2022年9月27日、JBpressにて「プーチンの表情に明らかな変化、敗北の不安くっきりと-ウクライナ侵攻前から現在までの写真を徹底分析」と題する記事が掲載されました。執筆者は、長らく防衛省に勤務し、退職後の現在は、軍事アナリストとして活動する西村金一氏です。
興味深い記事でしたので、備忘録として思うことを書きたいと思います。
西村氏の記事はこちらです。
西村氏は、ロシアがウクライナに侵攻する前、侵攻直前、侵攻を続けている時期、9月の上海協力機構会議の発表と習近平と再び会談したとき、そして、その後と、プーチン大統領の表情を時系列に並べ、見比べています。
詳しくは氏の記事を読んで頂きたいのですが、概要としては、戦況の行き詰まりに伴い、プーチン大統領の表情に不安や苦悩が表れる、というものです。そして、敗北が続けば、プーチン大統領の表情は、さらに暗くなり、失脚を恐れ、核兵器を使用することに警戒が必要だ、としています。
氏の分析視点は、表情が気分の反映として表れる、というものだと思います。陰鬱な気分のとき、私たちは、その気分が続く限り、日常的に陰鬱な表情を浮かべる。何だか暗い。表情に動きがない。こんなイメージです。したがって、人間の表情を時系列的に見れば、気分の変遷がわかる。
特定の気分がベースとなり、どんなときも、その気分が表情に影響を及ぼすことはあり得ると思います。こうした意味で、氏の分析は興味深いと思います。一方、ある気分がベースとなっていたとしても、会話の相手や会話の内容によって抱かれる感情は異なり得、投げかけられた質問や自己が発するメッセージという刺激によって反応としての表情は敏感に変化します。そこで私が重視する分析視点は、類似した内容を話しているときの表情を比べる、というものです。
私が、プーチン大統領の表情分析をするならば、次のようにします(なお、本日は、分析視点の話なので分析内容については詳述しません。どこかの機会で話すことができれば)。
ウクライナ進行直後の時点(2022年2月27日)とロシアにとって戦況が厳しくなってきた時点(2022年9月21日)の両時点において、プーチン大統領は、西洋諸国やNATOがロシアに敵対的であること、核兵器使用の可能性があること、を共通して語っています。
両時点を感情認識AIで分析してみました。分析結果は、次の通りです。
※本分析は、株式会社シーエーシーによって開発された心sensorを用いて分析しました。心sensorとは、動画に映る人物の表情を分析し、感情を推測するためのアプリケーションです。詳しくは、https://affectiva.jp/service/sensor.htmlを参照して下さい。
感情・表情変化の波形(プーチン大統領の画像の下のグラフ)が心電図のように表れているのがわかります。山の高さが大きいほど、その感情が表情に明瞭に強く表れていることを意味しています。山の幅が大きいほど、その感情が表情に長く表れていることを意味しています。
前者に比べ、後者の表情は、起伏が激しく、慌ただしく変化し、表情の種類も豊富であることがわかります。同じ内容を話していても、表情が異なるということは、内容・言葉に込められた気持ちが異なっているということ。心理分析の詳細は、ここでは省略しますが、9月時点のプーチン大統領の心理が不安定になっている、ということが推測できるのです。
清水建二