微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

非言語コミュニケーションの影響ーホテルマン編

前回に引き続き、サービス業ネタをまた一つご紹介したいと思います。

 

サービス業に携わる方ならば、日々誰もが接客には気を使っていることと思われます。接客時に使用する言葉に気を遣うのは当然ではありますが、言葉で表すことの出来ない部分、つまり非言語情報をどのように伝えようと意識されているでしょうか。さらにその接客を受けたお客さんはその非言語情報をどのように受け取っているのでしょうか。

 

ホテル従業員の非言語行動のふるまい方が、お客さんのホテル滞在時の感情にどう影響するか、についてマレーシアのホテルでなされた調査をご紹介いたします。

 

マレーシアのあるホテルに滞在しているお客さん170名にアンケート用紙が配布されました。

質問内容は、ホテル従業員の非言語行動に関する好感度をそれぞれ評価する事項とホテルに対する感情的な評価する事項でした。

 

ホテル従業員の非言語行動に関する事項は、アイコンタクト、笑顔、身体接触、距離の取り方などの「身体に関する項目」、声のトーン、大きさ、話すスピードなどの「声に関する項目」、魅力度、髪型、服装の乱れなどの「見た目に関する項目」の3つの非言語行動に分類されていました。

 

ホテルに対する感情的な評価に関する事項は、「嬉しい」「楽しませてくれる」というポジティブな感情評価と、「不幸」「イライラさせる」「退屈」「失望」というネガティブな感情評価に分類されていました。


2種類の評価軸の関係性が調査されました。

 

調査の結果、

ホテル従業員の「身体に関する項目」「声に関する項目」「見た目に関する項目」3つ全ての非言語行動がお客さんのホテルに対するポジティブな感情的評価に影響を与えていることがわかりました。一方、ホテル従業員の「身体に関する項目」と「声に関する項目」の2つの非言語行動がお客さんのホテルに対するネガティブな感情的評価に影響を与えていることがわかりました。

 

この調査対象となったホテルが従業員の非言語的な振る舞いに対してどのような研修をしているか分かりませんが、お客さんはちゃんとそうしたところを感じとり、感情的な評価を下しているのだということがわかります。

 

人の感情が他者に伝染する(The emotional contagion theory)という現象は科学的に実証されており、今回のケースの帰結を説明してくれます。

 

人に好印象を与える、人に共感を与える、人にその気になってもらう…等々に関する非言語行動の科学は、日本のサービス業界の研修メニューにどれだけ取り入れられ、どれだけ現場で実施されているのでしょうか。

 

人を動かす非言語行動は科学です。人の心を動かすのは、いわゆるサービス提供者による「おもてなしの心」「おもいやりの心」だとは思います。しかし、それがいつでも誰でもができるわけではないと思います。またその心を行動まで最大限に高めてくれる方法があるのです。それが科学だと私は信じています。

 

 

清水建二

参考文献

Shirley Kueh, Dr. Awangku Hassanal Bahar Pengiran Bagul. The Effects of Nonverbal Communication of Hotel Employees upon Emotional Responses of Hotel Guests IRACST- International Journal of Research in Management & Technology (IJRMT), ISSN: 2249-9563 Vol. 3, No.4, August 2013