微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

旅行者と非旅行者をどう見分けるか?-問題編

 

空港で行われる保安検査において、普通の旅行者と非旅行者(不法入国者やテロリストなどの犯罪者)とを見分けるために様々な手法が各国、各空港で実施されています。

 

代表的なものに微表情やボディーランゲージなどの非言語観察を用いた検査法があります。しかし非言語観察法を保安検査に頼るべきかどうかについてはその妥当性に関して議論が割れています。

 

保安検査の非言語観察法とは、保安員が入国審査を待つ人々にランダムに近づき、もしくは不安そうな表情や動作をしている人に近づき、入国の目的など様々な質問をし、ウソと関連の深い非言語行動を取っているか否かを観察し、回答者をパスさせるか、さらなる検査のために個室に移すか(第二次スクリーニング)を判断する方法です。

 

この方法の中に微表情検知も取り入れられており、一定の効果を上げているのは確かなのですが、エラーが多すぎるという問題が指摘されています。例えば、恐怖の微表情やネガティブなボディーランゲージから犯罪者を検知できることもあるのですが、何でもない普通の旅行者まで第二次スクリーニングに移してしまうケースが多々起きているのです。

 

ある国に入国しようとする99%以上の人々は普通の旅行者や母国に帰国するだけなのですが、そのうちの何%かは様々な理由―待ち合わせ時間に間に合うか?トイレに行きたい!保安員に疑われているのが怖い!!ーで感情に起伏を生じさせてしまう人もいます。それを保安員は犯罪者やウソのサインと誤判断してしまうのです。

 

そうした誤判断を減らし、適確に旅行者(母国帰国者なども含む)と非旅行者を見分けるために、非言語観察法だけでなく、戦略的な質問法及び言語観察法を混ぜたスクリーニング法が検討されました。ある実験の結果、ある種の混合手法は非言語観察法のみよりも正確な判断が出来ることがわかりました。

 

この混合手法とは?ということですが、その手法を紹介する前に、ぜひブログの読者の方に体感して頂きたいことがあります。

 

真実条件とウソ条件を設定しました。ご自身がその立場になったとしてちょっと想像してみて下さい。なおウソ条件をリアル犯罪者設定にすると話が…なので、変えます(それでも犯罪者なのですが…)。以下、ちょっと考えてみて下さい。

 

真実条件:飛行機を交通手段として利用した旅行の実際の体験を頭に描いて下さい。そして目的地の空港に着いたときのことを思い出して下さい。その記憶を頼りにこれから入国審査を受けて頂きます。

 

ウソ条件:あなたはフードファイターです。どの国の大食い選手権に出場しても必ず優勝してしまうため、あなたは全世界の大食い選手権に出入り禁止となっています。しかし、大食いへの情熱を止めることが出来ずに、ついに整形手術までして、新しい身分と偽造パスポートを手に、アメリカのロサンゼルスで開催される大食い選手権に出場することにしました。ウソの身分を設定し、単なる旅行者として振る舞う準備をして下さい。入国審査やその前の段階で何が起きるかわかりません。ウソの身分と旅行者としての振る舞いを出来るだけリアルに設定して下さい。さてアメリカに降り立ったあなたは、これから入国審査を受けて頂きます。

 

真実条件とウソ条件を頭に描いて下さい。次回のブログにおいて保安員のスクリーニング検査を受けて頂きます。保安員の質問に答えて頂きます。特にウソ条件のとき、どれだけその質問に答えられるか、答えられないかが、体感して頂きたいことになります。それぞれの条件においてどんな違いが生じるか、それぞれの条件をクリアに描けば描くほど実感して頂けると思います。それでは次回お楽しみに。

 

 

清水建二