微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

嘘発見器のウソ・ホント

 

嘘発見器

 

一度ならずともこの機器について耳にしたことがあると思います。身体にいくつかの器具が取り付けられ、すべての質問に「いいえ」で答え、ウソをついていたら「いいえ」と回答した瞬間に嘘発見器が反応する、という機器です。

 

よく刑事ドラマやバラエティー番組などで見られる光景ですが、これは正確な描写ではありません。そこで本日は嘘発見器のウソ・ホントをご紹介したいと思います。

 

嘘発見器の名称は、正しくはポリグラフ検査機と言います。大切なこととして、このポリグラフ検査器が出来ることは、ウソを直接発見することではなく記憶の有無を発見するということです。どのようにポリグラフ検査機が用いられているか順を追ってみてみましょう。

 

例えば、会社の金庫が工具を使って壊され、現金が盗まれた事件があったとします。「どこから」「どうやって」「いくら」「いつ」盗まれたかは犯人と警察、それにポリグラフ検査を実施する科学捜査研究所の技師しかわからないとします。ポリグラフを実施する技師は次のような質問をします。例えば、

 

現金は…

①財布から盗まれましたと思いますか。

②机の中から盗まれたと思いますか。

③ロッカーの中から盗まれたと思いますか。

④金庫から盗まれたと思いますか。

⑤駐車場の車の中から盗まれたと思いますか。

 

同じ要領で、犯行に使われた道具について、盗まれた現金の額について、犯行時間について、質問していきます。このように犯人にしか知り得ない質問を何問もしていき、全て「いいえ」と容疑者に答えてもらいます。

 

もし質問番号④の問いに対して容疑者が「いいえ」と答えたとき、ポリグラフが反応し、また、さらに続く質問に対しても犯人しか知り得ない「質問番号」に容疑者が何度も反応したら、その容疑者は犯人しか知り得ない犯行に関する「記憶」を持っているということになります。偶然では考えられないレベルでこうした反応が見られるとき、容疑者が事件に関与している可能性が高いと判断します。

 

ポリグラフ検査機はこのように犯行記憶に関する生体反応をキャッチしているのです。ですので、ちなみに容疑者が「はい」と答えようが、「いいえ」と答えようが、何も答えないでいようが、犯行時の記憶があれば、生体反応は出てきます。

 

そんなポリグラフ検査機ですが、その精度はどうなのでしょうか。

ポリグラフ検査機を用いたウソ検知率は…

 

ウソをウソと正しく識別出来た割合は、76%

潔白を潔白と正しく識別出来た割合は、94%

 

です。このウソ検知率はかなり高いです。質問事項を増やせば増やすほど検知率を向上させることが出来ることがわかっています。

 

※脳波を計測する機械(EEG-P300)を使ってこの質問法をするとウソ検知率は80~90%に向上することが様々な研究からわかっています。

 

 

清水建二

参考文献

Elaad, E., Ginton,A., & Jungman, N. (1992). Detection measures in real-life criminal guilty knowledge tests. Journal of Applied Psychology, 77, 757-767.