2022年7月8日、安倍晋三・元首相が
奈良県で街頭演説中に銃で撃たれ死亡しました。
殺人未遂容疑で現行犯逮捕された山上徹也容疑者(41)の
襲撃直前の表情・動作について備忘録を記しておきたいと思います。
オープンソースから得られる事件動画を観る限りでは、
山上容疑者の表情に、いわゆる、危険表情は観察出来ませんでした。
危険表情とは、殺人・暗殺・テロ・暴力行為を行う意図のある表情のことを言います。
防犯カメラに記録されている暴力行為をした人物の表情データと暴力行為を体験した
警察官や犯罪被害者の目撃証言から推定された表情です。
具体的に、危険表情は、2種類あると考えられています。
一つは、「攻撃を目論んでいる顔」と呼ばれています。
「眉が中央に寄りながら引き下げられる+上まぶたが引き上げられる
+下まぶたに力が入れられる+唇が上下からプレスされる+口角が引き下げられる
+下唇が引き上げられる」という表情です。
この表情が表れている人は、
・誰かを攻撃する計画を練っている
・攻撃のタイミングを見計らっている
・攻撃目標が現れるのを待っている
・攻撃目標が気を抜くのを待っている
こうした意図を持っていると考えられています。暴力を振るう直前の人物や
爆弾を仕掛けようとしていたテロリストの顔、重火器を持って学校を襲撃する
数時間前の犯人の顔などにこの表情が生じていたことが観察されています。
もう一つは、「理性を失った顔」と呼ばれています。
「眉が中央に寄りながら引き下げられる+上まぶたが引き上げられる
+下まぶたに力が入れられる+口が開かれる+アゴに力が入れられる」
という表情です。
この表情が表れている人は、
・理性を失った瞬間
・攻撃を仕掛ける瞬間
こうした意図を持っていると考えられています。
マスクをしているため、口元はわかりませんが、
山上容疑者の目元に危険表情は確認できませんでした。
なぜ危険表情が確認できなかったのでしょうか。
①本当は危険表情をしていたが、動画には記録されていない
(撮影されていないところで危険表情をしていた、あるいは、
映像が荒く確認できないだけ)
②危険表情を隠すのが上手く、微表情にさえ、表れなかった
③マスクの下に危険表情が表れていた
④憎悪や殺意はなかった
⑤研究で判明している以外の危険表情をしていた
といくつか考えることが出来ます。
ただ、②の可能性は低いように思えます。
理由は次の通りです。
公開されている動画から、挨拶時の安倍元首相の後ろ、
道路を隔て立っている山上容疑者が確認できます。
このとき、肘を外に突き出す形で腰に手を置き、首を左右にしきりに動かしています。
肘を外に突き出す形で腰に手を置く姿勢は、アームアキンボーです。
自分の面積を広くとる姿勢であるため、目立ちます。
また、他人と距離を置き、ときに、人に威圧感を与えます。
首を左右にしきりに動かすのは、情報収集だと思われます。
安倍元首相に近づくタイミングを計るために、
車の往来や警護者の動向の確認していたのだと思われます。
映像を観る限り、これらの姿勢及び動きは、
まま大きく、山上容疑者にとっては、下手をしたら、
挙動不審で職務質問を受ける恐れがあったと考えられます。
自身の意図を隠すのが上手ければ、アームアキンボーなどせず、また、
首を動かすことなく、目だけで周囲の情報収集をすることが可能です。
ゆえに②はなく、①③④⑤の可能性を考えています。
なお、送検される山上容疑者の表情や動作に、
恥や羞恥が観られないところから自身の行為を、
目下、正当化できている、あるいは、何も感じていないと思われます。
さらなる情報が入り次第、分析・考察を深めたいと思います。
安倍晋三元首相のご冥福を心よりお祈りいたします。
参考文献:Matsumoto, D., & Hwang, H. C. (2014). Facial signs of imminent aggression. Journal of Threat Assessment and Management, 1(2), 118 128. https://doi.org/10.1037/tam0000007
清水建二