感情的になっているときと考え事をしているときとでは、心の中は全く違うような感じがします。感情的な状態と理性的な状態と言えば、状態の違いがわかりやすいかも知れません。
しかし、私たちが感情を抱くとき認知的な評価を伴わせているという説(認知的評価説)があります。
例えば、仕事であるプロジェクトが失敗に終わるとします。その原因が部下ならば、怒りや軽蔑を抱き、上司ならば反感という感情を抱く傾向になるでしょう。
その原因が自分でかつチームのリーダーのような立場なら、後悔を抱き、自分が部下の立場なら、罪悪感や恥を抱く傾向になるでしょう。
逆に仕事が成功した場合、その原因が部下や上司ならば、その人物に好感を覚え、成功要因が自分ならば、自分に誇りを抱きます。
このように何かの原因がどこにあるのか、自分の立場はどうであるか、それが起こる可能性はどのくらいか、などの評価を伴いながら感情は生じるという考えです。
次の図を参照して頂きながら、もう少し厳密に説明してみます。
図:感情と認知との関係性を示す図
出典:Roseman, I.J., Antoniou, A.A., Jose, P.E. Appraisal determinants of emotions: constructing a more accurate and comprehensive theory, Cognition and Emotion 10:3, 1996, 241-277.
図上のSurprise・Hope・Fearを例に説明します。
環境を原因として(Circumstance-Caused)、期待に反したことが起こると(Unexpected)、それが肯定・否定的な事態問わず(Positive Emotions/Negative Emotions)、私たちは驚き(Surprise)を抱きます。
環境を原因として、起きる可能性が不確かだと(Uncertain)、それが肯定的な事態なら希望(Hope)を、それが否定的な事態なら恐怖(Fear)を抱きます。
もう二つ、好感(Liking)と誇り(Pride)をみてみましょう。他人が原因で(Other-Caused)肯定的な事態ならば、好感を抱きます。自分が原因で(Self-Caused)、肯定的な事態ならば、誇りを抱きます。
お金持ちになりたいな~とぼーっと思っているだけならば、(とらえどこなきところに)希望。
棚ぼた的に誰かがお金をくれたら、(その人に)好感。
自分で財産を築いたら、(自分に)誇り。
感情と認知は、見えないところで様々な掛け合いをしているようです。
清水建二
参考文献
Roseman, I.J., Antoniou, A.A., Jose, P.E. Appraisal determinants of emotions: constructing a more accurate and comprehensive theory, Cognition and Emotion 10:3, 1996, 241-277.