微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

氏か育ちかー成功者の顔②

 

顔は氏か育ちか?生まれか環境か?特性か経験か?

 

結論的には、両方!です。

それだけで終わってしまうと身も蓋もないので、こんな研究から少しずつ考えてみましょう。

 

アメリカのトップ100に入る弁護士事務所のマネージングパートナー(the Managing Partners; 以下、MPsと略します)の顔のみの情報から、稼ぎが大きい事務所を予測できるか、という研究がなされました。

 

アメリカのMPsは企業のCEOと同じ立場ですが、CEOとは異なり、外部からその地位に迎え入れられることは稀です。MPsは外部から雇われるのではなく、その事務所内で頭角を表し、才能がある人材が就任します。アメリカの法律事務所はヒエラルキー体制であるため、ある法律事務所で業務を遂行するのに必要なだけのスキルとトレーニングを受けた者が入社し、低い地位から業務における成功とともに昇進の階段を上っていきます。業務能力の低い者はそのままの地位か、事務所を去ることになります。したがってMPsは、リーダー気質という観点からではなく、仕事上のパフォーマンスの成績という観点からその地位につくことになります。

 

そこでMPsらについての情報を何も持たない判定者らが、MPsの顔のみの情報から事務所の稼ぎを予測できたら、それはMPsらの元々の顔の特性というよりも経験から形成された顔の帰結ではないだろうかと考えられ、調査がなされました。

 

調査の結果、能力、自信、男性的な成熟度を感じられる顔ほど、そのMPsが運営する事務所の収益が良いことがわかりました。一方で、人なっこく、信頼のおけそうな顔と、そのMPsが運営する事務所の収益には関連が見出せませんでした。

 

環境は顔を作るのですね。

 

氏か育ちかー成功者の顔①で挙げたお金持ちの顔について具体的にはほとんど言及できていませんが、本ブログの「人は見た目が9割?-○○編」でもまたこの問いについては触れたいと思います。

 

ただし今のうちに言っておきます。

金持ちを見分けるお手軽かつ確実な方法はありません。

訓練次第では、見分ける精度を高めることができる、と言った方が正確でしょう。

 

 

清水建二

参考文献

Rule, N. O., and Ambady, N. (2011). Face and fortune: Inferences of personality from Managing Partners’ faces predict their law firms’ financial success. Leadership Quarterly, 22, 690-696.