微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

顔文字の本気度を数値化する

 

 携帯メールの顔文字や絵文字が、テキストメッセージだけでは伝わりにくい気持ちを表すために存在していることは言うまでもありません。しかし、その気持ちの本気度を表現するには、まだまだ対面コミュニケーションに劣るところが多分にあります。

 

顔文字の本気度を数値化する

 

そんなことが出来たら、携帯メール(電子メール含む)が対面コミュニケーションに一歩や二歩も三歩も近づくのではないかと思います。

 

顔文字の本気度を数値化する利点は、特に、謝罪場面のメールで役に立つのではないかと思います。

 

女子短大生を対象として、メールで友人に謝罪する際に顔文字がどのような効果をもたらすかを調査した研究があります(荒木;鈴木, 2004)。調査の結果わかったことは、

 

①謝罪メールの送り手が文脈に適切ではない顔文字を使うと、メールの受け手の怒りは増大する。

➡「ごめんなさい。(^_^)」のような謝罪は火に油を注ぐということです。

 

②謝罪メールの送り手が謝罪メールを「仲の良い」友人に送るとき、謝罪顔の顔文字があった方がない方よりも、その友人に反省していると思われる傾向にある。

➡「ごめんなさい。m(_ _)m」のようなメールは、謝罪をしなくてはいけない場面になったとしても、謝罪相手と仲が良い状態が続いていれば、謝罪顔は効果的ということです。

 

③謝罪メールの送り手が謝罪メールを「仲の悪くなった」友人に送るとき、謝罪顔の顔文字を使っても使わなくても、その友人に反省していると思われる程度に違いはない。

➡仲が悪くなってしまったら、謝罪顔があろうがなかろうが、関係ない、ということです。

 

 特に③のケースでは、仲が冷え切ってしまうほど険悪な関係になってしまった場合、許してもらうには本心からの謝罪が必要であることは言うまでもありません。③の場合、顔文字では本心が伝わらないからこそ謝罪効果がない、と考えることも出来ます(単純にメールでの謝罪がお手軽で、「反省の意図なし」と思われている可能性もありますが)。一番良いのは、直接会って謝罪するという方法かもしれませんが、様々な事情で会えない・会ってくれないこともあると思います。

 

そんなとき、どうしたら心からの謝罪の気持ちを伝えることができるでしょうか?

 

メールで本心を伝えるということに限定して言えば、謝罪文を打っている最中の表情を携帯に搭載されたカメラが分析し、謝罪度が数値化され、それが顔文字化され謝罪メールの文面に沿えられる、そんなことが出来れば、謝罪の本気度を伝えることが出来るのではないかと思われます。

 

相手は怒り心頭で謝罪の気持ちを会って伝えたい、しかし、会ってくれない。そんなとき謝罪の本気度をメールで伝えることが出来れば、相手に直接伝えられない想いを伝えることが出来るかも知れない。そんなふうに思います。

 

ところで、そんなこと本当にできるの?と思われるかも知れません。

 

答えとしては、技術的には可能、です。

 

「本心からの謝罪の気持ちがあるときのみ動く表情筋」というものがあります。その表情筋の動きの「あり・なし」表情筋の「強度」から謝罪の本気度を数値化できる可能性があります。

 

この表情筋の動きを、表情を認識するカメラに読みとらせ、テキストメッセージに添付させる仕組みです。

 

本心を伝えてくれる携帯カメラ?

 

本心を暴露してしまう携帯カメラ?

 

人によって、状況によって、このカメラを形容する言葉は変わってくるでしょう。

 

来る未来、どんな電子メールのコミュニケーションが生まれるのでしょうか?

 

 

清水建二

参考文献

荒川歩・鈴木直人 2004 謝罪文に付与された顔文字が受け手の感情に与える影響 対人社会心理学研究, 4, P.135-P.140.