微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

笑顔でクレームを言うお客さん

 

商品やサービスのクレーム対応をしている店員さんとお客さんとのやり取りを観察することがあります。そのときのお客さんの表情は様々ですが、私たち日本人やアジア系のお客さんがクレームを述べているときと欧米系のお客さんがクレームを述べているときには、そのクレームの仕方に顕著な違いが観察されます。

 

私たち日本人は店員さんに面と向かってクレームを言うとき、欧米系の方々と比べ、直接的な批判や否定は避け、「もう少し~だったら良かったのだけど…(商品の交換とか可能ですか?)」といったような物腰柔らかにクレームを言う傾向があります。

 

興味深いのは表情です。「もう少し~」と言っているお客さんの表情は一見、軽い笑顔をしているのですが、その笑顔の中に一瞬、怒りや悲しみの微表情が垣間見れるのです。

 

この笑顔を誤解して、店員さんがクレームの程度を軽く見積もってしまうと、そのお店のサービスの質は疑われてしまい、このお客さんはもう二度とこのお店に訪れることはないでしょう。

 

こうした現象は研究によっても実証されています。

 

サービスの提供側とお客さんの出身文化圏が異なる場合、サービス提供者は、不満を抱えたお客さんの「怒り」「幸福」「恥」表情を正しく認知出来ない傾向にあるということがわかっています。

 

具体的には、

①欧米系のお客さんの「怒り」表情は正しく認識されるが、アジア系のお客さんの「怒り」表情は正しく認識されにくい。

②欧米系のサービス提供者はアジア系のお客さんの「恥」と「幸福」表情を誤認識する傾向にある。

ということがわかっています。

 

アジア文化圏の多くは集団主義的で、集団の和を保つという観点から、否定的な感情があっても表に出さない傾向があり、それがアジア系の人々の表情を正しく認識するのを難しくしている要因であると考えられています。

 

ますますグロバーバル化する世界において接客もそれに追いつかなくてはいけません。

世界の人の文化、表情、ジェスチャーを考慮した接客サービス、

もしくはユニバーサルなサービスをデザインする時代が来ているようです。

 

 

清水建二

参考文献

Alastair G. Tombs , Rebekah Russell-Bennett , Neal M. Ashkanasy,  (2014) "Recognising emotional expressions of complaining customers: A cross-cultural study", European Journal of Marketing, Vol. 48 Iss: 7/8, pp.1354 - 1374