オフィスや大学にちょっと良いコーヒーメーカーがあり、そこに集金箱があります。値段は50円。
はい!お金入れずに、飲んだことのある方、正直に手を挙げて下さい!
…。
田舎には、無人の野菜売り場があり、そこにもお金を入れる箱がありますよね。無人駅には切符を入れる箱を見かけます。数年前にL.A.に訪れたとき、L.A.の地下鉄の改札も無人で、切符を入れる箱だけがありました。
集金箱にお金や切符などを入れるだけのこのシステムは、運営する側としては、人件費はかかりませんし、手軽で良いですね。
しかし冒頭の記述のように、このシステムのもとで、どのくらい人が正直にお金を払っているのでしょうか?商品の無くなり具合と集金箱の中身を比較すればわかりますが、少なからずお金や切符をごまかす人がいるのが現状ではないでしょうか。
それでは、どうそれを防止したら良いか?
ここでも顔の科学が活かせるのです。
こんな実験がなされました。
とある大学の学生が集まる場所にコーヒーメーカーと集金箱を設置します。良く見えるところにコーヒーの値段とシールを張ります。花柄のシールと目のシールが一週間ごとに張り替えられます。この実験は10週間にわたって続けられました。
実験の結果、花柄のシールが貼ってあった週に比べ、目のシールが貼ってあった週の集金額は3倍多かったということがわかりました。
ちなみに、目のシールがコーヒーの消費量を増加させた、という落ちではありませんよ。
その変はちゃんとコントロールされた上での実験結果です。
う~ん、目力!驚異の目力!!
なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
人の認識システムには顔や目に選択的に反応するニューロンがあり、顔や目があることによって、それが偽物であっても、見られているという意識が働きます。見られることにより、ごまかしをすることに対して応酬性の慣性から消極的になります。結果、協力行動、今回の場合ならば、正直にお金を払うという行動、が促されるというわけです。
他にも笑顔のイラストが解答用紙や契約書に書かれていると、ごまかしが減るという実証結果などがあり、視線や表情がもたらす防犯効果は何気に無視できない、手軽かつ効果的な方策なのです。
金融機関などにある警察官の看板などもそういう効果を狙っているのかも知れませんね。
「防犯対策実施中」という垂れ幕よりずっと心理学的には効果が高そうですね。それにしても警察官の看板小さいですよね。等身大にすればもっと効果的なのでは?と密かに思っています。
清水建二
参考文献
Bateson M, Nettle D, Roberts G (2006) Cues of being watched enhance cooperation in a real-world setting. Biol Lett 2: 412-414.