私たちは日々、様々な意図を伝えるために表情をコントロールしながら他者とコミュニケーションを図っていますが、この表情のコントロールの仕方には個人の性格の違いが反映しているようです。
ある実験で100人の実験参加者に感情が喚起されるような画像を見せ、その表情を記録します。情動喚起画像を見ている実験参加者は、その画像によって呼び起こされる感情に対して、次の4通りの方法で反応をします。真の感情である「素直な顔の表情」、本心では感じていない感情の表情を作る「模倣化」、本心で感じているのとは反対の感情の表情を作る「偽装化」、感情を感じていないかのように平静を装う「中立化」です。
実験の結果、
他者に共感する能力の高い人は、感情に関わるウソをつくとき、意図した表情を「模倣化」し、その表情を維持し続けることができたことが検証されました。しかしながら、本当の感情が「漏えい」したとき、それを覆い隠すこと、つまり「偽装化」することは得意ではない、ということがわかりました。
他者に共感する能力の高い人は他者の感情を認識し、自分の感情をコントロールすることに長けているのですね(Mayer, Roberts, & Barsade, 2008)。
対人感情に障害のある精神病気質を持つ人は、感情に関わるウソをつくとき、真の感情が「漏えい」することが少なかったということが検証されました。(ただし、衝動性に関連する精神病気質を持つ人は、ウソをつくとき、真の感情が「漏えい」することが多いことが観察されています。)
Herpetz(2001)らの実験によれば、精神病気質を持つ人は、「心地よい」画像及び「不快な」画像に対して、表情の反応が少なく、その表出の程度も低い、という知見を見出しています。
ん?ということは、精神病的な人は、そもそも真の感情が表情に漏れ出ないのではなく、様々なことに対して感情が刺激されず、ゆえに表情に何も表れない、という解釈が出来そうですね。
まとめますと、感情に関わるウソをつくとき、いわゆる感情知性の高い人は、ウソの表情を生み出すことによってその課題を成し遂げ、対人感情に障害のある精神病気質を持つ人は、感情を表情に表さないことによってその課題を成し遂げている、と言えるでしょう。
Today’s Tips!
感情知性の高い人のウソの徴候→真の感情の「漏えい」、つまり微表情が表出する瞬間を見逃さない。
精神病気質の人のウソの徴候→常識的に予想される表情が、全く「表れない」不自然さに敏感になる。
清水建二
参考文献
Porter, S., ten Brinke, L., Baker, A., & Wallace, B. (2011). Would I lie to you? “Leakage” in deceptive facial expressions relates to psychopathy and emotional intelligence. Personality and Individual Differences, 51, 133-137.