微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

過剰な顔文字は人を遠ざける

 

そんなに関係性が深まっていないのに、グイグイ来る人につい距離をとってしまう、そんな経験ございませんでしょうか?同様にメールでも、関係性が浅い段階で顔文字を多用したメールを送って来る人に、心理的圧迫を感じることがあるかも知れません。

 

そんなメールの顔文字が与える心理的効果を調べた興味深い研究があります(伊東, 2016)。

 

実験の協力者らに、お昼に大学の友人を通して知り合いになった人から食事の誘いを受けた状況を想定してもらいます。そしてこんなメールをもらいます。

 

こんばんは、今日お話ししたCです。

さっきはありがとうございました。

よろしければ来週の同じ時間、一緒にご飯を食べませんか?

お返事待っています。

 

このメールに顔文字が無い場合、顔文字が少し使われた場合、顔文字が多用された場合、のそれぞれの条件で、このメールの送り手と対峙するとき、どのくらいの物理的な距離感を保ちたいか、ということが調査されました。

 

研究の結果、以下のことがわかりました。

①送り手が異性のとき、顔文字が多用される場合が他の場合に比べて、最も遠い距離が保たれた。

➡異性間において関係性が浅い段階での顔文字多様メールは、相手に不快感を与えるということです。

 

②送り手受け手が女子同士だと、顔文字が多用される場合でも顔文字が無い場合でも、距離感には違いがないが、顔文字が少し使われた場合にその他の場合に比べ、一番距離が近く保たれた。

➡普段から男性に比べ女性の方が顔文字を使う傾向にあり、また女性の方が近接的な空間を好む傾向にあることから、多様な顔文字にも異性間のときほどには不快感を抱かないのではないかと考えられています。

 

文字だけでは伝えにくい気持ちを顔文字を添えて、想いを伝える。顔文字にはそんな効果がありますが、ものは使いよう、ということですね。どの程度の顔文字の量が適当なのかは、現在形成されている関係性の距離感から判断する必要があるわけです。関係性の距離感が読めない人が、空気を読めない人と呼ばれる人でしょう。とはいえ、私たちが無意識に行っている関係性の距離感の取り方が、現時点で定式化されているわけではありません。無意識の空気を読む力をさらに見える化出来るように、鋭意、調査&研究していきます(*^-^*)←知らないことがわかる可能性に喜びを感じることを伝えるための顔文字

 

 

清水建二

参考文献

伊東昌子(2016) ”文末詞による心理的関係構築の調整:顔文字と間合い感覚(2) “, 日本認知科学会第33回大会発表論文集, p.542-547.