前回の続きです。
就職面接にて
面接官:「なるほど。あなたは部活のリーダーだったのですね。リーダーとして苦労した点は何ですか?」
応募者:「(一瞬、目線を下げて)…はい。」
応募者のこの動きは何を意味するのでしょうか?
目線の動きと共に頭が下を向けば、恥感情か罪悪感でしょう。
恥感情ならば、リーダーをしていた時に、何か恥ずかしい体験があったのかも知れません。
罪悪感ならば、何かウソをついている、でっち上げようとしているのかも知れません。
それでは、頭の動きが伴わず、目線だけが下がったとしたらどうでしょうか?
それはただ単に解答を考えている、記憶をたどっているだけの可能性が考えられます。
ある研究が(Mccarthy, Lee, Itakura, & Muir, 2006)、何か考え事をしているとき、カナダ人及びトリニダード人は目線を上に向ける傾向にあり、日本人は目線を下に向ける傾向があることを発見しました。さらに日本人は解答をあらかじめ知っている質問に対して答えるときも、相手をしっかり見ず視線を外すことを見出しました。
この視線の違いは、表情のコントロール同様、文化的な表示規則ゆえではないかと考えられています。欧米圏では、視線を上に上げることは、考えていることを示すサインであり、視線を下げることは、知識の無さ、自信のなさを示すことを意味し、日本では相手をじっと見るのは失礼であり、視線を下げることは相手に対する敬意を意味すると考えられています。
この研究から学べることは、質問の直後に相手の視線が下がったとしても、相手がウソをついているのではないかと疑うのは危険だと言うことです。
視線にも文化があるのですね。
そういえば、アラブの人の視線は熱いですよね。
こっち見すぎ!と思わずツッコミたくなります、日本人としては。
清水建二
参考文献
McCarthy A, Lee K, Itakura S, Muir DW (2006) Cultural display rules drive eye gaze during thinking. J Cross Cult Psychol 37: 717–722.