微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

プラットホームのボディー・ランゲージー鉄道自殺編②

 

 鉄道自殺の意図を持っている人を見た目から判断することはできるのでしょうか?

 

これまでの調査報告から鉄道自殺の意図を持つ人の異常な行動が目撃されており、注意深く観察していれば、未然に自殺を食い止めることができるかもしれない、というのが一応の解答です。

 

それでは鉄道自殺の意図を持つ人々というのは、プラットホームでどのような行動をするのでしょうか?

 

鉄道自殺者が自殺の直前にとる特定の行動が、様々な研究から報告されています(Lukaschekら, 2011; O'Donnellら, 1996; Clarke & Poyner, 1994; Gaylord & Lester, 1994)。主な行動を挙げると以下の通りとなります。

 

・バックやカバン、IDカードなどの自分の持ち物を落とすか、置く。

・靴を脱ぐ。

・アイコンタクトを避ける。

・不審なしぐさ、異常な行動をする。

・不審なコミュニケーションをする。

・目的なくふらつく。

・顔を覆う。

 

それでは上記の行動・様態はどのくらいの頻度で観察されるのでしょうか。ドイツで発生した202件の鉄道自殺を分析した調査によれば(Lukaschekら, 2011)、鉄道自殺者が行う直前行動・様態のうち、所有物を落とす・置く、アイコンタクトを避ける、不審なしぐさをする、がよく観察される事象であることがわかっています(その他の行動も含め、図1を参照して下さい)。

 

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出典:Lukaschekら, 2011を参考に筆者作成。

 

他にも自殺者の様態としては、鉄道自殺者は、普段持ち歩かないようなフレーム入りの家族の写真を持っていたり、自殺者にとって特別な物を持っていたりすることが報告されています。また服装が、全身真っ黒であったり、極端に明るい色であったりし、普通の服装ではないこともあることが報告されています。また自殺者は自殺をする前に、自殺方法までは言わないものの、周囲に自殺意図をほのめかすということも報告されています。ある研究ではロンドンの地下鉄において自殺未遂をした100人のうち15人が自殺実行の24時間以内に自殺意図を周囲に述べていたことがわかっています(Cocks, 1987)。日本でも鉄道自殺を行う直前に、自殺願望者がその意図をインスタントメッセージやインターネットの掲示板に表明するケースが多々あることが報道などで報告されています。

 

次回のブログでは、鉄道自殺者の病歴、心理、表情について扱いたいと思います。

 

追伸:

今朝、ニュースを見ていたら全国で「自殺が多発している駅」ランキングというものがありました。参考にどうぞ。

 

zasshi.news.yahoo.co.jp

 

清水建二

参考文献

  1. Dinkel, J. Baumert, N. Erazo, N., K.H. Ladwig, “Jumping, lying, wandering: Analysis of suicidal behavior patterns in 1,004 suicidal acts on the German railway network”, Journal of Psychiatric Research, 45, pp.121-125, 2011.

Clarke, R., & Poyner, B. (1994). Preventing suicide on the London underground. Social Science & Medicine, 38(3), 443-446.

Cocks RA. Study of 100 patients injured by London underground trains 1981-6. BMJ.

1987;295:1527–1529.

F.G. Guggenheim, A.D. Weisman, A. D., “Suicide in the subway. Publicly witnessed attempts of 50 cases”, Journal of Nervous and Mental Disease, 155, pp.404-409, 1972.

Gaylord, M., & Lester, D. (1994). Suicide in the Hong Kong subway. Social Science & Medicine, 38(3), 427-430.

Lukaschek, K., Baumert, J., & Ladwig, K. H. (2011). Behaviour patterns preceding a railway suicide: Explorative study of German federal police officers' experiences. BMC Public Health, 4(11), 620.

O'Donnell, I., Farmer, R., & Catalan, J. (1996). Explaining suicide: The views of survivors of serious suicide attempts. British Journal of Psychiatry, 168(-), 780.

Rådbo, H., & Andersson, R. (2012). Patterns of suicide and other trespassing fatalities on state-owned railways in greater Stockholm; implications for prevention. International Journal of Environmental Research and Public Health, 9(772-780)

Ratnayake R, Links PS, Eynan R: Suicidal behaviour on subway systems: a review of the epidemiology. J Urban Health 2007, 84:766-781