FACSを用いて表情分析をしていると(機器を用いず視認のみで分析をする場合)、表情筋の動きが観られないときがあります。大抵の場合は、一見ないように見えても、微表情や微細表情、あるいは目の動きなどがあるのですが、本当にないときもたまにあります。
そうした場合の私の回答パターンは3つあります。
一つ目は、意味のある表情筋の動きが検知できないため、感情推測及び心理分析は不可能である、という回答です。注意点としては、表情筋の動きがないからと言って何の感情も抱いていないとは限らず、専門家の目を持ってしても視認できないだけということです。こうした場合、何らかの機器を用いて生理反応などを調査すれば感情を把握できるかも知れません。
二つ目は、抱いている感情がとても弱いため、表情筋の動きには表れてこない、という回答です。抱いている感情が弱い場合、微細表情として表れることがあるのが普通ですが、表れないときもなくはありません。
三つ目は、感情が死んでいるかウソをつこうと表情筋の動きを抑制しているため、表情筋の動きとして表れてこない、という回答です。表情の動きを抑制している場合、抑制に関わる表情筋が動くことがあるのが普通ですが、表れないときもなくはありません。
二つ目と三つ目を見分ける方法ですが、抱いている感情が弱いだけの場合、感情に関わる表情筋の動きはないものの会話のシグナルは見られたり、意味は特定できないものの言わば雑音のような表情筋の動きは見られるため、感情が死んでいるわけではないと解釈できるのです。感情が死んでいるというのは、何らかの心の病に罹っている、罹る直前、精神的・肉体的に疲労困憊な場合に観られる状態で、表情筋の動きがなくなります。特に発話をするので口の動きはあるものの、鼻から上が全く動かない様子が観られます。
ウソをつこうとしている状態をどう判定しているかについて、ここで全て書くのは難しいのですが、単純な話としては、分析対象者の話している言葉の通り表情が動いていない、という場合です。例えば、「嬉しいです。」と言いながら無表情だとしたら、その言葉に込められた感情はウソだと考えます。
これまでの説明を図にするとこんな感じになります。
表情筋の動きがないことこそが特別な意味を持ち得る場合もあるのですね。
清水建二