私たち大人も、子どももウソをつきます。
果たしてどちらのウソの方が見抜きやすいでしょうか?
正解は、お察しの通り、子どものウソです。
こんな実験がなされました(Edelsteinら, 2006)。
実験参加者の大人、もしくは子どもに単独で、実験室に入ってもらいます。そして実験室の中で、研究助手であると紹介された人と二人でゲームをしてもらいます。半分の実験参加者の大人もしくは子どもは、ゲームの流れの中でこの研究助手から身体(腹・鼻・首)を触られます。もう半分の参加者は触られません。
このゲームの約二週間後、実験参加者らは実験室でのゲーム中の出来事についてインタビューを受けます。インタビューを受ける前に彼らはインタビューアーに対し、真実の話かウソの話をするように指示を受けます。実験助手に身体を触られた参加者らは、「触られた」と真実を、触られなかった参加者は、「触られた」とウソの証言をするように求められました。インタビューの様子は撮影されます。
インタビュー映像の様子から、判定者は、参加者が真実を話しているかウソを話しているかを判断します。
その結果が、冒頭です。つまり、大人のウソに比べ、子どものウソの方が見抜きやすいことがこの実験によって確かめられました。
この結果を精査すると興味深いことがわかります。
真実の話をしている大人と子どもを比べると、大人の証言の方が高い割合で信じてもらえる、ということです。
逆に言えば、子どもが真実の話をしていても、疑われてしまいやすい、ということです。
この実験の設定は、実は、性犯罪を意識したものでした。犯罪の性質上、証拠が残りにくく、被害者の子どもの証言のみが頼りになることがあります。しかし、子どもが性犯罪に会っても、自分のされたことの意味がわからないため、証言があいまいになってしまい、聞いてる側は、子どもの空想なのではないか?と思ってしまう可能性があります。今回の実験は、このようなことが起こり得ることをまさに示唆しているのです。
子どもを危険なことから守るという観点から、子どものウソ・ホントを正しく見抜く能力は必要なのかも知れません。
清水建二
参考文献
Robin S. Edelstein, Tanya L. Luten, Paul Ekman, Gail S. Goodman
Detecting Lies in Children and Adults. Law and Human Behavior. February 2006, Volume 30, Issue 1, pp 1-10.First online: 05 May 2006.