さてさて前回、前々回、そして今回と利き腕選好の話は続きます。
私たちは利き腕のある方に選好を向けるということが実験室で検証されました。
「身体特異性仮説(The body specificity hypothesis)」(Casasanto,2009)によれば、私たちの思考は、特定の身体動作に表れる、ということですが、現実の世界でもこのことは観察されるのだろうかと分析がなされました。
2004年と2008年のアメリカ大統領選挙が分析対象にされました。当時の候補者である、右利きのケリー候補者、右利きのブッシュ候補者、左利きのオバマ候補者、左利きのマッケイン候補者の演説内容と身振り・手振りとが比較されました。
分析の結果、右利きの候補者がポジティブな話をしているとき、左手に比べ、右手をより多く動かし、ネガティブな話をしているとき、右手に比べ、左手をより多く動かしていることがわかりました。左利きの候補者の場合は、逆です。左利きの候補者がポジティブな話をしているとき、右手に比べ、左手をより多く動かし、ネガティブな話をしているとき、左手に比べ、右手をより多く動かしていることがわかりました。
この結果は、思考は身体に表れるという「身体特異性仮説」を支持するものです。
この研究から学べることは、話し手の手の動きから、話し手の話す内容が話し手にとって、ポジティブなのかネガティブなのかをうかがい知ることが出来るのではないかということです。一見、普通に軽い身振りを伴って話している相手の手の動きが、その人の利き腕ではなかったら、その話はその相手にとってネガティブな話題なのかも知れませんね。空気は手からも伝わってきそうです。
いかがでしょうか?
清水建二
参考文献
Casasanto, D. (2009). Embodiment of abstract concepts: Good and bad in right- and left-handers. Journal of Experimental Psychology: General, 138(3), 351–367.
Casasanto, D., & Jasmin, K. (2010). Good and bad in the hands of politicians: Spontaneous gestures during positive and negative speech. PLoS ONE, 5(7),