微表情

フラッシュのように一瞬で表れては消え去る微妙な表情、微表情。このブログでは、微表情、表情、顔を始めとした非言語コミュニケーションの研究や実例から「空気を読む」を科学します、「空気」に色をつけていきます。

202503台湾出張記【人情編】―言葉が通じなくても、心は届く~台湾で出会った2つの優しさ~

 2025年3月2日(日)~3月8日(土)にかけ台湾に出張して来ました。出張の目的は、「表情・微表情から本音を推測するスキル」をオンラインで学ぶためのコース(「清水建二の微表情読心術」という名前になりました)制作。台湾の企業、PressPlay様とのコラボ事業です。本日は、【人情編】と題し、出張で体験した人情や受けた親切について書きたいと思います。

 

見知らぬ年配男性が見せてくれた「心の翻訳」

 

 台湾滞在3日目の出来事です。私は、手配されたタクシーに乗り、オンラインコースのプロモーション動画の撮影のために指定されたスタジオへ向かっていました。運転手から「着きました」と告げられて降り立った先は、高層マンションの前。初めての場所だったので、「この中の一室か共用スペースで撮影するのかな」と思いながら建物の中へ入っていきました。

 

エントランスに足を踏み入れると、入口付近に座っていた年配の男性が、私に中国語で何か話しかけてきます。

 

“Sorry, I can’t speak Chinese.”

 

そう返したにもかかわらず、彼はさらに何かを伝えようとします。語調から質問しているような雰囲気が伝わってきました。

 

"I'm afraid I don't understand what you're saying."

 

私の返答に対し、その男性は眉の内側を少し持ち上げた表情を見せました。悲しみ表情です。「言葉が通じず残念だ」と感じているのかもしれないと受け取りました。彼は何か言い残して、建物内の別の場所へと歩いていきました。

 

私はそのままマンションの奥へ進み、撮影スタッフが来ていないかを探します。数基のエレベーター、トイレ、部屋のような空間が見えましたが、それらしき人はいません。やがて、誰も現れないことに気づき、一度エントランスまで戻ってソファに腰掛け、待つことにしました。

 

しかし、しばらく待っても誰も来ない。「もしかして場所を間違えたのでは?」という不安がよぎります。さらに、そのときある理由で自分の携帯が使えず、連絡も取れない状況。「このままだと撮影スケジュールが狂ってしまうかもしれない」と焦りが募ります。

 

そこへ、さきほどの年配の男性が再び近づいてきて、携帯電話の画面を私に見せてくれました。画面には英語で「誰かを探していますか?」とのメッセージ。私の様子を気にかけてくれたのでしょう。彼の表情はにこやかでした。

 

"I am waiting for someone named ○○ to come here."

 

と答えると、今度は「その人は何号室ですか?」という新たなメッセージが表示されます。

 

“I don’t know.”

 

私がそう返すと、男性は笑顔を崩さず、またあの「眉の内側が上がった」表情を見せます。「手助けできず申し訳ない。でも、心配しないで」という思いが伝わってくるようでした。その後、彼は周囲の住民らしき人たちに声をかけ、私のことを説明し、助けを求めてくれているようでした。

 

そんなやりとりの最中、ようやく撮影担当の方が現れました。

 

「スタジオはこの建物の隣です。タクシーがこのあたりに止まっていたので、もしかしてと思って探しに来ました」

 

無事、合流できて一安心。

 

結果だけを見れば、その男性が直接問題を解決したわけではありません。でも、言葉も通じず、連絡手段も絶たれた不安な状況で、彼の親切な表情や振る舞いが、どれほど私の心を和らげてくれたかは、想像に難くないでしょう。

 

「きっと騙されてる」そう思った私に返ってきたもの

 

 台湾滞在中には、こんな出来事もありました。ある夜、Barで少し遅くまで飲んだあと、歩いてホテルまで戻ろうとしたときのことです。ホテルはおおよそ3km圏内、道も2~3回曲がる程度のほぼ直線上にあるはずでした。ところが、気づけば道に迷ってしまいました。

 

このときも、例によって私の携帯は不通。Google先生に頼ることはできず、通行人も見当たりません。誰かに道を尋ねることもできない状況です。

 

そんな中、路肩に停車していた一台のタクシーを見つけ、ホテルまで乗せてもらうことにしました。

 

私は100元札(約451円)を取り出して、「これで足りますか?」と尋ねると、ドライバーは“No”と答えます。次に500元札を差し出すと、“OK”。

 

私から500元札を受け取ったドライバーは車を発進させました。

 

「こんなに遠くまで来てしまっていたのか? それとも深夜料金? もしかして、ぼったくられてる…?」

そんな不安が頭をよぎりつつ、言葉も出せず黙って乗っていると、間もなく目的地に到着しました。

 

するとドライバーは車を降り、近くのコンビニへ。私から受け取った500元をくずしてきてくれて、390元を手渡してくれたのです。

 

疑いをかけてしまった自分が恥ずかしくなりました。感謝の気持ちを込めて、お釣りのうち90元をチップとして渡し、無事にホテルに戻ることができました。

 

夜道で暗く、ドライバーの後頭部しか見えなかったため、表情はわかりません。それでも、「道に迷って帰れない」という不安や、「騙されているのでは?」という疑念に包まれていた中で、わざわざ自分の足で両替しに行き、正確なお釣りを返してくれたという事実。

 

その行動のギャップが、どれほど私の心を揺さぶったか――想像していただけるのではないでしょうか。

 

元々、台湾には好印象を抱いておりましたが、今回の件でさらに台湾が好きになりました。

 

おまけ1

滞在ホテル近くの広場ー芸術の匂い

 

おまけ2

台湾の味のある街角

 

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【清水建二の微表情読心術オンラインコース情報】

・デモLesson

清水建二の微表情読心術オンラインコースのデモLessonを受講された方々の感想が公開されました。中国語話者でないと内容は理解できないのですが、表情から気持ちが伝わって来ます。どうぞご覧ください。

youtu.be

・関連出演情報1

艾琳的日常Erindiaryに出演させて頂きました。清水建二の微表情読心術オンラインコースを紹介いただいております。

https://www.instagram.com/reel/DHxM8K1Mggf/?utm_source=ig_web_button_share_sheet&igsh=MzRlODBiNWFlZA%3D%3D&fbclid=IwY2xjawJlhHFleHRuA2FlbQIxMAABHlsvMQci8uoqcvuUUy6OjJiusOsr1zl29jR8UGbWoY4G8_6ukz9SDrjKn7Xo_aem_IPwyXjdWys8v0CfjIMRL8w

 

・関連出演情報2

プロモーション動画です。心理分析まではしておりませんが、表情分析のイメージを共有頂けると思います。

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清水建二