前回のブログで、私たちは「悲しいから泣く」だけでなく「泣くから悲しい」という現象があることをご紹介いたしました。面白いことに、類似した現象が身体の姿勢についても言えるようです。
※動画で登場する4つの姿勢は、下記に紹介している実験で使用されたリーダー、フォロワー姿勢とはことなりますが、イメージとして最適でしたのでご紹介しております。4つの姿勢のうち、最初と3番目のものがリーダー姿勢で、2番目がフォロワー姿勢です。4番目の姿勢は、足はリーダー的で手はフォロワー的です。身体が相手に対して正面を向いていないとき、この姿勢はフォロワー姿勢となります。
決定権を持つ人々(=「リーダー」と呼ぶことにします)は、知らず知らずのうちに自己の力、影響力を姿勢によって周囲に伝えています。通常、集団の中で力を持っている人は、手を腰においたり、足を大きく開いたりし、自己の周りにある空間を大きく占める姿勢をします。それに続く部下の方たち(=「フォロワー」と呼びます)は、リーダーとは逆の姿勢、つまり空間を占めない姿勢をします。
自己の持つ力、影響力の程度がそれぞれに異なる姿勢をとらせているのです。しかし興味深いことに、逆の方向性もあるということがわかりました。つまり、リーダーもしくはフォロワー姿勢を意図的にとることによって、リーダー、フォロワーそれぞれの特質が生まれるという現象です。
コロンビア大学とハーバード大学の研究チームの実験レポートよりご紹介いたします。実験参加者らは、空間を大きく占有する姿勢(=リーダー姿勢)を2分間とり続けます。そうすると参加者らのテスタステロン(支配力に関連するホルモン)レベルは上昇し、コルチゾール(ストレスホルモン)レベルは下降しました。また参加者らはリスクに対する耐性及び力がみなぎる感覚を感じたと評価しました。フォロワー特有の姿勢をとると、ホルモンレベル、参加者らの主観的評価は、逆のパターンを示しました。
つまり、単に姿勢を変えることによって、困難でストレスのかかる状況に立ち向かおうとする身体の精神、心理的システムが起動し、主観的には自信を感じるようになる、ということです。
将来リーダーを志す人にとっては日々リーダー姿勢をとることで、リーダー特性を身体に染み込ませることができるかも知れません。また面接、交渉、商談で緊張しがちな人にとっては、そうした場面に立ち会う前にリーダー姿勢をとってみるというのはいかがでしょうか?
清水建二
参考文献
Carney, D., Cuddy, A., & Yap, A. (2010). Power posing: Brief nonverbal displays affect neuroendocrine levels and risk tolerance. Psychological Science, 21(10), 1363-1368.