微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

化粧された笑顔から受けとる印象

 

化粧された顔が他者にどんな印象を与えるかに関する研究は多数あり、科学実験の結果を持ち出すまでもなく、化粧顔は他者に好印象を与えることがわかっています。

 

印象研究の中でも、ズレに関する研究は興味深いです。化粧顔に対する自分の好みと他者の好みとの間にズレがあることや同性・異性の好みの間にズレがあることがわかっています。自己肯定感を高めるための化粧(=自分が納得することを重要視)なのか他者に魅せるための化粧(=他者が納得すれことを重要視)なのか、その両方の割合がどの程度交錯するかで、用途に応じて推奨される化粧という科学知見をもとにしたアドバイスが可能になるのかも知れません。

 

さてそんな化粧の印象研究の大部分は「化粧が施された真顔」を研究素材にしているのですが、「化粧をした状態に表情が加わるとどんな印象を他者に与えるか?」という「化粧が施された表情」の研究もわずかばかりですがあります。

 

化粧をしている真顔、化粧をしている笑顔、化粧をしていない真顔、化粧をしていない笑顔の女性の写真を用意し、それぞれの印象を実験参加者の男女に評価してもらいます。印象評価の結果、次のことがわかりました(表情に関係する結果のみを抜粋)。➡で清水の感想を書きます。

 

・化粧ありの顔は、美的魅力・性的魅力・健康的魅力を高める。

➡直感的に理解できる結果ですね。

 

・男性は、化粧をしている笑顔に最も性的魅力を感じる傾向にあるが、女性は、化粧をしている真顔に最も性的魅力を感じる傾向にある。

➡男女の間にある意外なズレです。男性はチャーミング、女性はビューティーというものに性的魅力を見出しているのかも知れません。

 

・笑顔自体は対人的魅力を高めるが、女性は、男性に比べ、化粧をしている笑顔に対して対人的魅力を高く感じない傾向にある。

➡この研究の筆者によれば、化粧をしている笑顔は異性への「媚び」という印象を判定者の女性に与えたのではないかとしています。確かに、実験素材に使われた女性の写真は、美しい女性に見えるので、よけいにそう映ったのかも知れません。「媚び」を売る表情を強化した写真や満面の喜び笑顔写真を判断素材に加えたら結果がもっとハッキリすると思います。

 

「化粧が施された表情」に対する印象研究は極わずかです。表情が加わることで印象が変わることを考えると、まだまだ探索すべきことやその応用事例は沢山ありそうです。今後の発展に期待したい分野です。

 

 

清水建二

参考文献

川名好裕 2012 化粧と笑顔による魅力変化 立正大学心理学研究年報, 3, 19-32.