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微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

文化の影響を受けやすい表情

表情分析

 

表情にも言語と同じように方言があるという説があります。表情の方言理論(A dialect Theory)と言います。 (Elfenbein & Ambady, 2002; 2003).

 

この理論によれば、私たちの顔に万国共通の7表情が表れるとき、文化を超えてそれらの表情は正しく識別されるが、文化によって微妙に表情の表れ方に違いが生じるため、文化間で表情が誤解される危険性がある、と言います。

 

そこで疑問です。本当に、万国共通の表情の中でも文化によって誤解が生じやすい表情、文化的な影響を受けやすい表情というものはあるのでしょうか?

 

結論としては、ございます。

 

万国共通の7表情の中でも、文化的な影響を受けやすいものと受けにくいものがあるようです。

 

ガボン(アフリカ:カボン共和国)人とカナダ人にいくつかの表情を自発的に作ってもらい、それらの表情を比べた研究があります(Elfenbein, Beaupré, Levesque & Hess, 2007)。その結果、同じ表情に対しガボン人とカナダ人とで異なる表情筋の動きが観察された表情は、平静、恥、軽蔑、怒り、悲しみ、驚き、幸福、でした(※)。一方、両者に差がなかった表情は、恐怖、嫌悪、羞恥、でした。

 

この実験によると、前者は文化的な影響を受けやすい表情で、後者は文化的な影響を受けにくい表情である、ということです。

 

こうした表情の違いは、社会的なシグナルとしての表情の機能の仕方に要因があると考えられています。他者に対して自分の感情をアピールする必要がある場合、その社会で暮らす人々にわかりやすいように表情をつくる必要があります。生得的に形成された表情が、様々な文化的な影響を受けながら、時、世代を経て、表情にバリエーションをもたらしたのだと考えられています。一方で、「嫌悪」のようにより進化生物学的基盤の影響が強い表情―有害なものに対し、鼻のしわをつくることでふたをして防御する機能を持つ表情―は、文化的な影響を受けにくく、表情にバリエーションをもたらしにくいのだと考えられています。

 

まだまだ表情の方言理論は、研究の初期段階です。

私たち日本人はどんな表情の方言を持っているのでしょうか?

日本人の表情の方言マップ、作成したいですね。

 

 

清水建二

 

※例えば「軽蔑」の典形は、唇の端が片方だけ引き上がるというものです。ガボン人の場合、上唇と下唇が引き上げられ、鼻の周りに釣鐘型のしわが生じる動きで「軽蔑」が表現され、カナダ人の場合、眉が下がり、目を鋭くした表情で「軽蔑」が表現されました。

 

参考文献

Elfenbein, H.A., & Ambady, N. (2002). Is there an in-group advantage in emotion?

Psychological Bulletin, 128, 243–249.

Elfenbein, H. A., & Ambady, N. (2003). Universals and cultural differences in recognizing emotions. Current Directions in Psychological Science, 12, 159-164.

Elfenbein, H. A., Beaupré, M. G., Levesque, M., & Hess, U. (2007). Toward a dialect theory: Cultural differences in expressing and recognizing facial expressions. Emotion, 7, 131-146.