微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

感情と心理:「感情は一瞬で把握できても、心理の決めつけは慎重に」その2

 

前回の続きです。

 

感情の出どころ、相手の心を読みとるにはどうしたらよいのでしょうか?

 

結論から申し上げますと、人の心を読む確実な方法はありません。しかし相手の心をその人の表情から推察する方法ならあります。

 

私たちは他者とコミュニケーションをするとき、言葉だけでなく表情を始めとした様々なボディー・ランゲージを器用に、しかもごく自然に使います。そしてコミュニケーションが円滑に進んでいるときは、言葉とボディー・ランゲージは調和し、一貫性を保ちます。

 

この言葉とボディー・ランゲージの間にある「一貫性」を利用することで、相手の本心を推察することが出来るのです。代表的なテクニックを一つご紹介したいと思います。キーワードは「タイミング」と「ズレ」です。

 

言葉と表情の「タイミング」と「ズレ」に注意して下さい。言葉の前後に表れる表情がその言葉と関連した感情を意味します。話し手が、言葉を発する前にある表情を見せるとします。通常、その表情が話し手の本心に関連する感情です。感情の方が思考≒言葉の前に反応し、顔に出るのです。一方、聞き手が、話し手の発言を耳にしている最中、もしくはその後にある表情を見せるとします。この場合、この表情が聞き手の本心に関連する感情です。

また肯定的な言葉と否定的な表情が同時に表れたとき、信頼すべきは表情の方です(逆またしかり)。表情、特に微表情は意図的にコントロール出来ないため、通常、表情の方が本心を示します。言葉と表情がズレているとき、その言葉を文字通り受け取るのは注意です、その言葉の逆が真実である可能性があります。

 

・話し手の本心推察の実例

 

某アイドルの握手会の会場にて、

ファンの方:「応援しています!頑張って下さい!」

某アイドル:(握手をしながら)「頑張ります。」

という一コマがありました。

 

このとき、アイドルの彼女の表情を分析すると、彼女が「頑張ります。」の「頑」という言葉を発するときに「嫌悪」の微表情が出ていました。ファンの方からの「頑張って!」というエールではなく、自らの「頑張る」と言う発言の前に「嫌悪」の微表情が出ているところがポイントです。

 

発言のタイミングから某アイドルの彼女は、ファンの方の発言に対してではなく、自己の発言に嫌悪を抱いていると解釈することが出来ます。ファンの声援に有難さを感じるものの、すでに頑張っている自分に対し、(まだまだこれからも)頑張ります、と言わざるをえない自分の心苦しさに自己嫌悪を抱いている、そんな彼女の心理が推察されます。

 

・聞き手の本心推察の実例

 

私がカフェでAさんという方と談笑をしていたときのことです。

私たちは昔話に盛り上がり、私はAさんの元同僚であったBさんの才能をほめたたえました。

 

私:「Bさんは、凄かったよね!彼のコミュニケーションスキルというか、人の懐に入るっていう能力っていうか、凄いと思ってたけど…。そうそう、あとCさん!彼こそ~」

 

Aさんは、私が「Bさん」と名前を出した瞬間に「嫌悪」の微表情を浮かべました。Bさんの能力云々ではなく、Bさん自身に対してAさんは嫌悪感を抱いていると私はそのとき解釈し、すぐに話題を変えました。

 

後に人づてで分かったことなのですが、AさんはBさんと付き合っていて、Bさんと酷い別れ方をしていたようなのです。だからBさんの名前を聞いただけで「嫌悪」が出たのですね。知らなかったとはいえ、Aさんには悪いことをしてしまいました。

 

 

したがいまして、言葉の前後に表れる表情を観ることで感情の流出ポイントをしぼり込み、発せられた言葉と表情の関連から相手の本心を推察することが出来るのですね。

 

清水建二