微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

ウソを見抜くにはどのように繰り返して質問すればよいのか?

 

本日は、久々にウソ検知ネタをご紹介しましょう。

 

警察の取調べ室に入ると、何度も何度も同じことを聞かれます。それは犯罪容疑者に限らず、事件の目撃者や捜査協力者を問いません。もちろん何度も同じ質問をするのは、証言の信憑性を判断したり、確かな記憶を確認するためです。

 

直感的に言えば、ウソつきは同じことを繰り返し話せば話すほど、証言の一貫性が崩れ、ウソが露呈してしまうのではないかと考えられます。だから、何度も同じことを質問するのです。

 

しかし、こんな意見もあります。

 

「ウソつきはウソをつき続けることで、ウソの記憶が固まり、ウソをつくのが上手くなる。」

 

確かにこうした現象を目にすることがあります。そうなると、同じ証言を繰り返し述べさせることが真偽を確かめる上で、逆効果になる可能性も出てきます。

 

それではどうしたらよいのか?

 

こうした問題を解決する質問法が開発されています。

同質問を繰り返す質問の形式を工夫することで、真偽判定が行いやすくなる科学的質問法があるのです。

 

その方法とは、最初の聞き取りのとき、回答者(容疑者・目撃者・協力者問わず)に調査事項を自由に述べてもらいます。つまり、オープン質問で、回答者に調査事項を質問します。

 

しばらく時間をおいて…

 

二回目の聞き取りのとき、回答者に出来事の時系列や証言された順番を変えて質問します。

 

例えば、最初の聞き取り時において、5つの出来事を聞き取ったとします。その出来事の時系列や証言内容を整理します。そして二回目の聞き取りでは、その出来事を逆順に聞く、もしくは時系列をバラバラにする、証言がなされた順をバラバラにして質問するという具合です。

 

そうすると何が起きるのか…

 

この質問法をすると、ウソつきは繰り返し同じ証言をし、証言の一貫性を保とうとします。しかし、真実を述べている者は、本当の記憶を再構築して答えることになるため、その過程において証言の一貫性が崩れることはあるものの、最初の証言に新たな情報を加えたり、最初の証言内容をより詳しく説明するようになるのです。

 

この手法は、異なる観点から刺激を受けることによって新たな想起が促されるという記憶の性質を利用した質問法です。

 

証言を繰り返しているだけなのか、記憶を再構築しているのか、ウソとホントを見分ける大切なポイントの一つです。

 

 

清水建二

参考文献

Haneen Deeb, Vrij Aldert, Hope Lorraine, Samantha Mann, Pär-Anders Granhag et al. Suspects' consistency in statements concerning two events when different question formats are used, Journal of Investigative Psychology and Offender Profiling, Volume Epub ahead of print, 2016

Shaw D. J., Vrij A., Leal S., Mann S., Hillman J., Granhag P. A., and Fisher R. P. (2014), ‘We'll Take It from Here’: The Effect of Changing Interviewers in Information Gathering Interviews, Appl. Cognit. Psychol., 28, pages 908–916.

清水建二が教える日常英語

 

本日から私、清水建二が教える日常英語コースがスタートします。

 

ん?なぜ、清水が英語を教えるのか?

清水は表情分析の専門家ではないのか?

 

と。

 

私が大学受験生のとき、衝撃的な発想を当時の英語の先生がお話しされたことを今でも鮮明に覚えています。

 

「みなさんにとって、『日常英語』とは何ですか?天気の英語ですか?映画・ショッピングの英語ですか?そうではないハズです。みなさんにとっての『日常英語』とは、それはとりもなおさず、学問の英語です。大学で学問するためには、英語で論文を読んで、英語で議論して、英語で論文を書く。そのために必要なのは、今、しっかりと受験英語を勉強することなのです。受験英語は学問の準備なのだから。受験英語が使えない、そんなバカな話はないのです。」

 

ガ~ン!!!

ガ~ン!!!!

ガ~ン!!!!!

 

という感じでした。

 

当時の私たちにとっての日常英語は、学問の英語、それは、つまり受験英語だったのです。いわゆる日常英語とは一番遠い存在だと思っていた受験英語が日常英語そのものだったのです。

 

日常英語=学問の英語=受験英語

 

という図式は、私の英語観を今日まで支え続けています。私の頭の中や毎日の出来事の大部分は、表情を始めとした非言語行動に関わる話題でいっぱいです。

 

現在は上記の図式が、

 

日常英語=仕事に関わる英語=非言語に関わる英語

 

となっています。

 

お医者さんなら、医学の英語

ホテルマンなら、ホテルに関する英語

営業マンなら、商品説明に関する英語

パイロットなら、航空に関する英語

映画評論家なら、映画評論に関する英語

表情分析官なら、表情分析に関わる英語

 

が日常英語なのです。

 

そう、だから、私が教える日常英語とは、表情分析の英語なのです。正式には「表情分析英文読解コース」と言います。

 

多くの英語の情報が日本語に翻訳されていますが、表情分析の世界は、まだまだ。表情について知りたいと思っても英語を読めなければ、良質な情報を得ることが難しいのが現状です。そこで、表情の分野を日常英語とする清水が教えさせて頂こうと思った次第です。

 

ちなみに清水の英語講師としての能力は???

大学院生のときに、TOEIC965点でした。

英語講師としては、満点必要ですかね?

英語コース開講を期に、私もTOEIC受験再開しようかな。

英語講師としてのキャリアは、大学受験予備校や塾で大学生の頃から教えていたので、10年以上です。

 

「表情分析英文読解コース」本日開講です。

受講生のみなさまとお会い出来るのを楽しみにしております。

 

 

清水建二

 

追伸:

ちなみに、日常英語は受験英語という素敵な発言をなされたのは、横山雅彦先生という方です。

受験参考書だけでなく、一般書や英語学習指南書も書かれていますのでご興味がある方は一読されることをオススメします。

 

最初に横山先生の本を読むなら、以下の3冊がオススメです。

英会話、日常英語という当たり前の概念をひっくり返してくれます。

個人的には、英会話を教える先生たちに読んで頂きたいですね。

発音とか文法とかももちろん大切だけど、英語の考え方の方が、もっと大切だよ、

と以下の書籍から私は学びました。

 

「超」入門!論理トレーニング (ちくま新書)

「超」入門!論理トレーニング (ちくま新書)

 
 
高校生のための論理思考トレーニング (ちくま新書)

高校生のための論理思考トレーニング (ちくま新書)

 
完全独学! 無敵の英語勉強法 (ちくまプリマー新書)

完全独学! 無敵の英語勉強法 (ちくまプリマー新書)

 

 

 

注意力テスト2

本日は皆さんに次のテストに挑戦して頂きたいと思います。

注意力テスト2です。

 

問題:次の動画を見て気づくことは何でしょう?

 

 

最初から「あること」を認識しているのと「あること」を認識していないのとでは大きな違いが生じることを本動画は教えてくれます。

 

微表情もしかりです。微表情があることを知り、表情筋と感情との連関を知ってれば、「見えない」世界も見えてくるのです。「見えない」感情・想い・意図が目の前を通り過ぎて行ってしまうのが、幸か不幸かはわかりませんが。

 

 

清水建二

『微表情を見抜く技術』を10倍活かす!②愛想笑いに込められたホンネー接客編②

 

本日は、先週の問題の解答・解説です。

まずは先週の問題を再録します。

 

問題:あなたが接客を担当し、先日ある装飾品を購入されたお客様が、その装飾品を持って来店され、一言。

 

 

 

どうやら装飾品に何か問題があるようです。

あなたならどのような対応をしますか?

 

  1. お客さまの感情は、「怒り」の可能性がある。クレーム対応がとれるように注意してお客様の話を聞こう。
  2. お客様の感情は、「嫌悪」の可能性がある。お客様に気に入らない点を聞いてみよう。
  3. お客様の感情は、「悲しみ」の可能性がある。お客様に修理・同じ商品の取り寄せを提案しよう。
  4. お客様の感情は、「恐怖」の可能性がある。お客様に安心して頂ける対応を考えよう。

 

それでは解答・解説です。

1秒~2秒の間、そして2秒~3秒の間に眉が一瞬下がるのがわかると思います。「眉が下がる」動きを細かく分けると、「眉が中央に引き寄せられながら引き下がる」という動きと「眉が下がる」という動きがあります。

 

f:id:micro-expressions:20161008001654g:plain

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

 

皆さんから見て左が「眉が中央に引き寄せられながら引き下がる」という動きで、怒り感情によって引き起こされる表情筋の動きです。右が「眉が下がる」という動きで、嫌悪感情によって引き起こされる表情筋の動きです。自身の顔で試してみると違いがより明確になると思います。眉だけに力を入れると、怒りの眉に、眉に力を入れずに鼻の周りにしわを寄せると、嫌悪の眉になります。

 

さて、本動画の「眉が下がる」動きは、1秒~2秒の動きが怒りの可能性が高く、2秒~3秒の動きが嫌悪の可能性が高いと考えられます。実務的な観点から言うと、鼻の周りのしわが明確に表れない限り、眉の動きのみから怒りと嫌悪とを見分けることは困難です。したがって、眉が下がる動きが観られたら、怒りか嫌悪か、どちらか、もしくはその混合だと考え対応するように心がけることをオススメします。したがって本問の正解は、aとbの2つということになります。

 

本問題の背景知識をおさらいしておきたい方は、『微表情を見抜く技術』のp.102~p.128を読んでみて下さい。

 

 

清水建二

参考文献

微表情を見抜く技術

微表情を見抜く技術

 

 

 

過剰な顔文字は人を遠ざける

 

そんなに関係性が深まっていないのに、グイグイ来る人につい距離をとってしまう、そんな経験ございませんでしょうか?同様にメールでも、関係性が浅い段階で顔文字を多用したメールを送って来る人に、心理的圧迫を感じることがあるかも知れません。

 

そんなメールの顔文字が与える心理的効果を調べた興味深い研究があります(伊東, 2016)。

 

実験の協力者らに、お昼に大学の友人を通して知り合いになった人から食事の誘いを受けた状況を想定してもらいます。そしてこんなメールをもらいます。

 

こんばんは、今日お話ししたCです。

さっきはありがとうございました。

よろしければ来週の同じ時間、一緒にご飯を食べませんか?

お返事待っています。

 

このメールに顔文字が無い場合、顔文字が少し使われた場合、顔文字が多用された場合、のそれぞれの条件で、このメールの送り手と対峙するとき、どのくらいの物理的な距離感を保ちたいか、ということが調査されました。

 

研究の結果、以下のことがわかりました。

①送り手が異性のとき、顔文字が多用される場合が他の場合に比べて、最も遠い距離が保たれた。

➡異性間において関係性が浅い段階での顔文字多様メールは、相手に不快感を与えるということです。

 

②送り手受け手が女子同士だと、顔文字が多用される場合でも顔文字が無い場合でも、距離感には違いがないが、顔文字が少し使われた場合にその他の場合に比べ、一番距離が近く保たれた。

➡普段から男性に比べ女性の方が顔文字を使う傾向にあり、また女性の方が近接的な空間を好む傾向にあることから、多様な顔文字にも異性間のときほどには不快感を抱かないのではないかと考えられています。

 

文字だけでは伝えにくい気持ちを顔文字を添えて、想いを伝える。顔文字にはそんな効果がありますが、ものは使いよう、ということですね。どの程度の顔文字の量が適当なのかは、現在形成されている関係性の距離感から判断する必要があるわけです。関係性の距離感が読めない人が、空気を読めない人と呼ばれる人でしょう。とはいえ、私たちが無意識に行っている関係性の距離感の取り方が、現時点で定式化されているわけではありません。無意識の空気を読む力をさらに見える化出来るように、鋭意、調査&研究していきます(*^-^*)←知らないことがわかる可能性に喜びを感じることを伝えるための顔文字

 

 

清水建二

参考文献

伊東昌子(2016) ”文末詞による心理的関係構築の調整:顔文字と間合い感覚(2) “, 日本認知科学会第33回大会発表論文集, p.542-547.

『微表情を見抜く技術』を10倍活かす!②愛想笑いに込められたホンネー接客編①

 

 私の自著、『顔色をうかがうは正解だった!0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』を読んで頂いた方々にさらに微表情検知力を高めて頂き、感情が彩る素晴らしきコミュニケーションライフを送って頂くために、書籍の内容に沿った問題演習や応用問題、補論をさせて頂こうと考えました。特に書籍ではイラストで紹介させて頂いた表情を、本ブログでは画像や動画を用いて、よりリアルな表情の特徴をつかんで頂ければと思います。

 

それでは、前置きはこのくらいにさせて頂いて…

 

本日は、愛想笑いに込められたホンネー接客編です。

 

問題:あなたが接客を担当し、先日ある装飾品を購入されたお客様が、その装飾品を持って来店され、一言。

 

 

どうやら装飾品に何か問題があるようです。

あなたならどのような対応をしますか?

 

  1. お客さまの感情は、「怒り」の可能性がある。クレーム対応がとれるように注意してお客様の話を聞こう。
  2. お客様の感情は、「嫌悪」の可能性がある。お客様に気に入らない点を聞いてみよう。
  3. お客様の感情は、「悲しみ」の可能性がある。お客様に修理・同じ商品の取り寄せを提案しよう。
  4. お客様の感情は、「恐怖」の可能性がある。お客様に安心して頂ける対応を考えよう。

 

答えは何でしょうか?

解答解説はまた来週いたします。

 

解答解説を読む前に本問題の背景知識をおさらいしておきたい方は、『微表情を見抜く技術』のp.102~p.128を読んでみて下さい。

 

 

清水建二

参考文献

微表情を見抜く技術

微表情を見抜く技術

 

 

 

「くすぐったい」は幸福か苦痛か?

 

みなさん、くすぐられていますか?

 

…。

 

まぁ、大人になってくすぐられることはあまりないと思います。しかし、子どものころ誰もが身近な人にくるぐられたり、くすぐったりした経験があると思います。

 

ところで、この「くすぐられる」という経験は、幸福ですか、苦痛ですか?

 

経験的に言えば、笑顔でじゃれ合っているイメージがあるので、幸福のような気がします。しかし、くすぐられる行為が苦痛だと感じる人もいるようで、話はそんなに単純ではありません。

 

科学はこのくすぐられるという行為にどのような解答を用意しているのでしょうか?

 

興味深いことにくすぐられている人間の表情を分析すると、幸福と嫌悪と苦痛が混在した表情になることがわかっています。

 

具体的に記述すると、くすぐられている人の顔とは…

 

「口角が引き上がる」+「頬が引き上がる」+「まぶたに力が込められる」+「鼻にしわが寄る」+「上唇が引き上げられる」+「口角が水平に引っ張られる」+「唇が上下からプレスされる」

 

というものです。

 

実はこの表情に対する「なぜ」は、まだよくわかっていないのです。

 

私の解釈は次の通りです。

 

くすぐられている状態は、他人にデリケートな部分に触れられているため不快感を抱く。しかし、それが遊びであることを知っているから楽しい状態になる。

 

そんなふうに考えました。

 

くすぐる、動物で言えば、じゃれ合うという行為は、狩りの代替行為です。狩りはデリケートな部分を攻撃します。デリケートな部分は攻撃に弱いからです。したがって、デリケートな部分に触れられることに本質的な不快を感じます。しかし、遊びであることを知っているから笑顔になるのではないかと思うのです。

 

突然、見ず知らずの他人をくすぐってみたら(=つまり、遊びかどうかわからない状況)、私の説の妥当性を考慮する材料になるかも知れませんが、そんなことをする勇気はないので止めておきます。

 

 

清水建二

参考文献

Harris, C. R., & Alvarado, N. (2005). Facial expressions, smile types, and self-report during humour, tickle, and pain. Cognition and Emotion, 19(5), 655-669