今日のテーマは、食と表情です。
食を味わっているときの表情というものが研究されています。
家族、友人、恋人、同僚、上司や部下、はたまた接待相手の食事中の表情を観察したことはありますか?
味を感じている人、味わう人はどんな表情をしているのでしょうか?
結論から書きますと、基本味と言われる甘味・酸味・塩味・苦味・うま味、どんな味にも関わらず、味わっている人は「唇がプレスされる」「口角が引き下げられる」「口が開かれる」という動きをすることがわかっています。無味の水を味わっている人にも、こうした表情が観察されることがわかっています。
こうした表情の有無を観ることで、味に対する向き合い方がわかりますよね。例えば目の前の相手が、こうした動きを見せれば味、すなわち食を楽しみたいことがわかります。そんな相手には会話中でもちょっと会話を止めて、味わう時間を割くという気遣いも大切かも知れません。
より具体的な味と表情との関係についてもわかっています。甘味を感じると「口角が引き上げられる」、酸味・塩味・苦味を感じると「眉が中央に引き寄せられる」という動きが生じることがわかっています。
甘味はおそらく、進化心理学的に安全な食物であると私たちの遺伝子が知っているため、幸福に関連する表情筋が動くんだと思います。酸味・塩味・苦味に関しては、ひょっとしたら有毒かも知れないため、よく味わい、安全か否かを確かめているのではないかと思います(酸味と苦味に関しては「鼻にしわが寄せられる」という嫌悪に関連する動きも観察されています)。
実用的な応用例を考えると、酸味・塩味・苦味に関しては「眉が中央に引き寄せられる」動きが生じたら、そのあとにどんな表情になるかよく観察し、次のアクションを考えたら良いでしょう。もちろん嫌悪の微表情が表れたら、やることはOKですね。さりげなく、違う料理をススメましょう。
ところで、目の前の相手の顔に味わう表情筋の動きがなく、最小限に咀嚼された後すぐに食物が飲み込まれたとしたらどう解釈したらよいのでしょうか?それは、きっとみなさんとの会話を最大限に楽しみたいのか、嫌いなモノを食べているかのどちらかでしょう。
清水建二
参考文献
Wendin, K.; Allesen-Holm, B.H.; Bredie, W.L.P. (2011). Do facial reactions add new dimensions to measuring sensory responses to basic tastes? Food Quality and Preference, doi:10.1016/j.foodqual.2011.01.002