微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

夫婦の顔をめぐる謎

 

「夫婦はお互いに似ている」とよく言われると思います。その似ている点というのは、性格だったり、食事の好みだったり、顔やその他身体的な特徴であったり、します。本ブログは顔に焦点を当てていますので、夫婦の顔の類似性に関して話を進めます。

 

謎なのは、夫婦の顔は、

「お互いがもともと似ているのか」

それとも

「お互い時間をかけながら似てくるのか」

ということです。

 

様々な研究から、両方あるだろう、と推察されています。

 

夫婦の顔の類似性の謎に迫った研究をいくつかご紹介いたします。

 

Griffiths及びKunz(1973)は、実験参加者に夫婦別々に写っている顔写真を一組の夫婦の組み合わせにしてもらう実験をしました。実験参加者たちは、結婚10年以下と20年以上の夫婦の組み合わせは上手く組み合わせることができたのに、その間の結婚期間(結婚歴11年~19年)の夫婦の組み合わせは上手く組み合わせることができなかった、との実験結果を残しております。

 

結婚10年以下の夫婦は、元々似た者同士の夫婦だったのでしょうか?結婚も11年するとすれ違いが生じ、感情は夫婦で共有されるより、差異が目立ち、それが顔に表れる、似ていない顔になる。しかし20年を超えて連れ添うと、様々な壁を越え、感情を共有し、再びお互いの顔が似てくる…そんな説明も出来そうです。

 

他にも、顔の特徴が似ている男女が夫婦となるパターンと時間をかけて、顔が似てきた夫婦のパターンがあることを示唆する研究があります。

 

前者のパターンは、人間以外の動物でもよく観察される配偶行動で、自分と姿・形が似ているものにポジティブさを感じる特性が報告されています(Burley, 1983)。

 

後者のパターンの有無に関してこんな研究がなされました。

 

12組の夫婦の男女別々に写った結婚1年目の顔写真と25年目の顔写真が用意されます。実験参加者にそれらの写真から夫婦の組み合わせを推測してもらいます。実験の結果、実験参加者らは、結婚1年目の顔写真では、夫婦の組み合わせを上手く推測出来なかったものの、結婚25年目の顔写真では、夫婦の組み合わせを上手く推測することが出来たのです。

 

この実験を行ったZajonc, Adelmann, Murphy, Niendenthal(1987)は、夫婦は長年連れ添うことで、類似の食生活やライフスタイルを送り、類似の感情経験を共有してきたため、顔が似てきたのだろうと考察しています。

 

先の研究と合わせて考えると、顔が似たり異なったりするのは、もしかしたら波があるのかも知れませんね。

夫婦の顔は、ある時期は似ていて、ある時期は異なる、のような。

 

さぁ、次回、最近の研究から、もう少しこの謎に切り込んでいきます。

 

 

清水建二

参考文献

Griffiths, R. W., & Kunz, P. R. (1973). Assortative mating: A study of physiognomic homogamy. Social Biology, 20,

448–453.

Zajonc, R. B., Adelmann, P. K., Murphy, S. T., & Niendenthal, P. M. (1987). Convergence in the physical appearance

of spouses. Motivation and Emotion, 11, 335–346.