微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

第1回『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』制作裏話

 2022年2月9日に中央公論新社より清水建二の新刊が発売されます。タイトルは、『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』です。

 

 本書の制作ストーリーを何回かに渡り書いていきたいと思います。本書にかけた想い、執筆中に考えていたこと、本書を購入しようか迷われている方への後押しになる何か!あるいは、本書を購入された方がさらに楽しくなる情報、また、私の周りには「書籍を出版したい」という方が何名かいらっしゃるので、本を書くということに興味があるそんな方へのヒント等を書きたいと思います。

 

 本書の企画を提案して下さったのは、中央公論新社書籍編集局のTさん。2021年3月初旬のことでした。Tさんとは、2016年に雑誌の取材でご一緒させて頂いたのが縁でした。その取材で微表情や微動作についてお話させて頂いたのですが、それを覚えていて下さり、その魅力、面白さなどを一冊の本にまとめませんか、という提案でした。前作の単著を発表してから5年。「そろそろ新作を書きたいな」と思っていたタイミングであり、また、数多ある取材経験の中でも私への取材を覚えていて下さっていたことに感動し、二つ返事でOK。是非是非と。

 

 パートナーの熱意って凄く重要です。私だけが熱くても続きませんもの。

 

 対面やメールで何度か打ち合わせをし、Tさんが用意してくれた企画のたたき台に私のアイディアを追加し、適宜、修正を入れたりしました。とはいえ、Tさんは、私の過去の書籍や連載記事等から私の専門分野をよくご存じでしたので、数回のやり取りでスムーズに企画書が出来ました。

 

 4月、無事に企画通過のお知らせ。いよいよ、執筆開始です。私自身、ネタは沢山あり、執筆自体は好きな作業ではあるのですが、それでも、1冊の本を書くという営みは、精神・肉体を疲弊させます。ですので、私は、1ヶ月中に1章分の内容を、気合を入れて一気に書き上げます。書き上げた後で、推敲し、Tさんに送ります。

 

 もう少し詳しく書きますと、2-3週間前後で1章分を書き上げます。ここが最も緊張度の高い期間。その後1週間前後で推敲。ここはやや緊張。そして提出。2-3日後にTさんから軽いコメント(ガチなフィードバックは、一旦全体を書きあげてから、という私のスタイルに合わせて頂きました)。この2-3日が弛緩できる期間。この緊張と弛緩の繰り返しを執筆期間中続けます。特に弛緩期間が重要。本のことを忘れて、違うことを考えられる期間。リフレッシュし、英気を養える期間となります。

 

 今回は、新書なので文字数としては、8万~12万字執筆する必要があります。私は、必要文字数よりも沢山書いて、削っていくスタイルをとっています。というか、これが普通なのかも知れません。本書では、12万字くらい書いて、いくらか内容を削除し、最終的には10万字の分量となっています。

 

 本書は5章ありますので、単純計算で12万字を5で割り、24,000字を執筆する度にTさんに原稿を送ります。5月から順々に1章書き上げては送り、5ヶ月後の9月には大方の内容を執筆し終えました。

 

 時々、書くネタに困らない?と聞かれることがありますが、4冊単著を書いた現在時点としては、あまりそう感じたことはないです。ただそれは、知識や体験を意識的に捉え、試行錯誤し、それらのプロセスを文字化する習慣があるからだと思います。常に論文や書籍は読んでいますし、実験も時事ネタ分析も日々行っております。また、そこから得られた知見を日常・ビジネスで活かしたり、逆に日常・ビジネス経験を実験に投影したりしています。ですので、沢山書きたいこと、書籍に残したいことがあります。むしろ何を盛り込まないか、書いた内容のどこを削るかの方が難しく感じます。

 

 さてさて、ここから編集Tさんの提案を受け、内容の修正、削除、追記、組み換えのはじまりです。これがまた凄いのです。自分ではなかなか良い文章だと思っていても、プロの編集さんの手にかかると、見違えるほど読みやすい文章に変わるのです。この続きはまた今度。

 

 そういえば、書籍の内容について全く触れていませんでした。私の書籍と言いますか、仕事への哲学は、いつも同じです。科学知見と経験則のハイブリッドです。説明知にとどまる科学じゃ意味がない、生活知にとどまる経験側じゃ意味がない。生活知になる科学と説明知になる経験則、そして、その越境。使える科学と使い時がわかる経験側。

 

 本書は、科学実験から得られたウソと心理の推測法を、現実の観察・分析・インタビューで使い、現場の声をとり入れ、使い勝手がよい手法は何か、そうでない手法は何か、科学知見を経験でろ過させ、洗練させています。

 

 本書には、英米の研究者による論文か専門書以外では目にしないめずらしいウソと心理の推測法が、使える様式で掲載されています。一見よくある手法も掲載しています。しかし、どう使うと最も効果的なのか、効果的ではなくなってしまうのか、という観点から詳しく説明しています。本書は、よくあるウソの見抜き方本ではありません。そう自負しております。人の心の蘊奥に真摯に触れたい方にオススメします。

 

 清水建二著『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社(2022年)2月9日発売です。ご予約はこちらから。

www.amazon.co.jp

 

では、また次回。

 


清水建二