc
また、声マネをするタレントさんについて、声道の状態を模して共鳴を似せるため表情も似てくるそうです。
声と表情との掛け合い、と形容しましょうか、コミュニケーション・チャンネルの相互性について示唆に富んだ記述だと思わせて頂きました。
さて、本書を読ませて頂いていてもそうですが、日頃の業務をしていて、最近、特に思うことがあります。それは、
これからのコミュニケーション研究は、単体の学問領域を超えた研究・考察が必要である、
ということです。
科学研究の性質上、変数を絞ってある効果を引き起こす要因を特定することの重要性は了解しています。だからこそ、言葉だけ、声だけ、表情だけ、動作だけ、触り方だけ、服装だけ、匂いだけという一つの変数が引き起こすコミュニケーション効果が研究されているのでしょう。
しかし、ある程度、特定の変数の効果が見えてきたらその知見をより使える生活知にするために、こうした純粋な基礎科学の枠を超えた複数の変数、複数の領域にまたがる学際的な研究が必要だと考えます。
なぜなら、コミュニケーションが行われる現実の場において、一つの変数のみが動いているわけではなく、様々な変数が相互にプラスにもマイナスにも影響し合いながら、うごめいているからです。日常の中に埋め込まれたコミュニケーション・シグナル(サイン含む)としての位置づけから研究が進められる必要があると考えます。
コミュニケーション・シグナルは、言語と非言語とに分かれます。非言語は、
①表情や身体動作、姿勢を扱うキネシクス
②外観と装飾
③音調
④接触
⑤時間と空間
の5種類に分かれます。私たちは、日常の中でこうした非言語を、言語に乗せながら、意識・無意識的に利用しながら他者とコミュニケーションを行います。
こうした要素の相互関係をどのように理解し、現実のコミュニケーションに活用できる知にしたらよいか、私が日々考え続けている問いなのです。
清水建二
参考文献
8割の人は自分の声が嫌い 心に届く声、伝わる声 (角川SSC新書)
- 作者: 山崎広子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川マガジンズ
- 発売日: 2014/11/10
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (4件) を見る
追記:
こちらも読ませて頂きました。内容はほぼ同じです。先の書籍を読んだ後の復習に良いかも知れません。ラジオ講座の教科書のようです。